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お茶会狂想曲  作者: 鹿島きいろ
8/30

8. 65日前_内装を決めよう!

「ジョアンナ。

例の殿下のお茶会。内装は決まったか?」


「はい。本日、装飾課よりデザイン画が上がってきましたので、これから王妃殿下に、お持ちする予定です。」


「今回は、オージアス殿下じゃないんすか?」


「ええ。今、殿下は外遊に出られているから、王妃殿下に確認するようにと、お達しがあったのよ。」


「へえ。」


「それでは、部長。ちょっと行ってきます。」


「おう!気を付けてな。」



そうして、私は、20分程度王宮内を歩き

王妃殿下の執務室の警備兵に取次を頼む。


「第三王子部ジョアンナ・カールストンです。王妃殿下にお取次ぎをお願いします。」


「確認してまいります。少々お待ちを。」




「どうぞ、お入りください。」



見ると、豪奢なドレスを着たご婦人が王妃殿下の向かえに座られていた。


「ジョアンナ、ごきげんよう。」


「ご機嫌麗しく、王妃殿下。

申し訳ございません。ご来客中とは、存じませんで。出直してまります。」


「ふふ。気にしないで。ワーグマン夫人とは、初めてかしら。

 ワーグマン夫人。こちらは、オージアスの所の文官のジョアンナ。とても優秀なのよ。」


「妃殿下、お褒めいただきありがとうございます。

 ワーグマン夫人。お初にお目にかかります。ジョアンナ・カールストンと申します。」


「まあ、綺麗なお顔の文官さんね。

それにしても、お名前が女の子みたいね。お母様は、女の子をご所望だったのかしら?」

と口元を扇で隠しながら、クスッと笑う。


「あら、ワーグマン夫人。ジョアンナは、女性ですよ。」


「え?あら、そうなの?ごめんなさいね。わたくし、文官だときいて、男性だとばっかり。それにドレスもお召しになっていないから。気を悪くされたら、ごめんなさいね。」


「いえ。文官も武官同様、男女関係なくトラウザーズの制服で統一されておりますので。それに、スカートの裾を気にせずできるので、仕事がしやすいのですよ。」


「そうなの。ふふ。男装の麗人ですわね。」

と上から下までじっくり隅々まで見られたような気がした。


「はあ。」


「ジョアンナ。今日は、私に用事があったのでしょう?何かしら。」


「あ、はい。お茶会の内装デザインが出来上がりましたので、ご確認をお願いしたく。

こちらになります。」


「まあ、素敵ね。」


「そうですわね。」


「それでは、こちらで話を進めさせていただき...。」


「王妃様。オージアス殿下の紋って、何でございましょう?」


ん?


「オージアス?あの子は、カルーナよ。」


「花言葉は、“誠実”でしたかしら?素敵な花ですわよね。」


話が見えない...。


「王妃様、水仙だけでなく、カルーナも混ぜてはいかがでしょう?

妃殿下とオージアス殿下、二人の紋をあしらった花があると、とても素敵ではありませんか!せっかくのオージアス殿下のお茶会ですもの。より一層華やかで素敵なお茶会が演出できると思いますわ!」


は?

今からカルーナを用意するの?

   

この後、部に戻る途中で、装飾課に寄って、内装デザインの修正依頼を出して...って事は、カトラリーやナプキン等の配色も多少変更の必要が出てくるな、お召し物も、変更が必要か...部分的な変更で大丈夫だろうか。

 

あ~招待状、あと最終チェックがすんだら送るだけなのに!これも変更必要かも。最悪、予算は別の所から予算を引っ張ってくるとして...(多分、怒られるけど)


そもそも、今から間に合うか?

 

   

と高速で、頭の中で算段していると、二人のご婦人は、どんどん話が盛り上がっていき、気がつけば、なんだかとても豪華なお茶会に変貌していっていた。


「ワーグマン夫人。ただ、申し訳ないのだけれど、カルーナの花は、そんなにないのよ。多少は王宮の温室にあるのですが、夫人がご提案していただいたような案だと、この季節では、とても賄えないわ。」

  

ナイス!王妃殿下!!


「ご安心ください!王妃殿下!

 わたくしの知り合いの農場で手に入りますわ!」


!!!


目的は、それか!



