矜持を見せる
<基本形>
「あー、君。ここに置いてある商品をすべて、売ってくれたまえ」
「は、はいっ! ありがとうございます!」
<フラストレーションレベル1>
「あー、君。ここに置いてある商品をすべて、売ってくれたまえ」
「あ、あの、申し訳ございません。こちらイベント企画の商品でございまして、広くたくさんのお客様に買っていただきたいと」
「君、私は客ではないと言いたいのかね?」
「め、滅相もございません! すぐにご用意いたします!」
<フラストレーションレベル2>
「あー、君。ここに置いてある商品をすべて、売ってくれたまえ」
「あ、あの、申し訳ございません。この商品はお一人様二つまでとなっておりまして」
「君、誰に向かって物を言っているのかね?」
「も、申し訳ございません! すぐにご用意いたします!」
<フラストレーションレベル3>
「あー、君。ここに置いてある商品をすべて、売ってくれたまえ」
「あ、あの、申し訳ございません。こちらは非売品でして」
「君は私が誰なのか知っているのかね? 私はこの会社の筆頭株主だぞ?」
「も、申し訳ございません! すぐにご用意いたします!」
<フラストレーションレベル4>
「あー、君。ここに置いてある商品をすべて、売ってくれたまえ」
「あ、あの、申し訳ございません。この商品はすでにご予約済みで」
「金なら二倍、いや三倍払っても構わん」
「い、いえ、しかし……」
「ふん。君ごときでは話にならん。マネージャーを呼べ」
「……はい。少々お待ちください」
<プロの誇り>
「あー、君。金のエンゼルをすべて、売ってくれたまえ」
「あ、あの、申し訳ございません。金のエンゼルはご自分で引き当てていただくもので」
「ここに一億、現金がある。それでよかろう」
「い、いえ、しかし……」
「ふん。君ごときでは話にならん。マネージャーを呼べ」
「お待たせしました。フロアマネージャーの森田でございます」
「金のエンゼルを売ってくれ。一億用意してある」
「できません」
「なに? 今、何と言った?」
「できません、と申し上げました」
「き、貴様、私が誰か分かって言っているのか!?」
「子供たちの!」
森田は筆頭株主の男の威迫をかき消す大音声を上げる。
「信頼を裏切ることはできない!」
筆頭株主の男はその迫力に押され、口をパクパクとさせるばかりだった。
「……お帰りください。ここにあなたの望むものはございません」
森田は店の入り口を指し示す。筆頭株主の男は、顔を紅潮させ怒りを顕わしながらも、森田に何も言い返すことができないまま、すごすごと退散したのだった。
他の何を売ったとしても、金のエンゼルは金では売れない。




