背中が煤けてる
<場所描写>
煙草の煙が充満するあばら家の一室で、四人の男が卓を囲んでいる。
<人物描写>
一人は柄物のシャツに金のネックレスをした、いかにもちんぴら風の男。その右手にいるのはその兄貴分といったところだろうか、鋭い眼差しの細面の男が座っている。細面の男の正面には小太りの、やたらとハンカチで汗を拭いている男が落ち着かなさそうに貧乏ゆすりをしていた。そして、小太りの男の左手、ちんぴらの正面にいるのは、おおよそこの場には不釣り合いの、ネクタイをしてスーツを決めた、二十代半ばの男だった。
<情景描写>
洗牌を終え、各々が牌山を作り始める。カチカチと牌同士が触れる音だけが響く。誰もが無言。ただ、ちんぴら男が煙草の煙を吐き出す音が時折混じった。煙は部屋の空気を澱ませ、どこかこの場所から現実感を奪っている。窓を開ける者はいない。
卓の上に四つの牌山がそびえたつ。ちんぴら男がサイコロを二つ振った。出目は十一。ちんぴら男の顔がほころぶ。それを目ざとく見つけた兄貴分の男が鋭い視線でちんぴら男を制した。ちんぴら男が慌てて表情を消す。兄貴分の男は何事もなかったようにサイコロを振った。出目はピンゾロ。小太りの男が親だ。
<状況描写>
小太りの男はハンカチで額の汗をぬぐう、振りをして、スーツの男から目線を隠しながらちんぴら男と、そして兄貴分の男と視線を交わした。三人は仲間――カモを相手にコンビ打ちを仕掛けるならず者だった。手積みの牌山には必要な牌が兄貴分の男に集まるよう細工してある。逆にスーツの男はどうやっても牌が揃わぬようになっているはずだった。五巡目、兄貴分の男のツモで役満。慣れた手管だ。間違いようもない。
<違和感描写>
カチカチと牌が触れる音が響く。一巡目。二巡目。三巡目。スーツの男は迷いのない動きで牌を引き、入れ替えて河に捨てる。四巡目。スーツの男はまたも手牌を入れ替えた。兄貴分の男がわずかに顔をしかめる。つながることもないクズのような配牌に、スーツの男は悩む様子もなく打牌している。その態度が不気味だった。しかし心配することはない。四巡目の牌を引き、兄貴分の男は心の中でほくそ笑んだ。聴牌――スーツの男が何をしようと、次にツモれば勝負は終わるのだ。
<逆転描写>
五巡目。スーツの男が牌山から牌を引く。手配の右端にカチャリと当て、男が微かに笑った。引いた牌をコトリと倒し、三人に晒す。そこに描かれていたのは、一人のガキ大将の姿――
「ジャ〇アンリサイタル。ダブル役満だ」
手牌をすべて晒し、スーツの男は事も無げに言った。三人は唖然と口を開き、ちんぴら男が咥えていた煙草がぽろりと膝に落ちた。
わっかるかなぁ。
わっかんねぇだろうなぁ。




