11 その後
Covit19のニュースに紛れ、俺達のことはさほどニュースにならなかった。相手がサウジなので、政府もマスコミも触れたくないんだろう。
あっちに残された男子生徒達全員と、教諭全員はそれから半月後くらいには返された。
密かにフランスに送り返され、そこから日本に帰ってきた。公式にはフランスを出ていない、という話にしたようだ。女子達の存在を無視して強引に決めたようだ。
俺達は一ヶ月ほど「登校猶予」という不可思議な措置を取らされた。「自宅から出るな」という謹慎同様な命令付き。
だが、皆連絡を取り合っているので、誰かの家に集まっては暇つぶししているようだ。
自宅の車で行くので、感染の危険性も無い。
ある家には道場があるので、そこに集まって鍛錬をすることもあるそうな。
また、向こうのネットニュースを見て言葉の学習をしたり。
一人でやるより、何人もでやる方が、効果が出ることもある。皆がやる気がある場合は。
そいういうことを、各班長達が、メールしてくるのだ。今日は何なにをしました、と。
俺も事情聴取という名目で呼び出しを受け、あのことは無かった、フランスから出ていないのだ。と脅迫された。
担当の者の顔は覚えた。名を呼び合っているので、そいつらの名も覚えた。
皆には「病気」と称して呼び出しに応じないほうがいいだろう、と伝えておいたが、班長たちだけは応じ、その何人かが音声を撮ってきた。勇者は1班班長。服の飾りに見せかけた極小さなカメラを使い、画像を取った。
「卒業後、私は海外に出るつもりです、そのときに幾つかの国をまわってから落ち着き先を決めるでしょう。
そのまわっているときに、どこからか、この画像を、英語や他の外国語と一緒にUPします。」
だそうだ。
「大学は出ないのか?」俺は聞いた。
「別に日本の大学でなくともいいわけで、、どこになるかわかりませんが、そこで学校に入ると思います。語学も上達するでしょうし」
そうだな、学校では確実に語学はうまくなる。読み書きもだ。
ーー
仲の良かった教諭とやっと連絡がついた。
彼の家に行こうとしたが、「やめておけ」と。
おれがうまくお前の家に行くから、待っていてくれ。とのこと。
数日後、いきなり電話で
「今近くの、*丁目のコンビニにいる。お前の家の車を廻してくれるか?」
彼は後部席に伏せてうちの邸に運ばれた。
流石にうちの車でも空車を監視していない。
運転手はコンビニで菓子を多く買い、家に持ち込んだ。これは一応念を入れての偽装。
その教諭の帰りには、デカイ包でも運転手に持たせて空車に見せて行かせれば、監視は、それが単なる「おつかい」だと思うだろう。
さて、
教諭が聞きたがっていた話をした。
その後、彼の話を聞いた。
女子達が全員消えたので、空港のあの廃墟でそれに気づいた奴等は怒り心頭。教諭達を一人ひとり連れ出し拷問。だが、そのようなときに、まともに英語も通じない者達がなにをどうできるのか?
その教諭もやはり連れて行かれたが、「気づいたときにはいなかった」としか言わず、拷問を受けた。
彼は今でも腕を釣っているし、手指は全部包帯で巻かれている。爪がないんだよ、と。
さすがに子どもたちが何かを知っているとは思えず、生徒たちに危害を加えなかったという。
僅かには脳が残っているんだな奴等にも。
俺は女子達のチャトに参加し、その教諭の顔を皆に見せた。
そして、教諭と彼女たちのたくさんの会話を、そばで聞いていた。
完
Ending Music : Brahms Symphony No.3
https://www.youtube.com/watch?v=2tB2SLLnPZg




