6. 75日前_衣装を決めよう!
「ジョアンナ。
例のお茶会の殿下の衣装は決まったか?」
「はい。王妃殿下の衣装課とうちの衣装課がデザインを持ちより、本日13時よりサンプルを持ってくる予定です。水仙の事は伝えておりますので、おそらく白と黄色を基調したもので、差し色に緑が入るようなお召し物になるかと。」
「ふむ。」
「これだけ、水仙被せてくれば、参加するご令嬢も王族が何色か想像しやすく、ドレスの色が王族と被ぶるのでは、という悩みは解消されるかと。」
「あ~なるほどな。
あれは、いつも大変そうだよなぁ。」
「ええ。個人的には、被って何が問題なのか。と思うのですが。
むしろ、被らせたくないのであれば、王族は予め色指定しておけば良いのに。まあ、その辺は、口を慎むことにします。」
「おう、そうしてくれ。」
「あ、時間ですので、衣装の立ち合いに行ってまいります。」
殿下の執務室の警備兵に取次を頼む。
「第三王子部ジョアンナ・カールストンです。殿下にお目通り願いたい。」
「確認してまいります。少々お待ちを。」
「どうぞ、お入りください。」
「ジョアンナ、ごきげんよう。」
「やあ、ジョアンナ。元気かい?」
「はい、王妃殿下もオージアス殿下も、本日もご機嫌麗しく。
早速ですが、本日は、衣装のサンプルをお持ちいたしましたので、ご確認をお願いいたします。」
「まあ!どれも素敵ねぇ」
「そうですね。」
「ジョアンナは、どれが良いと思う?」
「私ですか?そうですね。これなんかいかがでしょうか?
このデコルテのデザインが王妃殿下にピッタリかと。」
「あ、本当ね。」
「僕には、どれが良いと思う?」
「そうですね。王妃様と揃えた方が見栄えが良いかと思いますが...これ何ていかがでしょう?殿下の気品がより一層引き立つかと。」
「そう。」
なぜ、王妃殿下も、オージアス殿下も
私に聞いてくるのだろう。
ど素人の私なんかよりも、後ろに控えているお抱えの衣装課の専門家に聞いた方が、もっと的確な物を選べると思うのだが。
ほら。
殿下だって、私のコメントに残念そうにしているではないか。
「なあ、ジョアンナ。今回のお茶会で、まだ予算に余裕はあるだろうか?
もし、余裕があるのであれば、君たちも含め、今回のお茶会に出席する職員達に揃いの服を仕立てたいのだが。」
「は?」
「君だって、さっき言っただろう?そろえた方が見栄えが良いって!」
「はあ。確かに申しましたが。」
「という事で、早速、ジョアンナから採寸してきて!」
「は?」
え~!!
◇◇◇
「という事で、追加が増えましたので、予算の組み直しをすることになりました。」
「...。それは、ご苦労だった。」
「部長、どれが削れると思います?
もう、結構予算ギリギリだったんですよ!」
「いや、お前がちゃんと言わないのが、いけないんだろ。」
「王妃殿下も、殿下も、衣装課も外部の衣装屋も、女官長も勢ぞろいしている中、予算がないなんて、言えますか!部長!!」
「す、すまん。言えねーな...。」
「確かに揃えた方が綺麗ですよ!でも、何で、今回新調するんでしょう?経費節約って、殿下自らおっしゃってたのにぃ。
しかも、よりによって完全オーダーメード...。」
「は?」
「いつもなら、作ったとしても、いくつかサイズパターン作って終わりなのに...
私、さっきの場で、採寸までされたんですよ!」
「それは、また、えらい積極的な...。」
「ここを削って、いや、ここは駄目か。ん~じゃあ、こっちの会場設営を...いや、やっぱり、削るなら人件費か?」
「ジョアンナ。とりあえず、オーダーを止めて、いつものサイズパターンで、もう一度お願いしたら、どうだろう。」
「そうですね。やはり、そこからですね。
もう一度行ってきます!」
「おう!多分、大丈夫だと思うぞ!がんばれ!」
「はい!」
そして、私は、徒歩十分先の殿下の執務室へと向かったのだった。