◇◇◇



「という事で、明後日もう一度、王妃殿下とワーグマン夫人にデザイン画を見せる事となりました。既に、装飾課には連絡済みです。」


「なんで、そんなことになったんだ?」


「そう言われましても。」


「あ、部長!ジョアンナさん!

 第四が、なんであんな壮大なお茶会になったか、仕入れてきましたよ!最初は、そこまでじゃなかったらしいんですが、どっかの夫人が介入したせいで、あんなことになったらしいっす。」


「どっかの夫人?」


「そうっす!ワー何とか夫人?とかなんとか。」


「ひょっとしてそれ、ワーグマン夫人じゃないでしょうね?」


「おお!それです、それです!」


「アーノルド!一歩遅い!!」


「はぁ~。」


「へ?まさか。」


「今、そのワーグマン夫人により、我が第三部は、大幅変更の危機に陥っている!」


「ええぇぇぇ!いつのまに!」


「でも、不思議ね。王妃殿下、その事ご存じないようでしたよ。

しかも、第四のお茶会、褒めてませんでしたし。」


「あっちは、直接、ドゥエイン殿下が窓口だったらしいっす。なんでも、年始めの晩餐会に夫人と意気投合しちゃったらしくて、誰も止められずに、最終的にすごいことに。」


「オージアス殿下では、そうはいかないから、王妃殿下の方に行ったって感じか。」


「そう考えられますね。」


「アーノルド。悪いんだけど、これから大至急で、カルーナの花の市場価格調査をお願い。もし、可能だったら夫人の知り合いという農園のカルーナの売値も調べられると助かるわ。ついでに、合わせて水仙もお願い。なんか、カルーナだけじゃ終わりそうにない気がする...。私は、これから、その他の変更案と試算表作成するわ。」


「了解です。

え、でもこれこのまま進めちゃうんですか?

オージアス殿下に、反対されそうっすけど。」


「ああ、反対するだろうな。」


「ええ、間違いなく反対しますね。」


「反対するのに、調べるっすか?」


「反対させる為に、調べるのよ!」


「へ?」



ワーグマン夫人。

内務大臣の正妻。大きな商会の出だというけれど。

なかなか、剛腕な夫人のようだ。

しかも、日程的に、まだ何とか間に合いそうな頃合い、そして、オージアス殿下が外遊中を見計らって、提案してくるところが、あざとい。


そう思いながら、私は、この週も誰もいない部内で、資料作成に勤しむ。



あ~今日も、月がとっても綺麗だ...。(棒読み)



◇◇◇



そして、

外遊から帰ってきたオージアス殿下に、私は呼び出された。


「やあ、ジョアンナ。忙しい所、呼び出して悪いね。」


「いえ。」


「私が外遊中に提出してくれた資料について、ちょっと聞いておきたくてね。

これって、何で、こんなに予算が膨らんでしまったんだろう。説明してもらえるかな。」


「はい。王妃殿下のご希望を加味しますと、このようなことに。」


「でも、それを調整するのが、君の仕事だよね。」


「ごもっともです。」


「...と言えれば楽なんだけど、まあ、ワーグマン夫人と母のタッグじゃ、君では止められないよね。この件、私から、母上に断っておくから。」


「承知いたしました。」


「ここは、私の腕の見せ所かな。君たちは当初の予定通りに動いて。ところで、この資料作るの大変だっただろう。とても、わかりやすいから、助かるよ。」


「ありがとうございます。」


良かった。殿下に、通じた。



「ところで、殿下。先日は、お忙しい中、お菓子をお送りいただきまして、誠にありがとうございました!」


「気に入ってもらえたかな?」


「はい!どれも素敵なお菓子で!あんなに沢山サンプル品があるので、悩んでしまいました。」


「ん?」


「それでは、私はこれで、失礼いたします。」


「...サンプル品。」

と言いながら、肩を揺らしているケネスさんに、私は不思議に思いながらも殿下の執務室を辞した。



◇◇◇



「ところで、アーノルド」


「はい、何でしょう?」


「第四には、“借り”を作りたくないって、言ってたけど、良くあの情報取ってこれたわね。」


「あーあれっすか?ちょっと“貸し”が出来たんで。」

とアーノルドは悪い顔をする。


「?」


「聞きます?」


「いや、いいわ。何か聞かない方が良い気がしてきた。」


「えー、聞いてくださいよー!」


「いや、いいって!」



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