バトル感を増す
<基本形>
「さあ始まりました天才キッズお料理バトル! 司会進行は私、飯田。解説はおなじみデストロイヤー北条さんです。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「Aブロック予選第一試合、群馬代表の小学五年生、高村勇気君と、北海道代表の同じく小学五年生、石島信明君の対決ということで、いやぁ、初戦からなかなか目が離せない好カードですね」
「はい。視聴者予想では石島君が若干リードというところですが、このくらいの年齢の少年は一日で急に成長しますからね。確かに前回大会では石島君が高村君を破っていますが、過去の実績はあまりあてにはならないと思います」
「おっと、高村君がキュウリを輪切りにし始めたようです。いやぁ、相変わらず見事な包丁さばきですね」
「始まりましたね。何を作るのか楽しみです」
<北海道と言えば鮭>
「一方の石島君は、冷蔵庫から鮭を取り出して捌き始めましたよ」
「おお、すごいですね。小学生とは思えない鮮やかな手並みです。いや、すごいなぁ。すごいですよこれ。本当にすごい」
「北条さん、ほぼすごいしか言っていません」
「だってそうなりますよ。早くてきれいで無駄がない。プロ並みの手際です」
「北条さんべた褒めですね」
<群馬はキュウリの生産量第二位>
「一方の高村君は、どうやらダシを取り始めたようですよ」
「いりこと昆布ですね。動物性と植物性のうま味成分を合わせるのは非常によい組み合わせですよ」
「手際も非常にいいですね。先ほどのキュウリは半分はそのまま、残りは塩で軽くもんで水抜きをしたようです」
「酢の物かなぁ。派手さこそないけど、高村君は基礎がしっかりしていますからね。何かのきっかけがあれば大化けするタイプですよ」
<道民の実力>
「ああっと、観客席から歓声が上がりました。どうしたのでしょうか!?」
「石島君のほうですね。こ、これは……!?」
「石島君が用意した七輪から激しい炎が上がっています! え、これ大丈夫!? スタッフ、早く消火して!」
「い、いや、大丈夫! このままでいい!」
デストロイヤー北条は驚きに目を見開き、ゴクリと唾を飲み込んでつぶやいた。
「……北海道民のみが可能だという伝説の焼き技、『バーニングサーモン』――!」
<群馬県民の底力>
「おっと今度は高村君のほうに動きがあったようです。観客席がどよめいていますね」
「こ、これは……!」
「なんと高村君! 目を離している隙にすでに、キュウリと長芋の酢の物、冷や汁、そしてキュウリの浅漬けキムチの三品を作り終えています! なんというスピード! もはや肉眼では確認できないほどの速さでキュウリを切っています! これはいったいどういうことでしょうか!? 北条さん! 北条さん?」
デストロイヤー北条は呆然と高村君を見つめ、かすれた声でつぶやいた。
「覚醒、しやがった――!」
<ライバルという存在>
石島君は対戦相手である高村君に目を向けた。高村君もまた、石島君を見る。視線が交錯し、そして二人は、笑った。楽しそうに。料理が楽しい! 心の底から喜びを謳うように。石島君の七輪から上がる炎が自在にその形を変え、鮭をふっくらと最高の焼き加減で焼き上げる。石島君はもはや完璧に炎を操っていた。高村君の包丁さばきが光速を越える。二人に起きた奇跡を目の当たりにして、デストロイヤー北条は興奮に強く拳を握った。
「……ミックスアップだ! 最高のライバルを得て、二人は今まさに成長している!」
<そして勝ち負けを越える>
『できました!』
高村君と石島君が同時に声を上げた。今、自分たちができることをやり尽くした。二人の晴れやかな表情がそれを雄弁に語っている。しかし司会の飯田は戸惑ったような表情を浮かべた。
「これは、その、どう解釈すればいいのでしょうか?」
高村君の作った料理は酢の物と冷や汁、浅漬けキムチと鉄砲漬け、そして叩きキュウリ。一方の石島君はかまどで炊いた白米と焼き鮭のみ。互いにそれぞれ物足りない内容だった。
「……これは、勝負じゃない」
デストロイヤー北条がぽつりとつぶやく。
「二人は、もう勝負を越えたんだ。互いに得意な部分を生かして、一つの芸術を作り上げた……」
デストロイヤー北条の目から、一筋の涙がこぼれた。
「これこそ、どんな高級食材を使った贅沢な料理も敵わない、『完璧な朝食――!!』
ほぼデストロイヤーさんの匙加減です。




