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1 À Paris. Covid19


ズシーン、ズズシーン、ガーン、ズーン、ズーン、ズーン、ズーン・・・・


パラパラと天井から細かい破片が落ちてくる。

ここは古いコンクリ造りの小さな建物の広い地下室。


音がしなくなった、、

・・・・・・・砲撃が止んだようだ。


遠方から砲撃を受けていた。


「ちょっと見てくる」

と、俺は周囲に言って小走りで扉を出る。

タラップを段飛ばしで駆け上がり、ハッチを押上げ地上に出る。正確には下は地下室ではなく地下壕なのだ。

そのまま上階への階段を登り続け、さほど高くもない監視塔のはしごを登る。


ワッチ用の双眼鏡を柱のフックから取り、砲撃してきた西の方を覗く。

遠くの丘の向こうでかなりの土煙が立ち昇っている・・・地上部隊の移動だろう、、、

この建物の周囲、小さな街中を見ると、広く砲撃されていた。つまりこの建物、俺達の居場所は特定されていない、この廃墟の街のどこかになにかが居る、としか捉えていない様子だ。

だが、


潮時だ。


塔のはしごを滑り降り、建物の階段を踊り場まで飛んでターン飛んでターンを繰り返し地下壕へのハッチにたどり着き、開けっぱにしたままタラップの手すりを滑り降り、避難壕の扉を開けて叫ぶ

「聞け!皆即時退避っ!!かなりの数の地上部隊が来る!!」


扉の近場のものからどんどん扉を出ていく。俺は最後だ。確認のために。

「上に出た者から10分後に退避開始するために用意をしろ!!」上の方に怒鳴った。

「「「了解!」」」誰かの返事。誰でもいい、返事があれば任せられる。


最後の者を思われる者が扉を出た。俺は中に入り残りが居ないか確認する。


その後上の階も走ってみて周り、一階に戻ると、もうそこには皆が物資を車に積載し、整列して待っていた。


「人員全員確認済み。物資、およそ食料2週間分、同水3日分、医薬品、武器弾薬、野営テント5、燃料、簡易通信機2,確認済み!エンジンは始動済み!」

「よくやった、充分だ。では皆、今まで世話になったここに感謝し、搭乗!」

「---「今までありがとうございましたっ!!」---」


俺は先頭のジープの運転席に着いた。

建物を振り返り、頷いてから前を向き、アクセルを踏んだ。


男子高校生1人、女子高校生32人。



ーーーー


なぜこんな状況なのか・・


勿論、こんな羽目に好きで陥ったのではない。

修学旅行の帰りの飛行機が無かったのが始まりだ。

いや、始まりは世界で不自然なほどいきなり始まったウイルス恐慌だ。

 


それが始まった時、俺達私立大山田学園高等部2年生ほぼ全員100余名は、フランス、パリに居た。贅沢な修学旅行で。

その時に俺達が居たのが地方ではなかったのは不幸中の幸いでもあったかもしれない。だが、今思えばどっちが良かったのか、、、この脱出行が終わってみないとそれはわからないことだ。


パンデミックのニュースが広まると同時に、異常とも思える速さで各国間の空路は閉鎖。各国は国内でも都市間を封鎖。

組織の拠点も連絡所も何もない修学旅行中の俺達は手をこまねいているしかなかった。教諭達は何もできなかった。


信用できる教諭から俺が聞いたのは「大使館が”待機していろ”としか言わない。資金も貸与してくれない」ということ。いつまで?救援機は来るのか?などは大使館自体がパニックで、本国内もパニックで何もできていないと思われた。いざという時に頼りになる大使館を運営できている国は少ない。フランスはかなり良い方だ。が、我が国は、、、


どんな方法でもいい、貨物扱いでもいい、可能な限り早く帰国したい、でないと金が無くなったら、、、退避場所もない。言葉も通じない。しかも白人の国でのカラードだ。平時ならいざ知らず、いざとなった時はどうなるかわからない怖さは存在する。


その教諭とイミグレに行った。責任者に面会を求めると代理だと言う者が対応してくれた。事情を話し保護してくれないか?と依頼する。だがにべもなかった。ここフランス政府も現状パニックになっているのだ。国内で検査を始めており、日増しに患者が激増している、ワクチンもまだ存在しない。そんな状況なので仕方が無いと言えるかも知れないが、俺達にとっては仕方がないで済ます事はできない。

フランス人でもパニックになるんだな、、フランスは暴動は多いが、パニックは聞いたことがなかった。


その足でフランスの外務省に向かった。日本へフランス国民救出の便が出るなら乗せて貰えないか?と頼み込もうという腹積もりだ。

ここも在外大使・領事館管理部責任者の代理だと名乗る者が対応してくれた。が、その予定はまだ無いと。もしその計画が始まったらホテルに連絡すると約束してくれた。が、この状態だ、覚えていてくれたらラッキーなくらいだろう。


俺とその教諭は、次の手を話し合った。

「空港に待機していて、出発する機一台一台行き先を確認し、近場なら乗せてもらう」

という手しか残されていないと。



なぜ俺がその教諭と其れほどまでに仲が良いか?信頼さているのか?

それは俺の過去をその教諭に明かしたていたからだった。


俺は中学生くらいになると、はっきりした夢を見るようになった。そしてそれは続きものになっていた。

今俺の居る世界とほとんど似ているけど、少し未来?の似た世界。単にここの未来かもしれないが。

そこで兵士をやっていた。小さな傭兵チームのリーダー。仕事を見つけ内容を精査し交渉し契約し、任務を無事完遂させるのが仕事だった。


俺の傭兵チームは20人そこそこ。なので2つ3つに分けることもあった。

サブリーダーは2人いた。信頼できる人物達。


俺達の最後は運が悪いとしか言いようがなかった。移動中の輸送機が地上のどこからともなくひょろひょろっと上がってきたミサイルの餌食になった。それだけだ。あっけないとはああいうのを言うんだろうな。

機がばらばらになり外にほうり出され、地上に落ちるまで目を開けていたのはすごかった。


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