ちょいワルを極める
<基本形>
「私、彼のことを信じてるから」
そう言って俯く女に、男は皮肉めいた笑みを浮かべた。
「……だったら、何も言うことはない」
<ちょいワル初段>
「私、彼のことを信じてるから」
そう言って俯く女に、男は皮肉めいた笑みを浮かべた。
「……それもいいさ。あんたがそうしたいのなら」
<ちょいワル二段>
「私、彼のことを信じてるから」
そう言って俯く女に、男は皮肉めいた笑みを浮かべた。
「……それは本当に、あんたの本心かな?」
<ちょいワル三段>
「私、彼のことを信じてるから」
そう言って俯く女に、男は皮肉めいた笑みを浮かべた。
「……そいつはただの自己陶酔ってやつじゃないのか?」
<ちょいワル四段>
「私、彼のことを信じてるから」
そう言って俯く女に、男は皮肉めいた笑みを浮かべた。
「……信じるってのは便利な言葉さ。何もしない言い訳になる」
<ちょいワルアルティメット>
「私、彼のことを信じてるから」
そう言って俯く女に、男は皮肉めいた笑みを浮かべた。
「そしてまた裏切られるのか?」
女は顔を上げ、怒りと共に男をにらみつける。
「彼は約束してくれたわ!」
「言葉などいくらでも偽れる。なんなら今、あんたを口説いてみせようか?」
――バシャッ
女は飲みかけのカクテルを男の顔にぶちまけ席を立つと、足早に店を後にした。男はマスターを振り返り、苦笑いを浮かべて肩をすくめた。
これってちょいワル……?