~第一章~
無限に広がる畑と農場、住民が住む小さい家がチラホラあり、それ以外の施設は学校しかないという小規模な村。
物々交換が主流で農作物や家畜を交換して成り立っている経済、住民が他の村や町と住民との交流が一切ない閉鎖的な政治。
貨幣はあるが、使っているのを1度も見た事がない。
そんな村に、住んでいるーーーーーーーーーー。
『 みなさんが入学してから6年が経ちました。みなさんも早いもので12歳です。今日から、ーーーー』
校長先生の話が長くて、窓から入ってくる暖かな風に眠ってしまいそうになる午前10時。今日から俺たちは旅に出る。
「おい、お前寝るなよ。俺を見習え。」
校長先生が目の前にいる中、熟睡している少年を起こす。
「………はれぇ、僕寝てたのぉ…?ありがとうぅ、リトー。」
寝てたことすら覚えていないモルフルンに苦笑いする。
モルフルンは俺の友達で幼なじみだ。天然パーマで地毛の白い髪の毛が相まって羊そっくりだ。眠たそうな目も若干似ているかもしれない。それは羊に失礼か。モルフルンの家は農場を経営しており、動物への扱いが慣れている。今から出る旅への彼の役職は「モンスター使い」だ。
「モルフルン君、駄目ですよ。起きてなきゃ。死んでしまうかもしれませんよ?」
「はいぃ…大変申し訳ないぃ…ですぅ…」
俺と一緒にモルフルンを注意するアズマ。
アズマはモルフルン同様俺の友達兼幼なじみだ。藍色みたいな髪の毛は艶やかでサラサラでモルフルンとは真反対の髪質で、とても長くポニーテールのようになっている。顔は整っており、毎年何回かは告白されている。羨ましい限りだ。アズマの父は村の長で、唯一他の村や町との交流をとることが出来る。とても優秀で将来は父親の後を受け継ぐとの噂も出ている。頭もよく、学校のコースでは魔法使いコースに行くかと思ったが剣士コースに進学した文武両道な少年である。
彼の役職は「剣使い」だ。
「リトー君君もちゃんと薬草や魔導書の準備をしているんですか?私は心配です…」
俺、リトーは親が魔法使いと言うだけで頭が悪いのに魔法使いコースに進学してしまったので役職が「魔法使い」である。
魔法使いとしての才能はまあまあだが、見た目だけは雰囲気があるらしく、黒魔道士と影で言われているのを知っている。
誰が、目付きが悪くて無愛想で気持ち悪い顔だよ、事実だよ!泣きたいわ!本当に!!
「もちろん。してるよ。」
今日の朝急いで支度をしたが、入れるべきものを全て入れたはずだ。
「まあ、仮になくてもお兄さんかお姉さんが助けてくれるよぅ」
アズマの出す緊張感ある雰囲気を溶かす能天気さでモルフルンが話す。
お兄さん、お姉さんとは始めてでる旅を中央の街まで一緒に来てくれる旅を終了した村人だ。旅は12歳から出発し、5年を経て帰ってくるシステムで、旅の途中で結婚するものや別の街で働くことを決めたりしてこの街に戻ってくる者は少ないと言われている。
そして旅の先輩である彼らが旅のサポート側にまわるのがこの村の旅の伝統である。
「僕らの先輩は誰なんでしょう…?」
「やっぱ、お姉さんがいいよねぇ。うふふふ、ふふ、ふ」
真剣な顔で考えていたアズマを横にモルフルンは顔をにやけさせながら話す。
『そこ、話を聞いていませんね。男女のパーティは組みませんよ?』
完全に話を聞いていなかった校長先生の言葉に俺たちは固まった。いやそれより………………
「男女のパーティが組めないってどういう事ですかぁ!?」
俺が言うより先にモルフルンが言った。
そうだ、男女のパーティが組めないってどういう事なんだ!!
『はぁ、本当に話を聞いていませんね。そんな人が旅に出るなんて私は不安ですよ。では、ここである先輩の失敗暖を語りましょうかね、くれぐれも静かに聞きなさいね。ある男女のパーティで旅に出発しました。あれは、そうですね、4人のパーティで1人だけ女の子でしたね。数ヵ月後に1人でこの村に帰ってきたのです。゛妊娠してしまった゛と。その事をパーティのみんなに言うと村に帰れと言われたと。これだけでは無いですよ、逆に男の子1人だけの所があって、モンスターとの戦闘は僕一人で全てやっていて疲れたと行って帰ってきたんですよ、あとですね』
「も、もう大丈夫です!理解出来ましたぁ!」
いつまでも続きそうな校長先生の話に参ったモルフルンが叫ぶ。
『そうですか、なら良かったです。』
モルフルンを見つめながら微笑む校長先生はにこりと微笑んだ。
『では皆さん、最後のお話です。
いいですか、冒険とは成長です。楽しい冒険であるのは大事ですが、成長しなくては意味がありません。5年後皆さんがたくましくなって帰ってくるのを期待しています。』
いつになく校長先生の言葉が心に残った。校長先生の手は固く握りしめられており、かすかに震えていた。
ーーーーーーー「僕らの先輩はハリル先輩です」
この3人でパーティ申請を出し、リーダーとなったアズマが先輩を連れてきた。男だった。分かってたけども。
「はい、ハリルです。僕は魔法使いです。困ったことがあったらなんでも言ってね。」
長髪の眼鏡をかけた優しそうな青年、という所だろうか。いい人そうで良かったと思うばかりだ。
「「「よろしくおねがいします!」」」
俺たちは頭を下げ、まっすぐと目を見て挨拶する。
新しい世界への思いを込めて。
これから俺たちの冒険が始まる。
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