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5 安全圏


川にぶち当たった。

さて、、国道まで出ないと橋は無い。

地形から、北に向かうと国道だ。川にぶち当たったということは、アフガン南西部の大きな街カンダハールを過ぎているので、大丈夫かと思うが、、

だが数少ない橋なのでNATOが押さえて居る可能性もなくはない。

が、他に方法はないのでとりあえず北に上る。



半日も行かずに小さな村を見つけた。何もない村だ。

そこの者と話す。

俺はウルドゥー語が僅かに出来る程度、この村でウルドゥーを話せる者がいるだろうか?パシュトゥー語とペルシア語は俺は全くわからない。


幸い、村の青年がウルドゥーを使えた。

もうここいらにNATOや政府軍や米軍は居ないから安心しろと。

その口ぶりから、それらの軍から彼らがかなりな目にあってきたことがわかった。


この村はピリピリした感じは一切無い、俺達が来ているのに。

つまり、例えば、彼らは自分達にとって俺らが敵か味方を感じ取れ、その判断で動ける、ということだ。

勘と理性をうまく使えている=経験豊富。こういうところは結構安心できる場所だ。戦闘力はともかく、村自体がベテラン戦士といったところか。


食料を分けるので泊まらせてくれとその青年に頼んでみた。

村の外れにある大きめの家の主が、一晩だけ空けてくれた。

村の真ん中では俺達が村の者達を警戒するだろうし、ワッチも大変だ。そこまでわかった上での、俺達が最も少ない警戒で済む外れの家を提供してくれたのだと思う。



その晩は、村がもてなしてくれた。砂漠の民、良き旅人はもてなし、、、というやつだな。

なけなしであろう調味料で釣ってきたばかりの魚などを馳走してくれた。

俺は村長に俺達の保存食をわけた。軍のなのでバレないように、と言い添え。


ついでに、女性者の服を分けてもらう。30着。コートのようなゆったりした服なので、サイズは大体でしかないからありがたい。食料はこれ以上分けられないので、ユーロ現金で対価を払う。彼らも外貨が得られたので喜んでいた。オレ個人の金をパリで引き出しておいてよかった。どこでもハードカレンシーキャッシュは貴重だ。


明日には入れるだろうイランは、紳士淑女には当たりが良い国だ。現地の常識を守れれば、良い旅びととしてもてなしてくれるときも多い。特に困った時に。ただ英語は通じない。フランス語の方がまだ通じる。

更に、他の宗教も容認し、それらの寺も少なくない。なので他のアラブに比べりゃかなり居やすい。




その晩は俺がワッチに立った。

女子たちは久しぶりの屋内、絨毯の上での雑魚寝だが、それでも「天国」だと騒いでいた。

ここまで脱落者、欠損が出ないのは幸いだ。つらそうな顔をする者も見ない。

ああ、そうだ、、昔、俺が新人訓練の終わりに近い時、こんな感じだったろうか、、


・・俺の意識はもう完全に新旧融合してしまったようだ・・・



     ーーーーー



翌朝、ウルドゥーが話せる青年が情報を持ってきてくれた。

「橋は大丈夫だ。こちら側で押さえていると確認ができた。君たちのことは伝えておいた。だがいかんせ統制がそれほどとれていないので気をつけてほしい」

重要な情報に感謝し、村を後にした。


統制が取れていない、つまり連絡が徹底できない、そして、各個の行動を制御できていない、という意味もある。

こっちは女子供だ。悪党には格好の獲物。へたなことにならないことを祈ろう。この上、反政府軍まで敵に回したくない。



昼前に橋についた。1キロほど手前に停まり、様子を探った。

民兵以外は目につかない。200mほどまで車で近づく。

降りて歩いていく。オレ一人、拳銃を後ろに差しているだけ。両手を少し挙げなから歩いていく。


50mほどになったら、俺はウルドゥーで話しかける。

あの村からきた。そしてあの青年の名と村長の名を出した。

「ああ、聞いている。通って良いぞ、」とここのリーダーらしき者。


合図し、トラックとジープがゆっくり来る。

俺はジープに乗り、リーダーに礼を良い、橋を渡る。

そのまま道を進む。

何事もなかった。



街道に戦争の被害跡はなかった。なので50−60キロ程度で巡航できる。午後3時過ぎには国境の街に届くと思う。

が、そのまま街に入れるかどうか?は調べてからだ。


途中、廃屋があったので、そこで休憩。昔は燃料と水と食い物を売っていたのだろう。

アフガンでもイラン側(西側)はまだ安全だが、いつ奴等が襲ってくるかわからない。特にゲリラ共をNATO軍基地に入れたという情報は結構前から出回っていた。そして、実際にかなりの頻度でマッチポンプを行い、アフガン側にかなりの被害を与えている。

奴等が動き始めたらその足はとても速い。俺らももたもたなどして居られないのだ。



街が見える小高い位置に停まる。

双眼鏡で確認する限り、現地の民兵が警備に付いているだけだ。

車両もないし、第一街の中にも見える車両にもそれらしいアンテナがない。

まず大丈夫だろうと踏んだ。

もしいても、隠れて紛れ込んでいる最小限程度なので、俺らを捕まえてどーのこーのなどできやしまい。



ジープとトラックで国境の街の入り口から見えるところまで進み、停止する。

また、オレ一人が徒歩で警備している者達のところに行く。

警備と言っても、一見アンちゃんたちがぶらぶらしているようにみえるだけだ。多分、そのゆったりとしたパンジャビーの下には短剣と拳銃を差しているだろうが。

だが、俺にはソレが警備だとわかるので、近づく。


この国境の街の警備リーダーに繋いでもらい、あの村落から来たこと、イラン側に行く予定だということを理解してもらった。

そこで与えられた情報は「ここいらは平穏なので、通常、ここらの住民達が毎日イラン側に行き来している。」とのこと。

国境は開いていた。平穏レベルだ。


リーダーに、この街の有力者につなぎを求めた。

紹介してもらい、その有力者が街の入り口の警備詰め所としている一見普通の民家にやってきた。(俺の記憶では、こっちでは懇意にしている者以外、招待されない限り、その者の邸に出向くことはしない)


こっちのやりかたで挨拶を念入りにし、そして俺達の自己紹介、俺達は国境を超えたいので助力を要請したい、と延べ、その成功の対価を提示する。幾分のやりとりのあと、取引は合意された。


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