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英雄の孤独
<基本形>
その男は真昼の公園に、前触れもなく現れた。
<その男、最低>
男はキョロキョロと公園内を見渡すと、遊んでいる子供を押しのけて砂場に入り込み、笑いながら砂の城を踏み潰した。
<その男、下劣>
次に男はブランコを子供から奪い取り、勢いよくこぎ始める。ブランコに乗りたい子が悲しそうな目で男を見た。男は楽しそうにニヤッと笑った。
<その男、ゲスの極み>
ブランコを降りた男は、今度は滑り台の頂上に陣取り、物思いにふける。滑り台を使えない子供たちが泣いていた。男はその泣き声にもまったく無反応だった。
<その男、魂の罪人>
保護者から通報を受けた警官が公園に駆け付ける。事情を聞こうと声を掛けた警官に応えず、男は突然服を脱ぎ捨てると、「人類は自由だーっ!」と叫んで走り始めた。慌てた警官が男を追いかける。穏やかなはずの真昼の公園は騒然とした空気に包まれた。
<真実は誰も知らない>
警官に追いかけられながら、男は全裸のまま、スマートフォンに向かって小さな声で叫んだ。
「さあ、言われたことはすべてやったぞ! 今すぐに人質を解放しろ!」
人質は無事に解放され、男は逮捕された。




