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お茶会狂想曲  作者: 鹿島きいろ
16/30

16. 25日前_ 賄賂には気を付けよう!

「なあ、ジョアンナ。

最近、なんだか上位貴族の皆様からの差し入れが多い気がするんだが、気のせいか?」


「間違いなく、気のせいではないですね。お茶会を発表する前と比べて約5倍に増えてます。」


「やっぱり!って事は、そろそろ、もう一度職員に釘差しとくか~。」


「そうですね。」


「何の事ですか?」


「そっか、エルマ初めてだったか。お茶会が近づくとね。色々と皆様“動き回る”のよ?」


「??」


「あ~そうっすね。前回の第四も結構“エグかった”らしいっすよ。」


「やっぱり!」


「そろそろ、賄賂の類が、ぞくぞく来るぞ!」


「えええ!」


「でも、何で今頃なんですか?もっと早くからすれば、優位になるのに。」


「そこはだな、一応、紳士協定的なものがあるからな。」


「領地が遠ければ、招待状が届くのも遅いから、心づけをするのも遅くなる...。から皆さんフェアに、一斉にスタートダッシュしましょう的!な感じかしらね。」


「一斉とはいえ、動き始めるのは、高位の家順とか、色々と細かい慣習があるっすけどね。」


「まあ、皆さんやる事はやるから、紳士協定もクソもないんだがな。」


「なるほど!でも、まあ、私みたいなペーペーには、お菓子のおすそ分け位で、あんまり関係なさそうですね!」


「「あまい!」」


「そうよ!チョコレートにキャラメルソースをかける位甘いわ!」


「ヒッ!」


「上も下も関係なく、来るのがこの時期だ!」


「そうね、例えば、お菓子の差し入れなんて、みんなやるわ。殿下にそれとなく、自分の娘を殿下に褒めてほしいとかは、序の口。酷いと、気に入らない令嬢にそっと下剤を混ぜろとか色々来るのよ。」


「それに巻き込まれて、上手く立ち回らないと、最悪失職だからな。」


「ひえ~。」


「いい!エルマ!絶対に個人で何か貰わないようにね!貰っても、必ず部長か私に報告しなさい!」


と、エルマに言いつつも、おそらくターゲットになりやすいのは、部長と現場責任者の私だ。今日も、かれこれ3件そういった類のお願いが来ている。なんとか、お断りをし、部長に報告はしているが。


これからの事を色々考えながら、廊下を歩いていると、何やら前方であたふたしているエルマがいた。よく見ると、この執務棟では見かけない、カラフルでフリフリなドレスを着たご令嬢に何やら、言い募られている。


「ですから、規則ですので、お受けできません!」


「あなたでは、埒が明かないから、上の人を呼んできなさい!」


上手く捌けないか...


「申し訳ございません。彼女がどうかしましたでしょうか?」


「誰よ、あなた!」


「失礼いたしました。私は、彼女の上席の者になりますカールストンと申します。」


「そう。殿下にお目通りを願いたいのだけど。」


「申し訳ございません。殿下は今、緊急の会議に入っておりまして。あと数時間は戻られないかと。」


「そうなの?まあ、いいわ!じゃあ、これを渡して頂戴!当家で作ったお菓子よ。」


「こちらは規則となっておりますので、お受け取りが出来ないのですが、今回“特別に”お預かりいたしますね。」


「あなた、わかってるじゃない!」


「恐れ入りますが、あなた様のお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」


「ビビアーナ・マクベインよ。」


マクベイン...。


「ビビアーナ様ですね。承知いたしました。ちなみに、本日は、お兄様がこちらまで案内されたのでしょうか?」


「あら、エリオットお兄様をご存じなの?」


「ええ。」


「そうよ!エリオットお兄様が、入り口まで案内してくれたの!」


やっぱり!本当にあいつ碌な事しないな。

宰相家大丈夫か。

おかしいな、長男は優秀なんだけどな。


「それでは、こちらは、ドゥエイン殿下にという事で。」


「違うわ!オージアス殿下よ!ドゥエイン殿下じゃないわ!オージアス殿下の方がまじめだし、かっこいいじゃない!」


「そうですね。」


「それでは、あなた!頼んだわよ!」


「エルマ、ビビアーノ様を下までご案内を!」


「はは、はい!」




そして、エルマとビビアーノ嬢の姿が見えなくなるまで見送ると、声を掛ける。


「モテモテですね、殿下。」


「あまりうれしくないな...。」


と後ろの廊下の物陰からオージアス殿下が出てきた。


「空気を呼んで、そちらに留まっていただき、ありがとうございました。」


「いや、大した事ないよ。」


「良かったですね。まじめで、かっこいいらしいですよ。」


「...。」


「残念ですが、このお菓子は、こちらで一旦お預かりいたしますね。たぶん大丈夫だとは思いますが、市販品ではない場合は、特に何が含まれているか、わからないので。」


「ああ、頼む。

ところで、君からはないの?私へのお菓子。」


「私ですか?」


「ジョーのだったら、毒見もなしで食べれるでしょ?昔は、しょっちゅうくれたんだし。」


「はあ。」


「ねえ、ジョー。君は、もう僕の事、オーディーとは呼んでくれないの?」


「いえ。一文官がそのように呼ぶのは。」


「ねえ、ジョー。僕は君が」


「殿下!私今度、お見合いするんです!年齢的にも最後かな~って思ってるんで、いい人だったら、お受けしようと思ってるんです。殿下も応援してくださいね!私も今回のお茶会、殿下の為に、頑張りますので!」


と言うだけ言って、私は、また殿下から逃げ出した。




「すみません、殿下、お待たせいたしました!」


「...。」


「殿下?もしもーし、殿下―?どうしましたぁ?」


「ああ、ケネスか、何でもないよ。」



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