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お茶会狂想曲  作者: 鹿島きいろ
12/30

12. 45日前_無理な追加は止めよう!_前編

「ジョアンナ。ちょっと良いかな?」


「はい、何でしょうか。部長。」


「例の殿下のお茶会の参加者なんだがな。

追加って可能か?」


「まあ、ある程度余分には、取っておりますので、大丈夫かと。ちなみに、何人追加ですか?」


「20人」


「は?」


「20人追加だ」


「2人の間違いではなく?」


「ああ。」


「何でまた、そんなことに。」


「招待状送っただろう?」


「はい。」


「各方面から、うちに招待状が届いていないから、何とかしろっと来たらしい。」


「らしい。って部長...。まさか、それ全部受けたわけじゃないですよね。」


「一応検討させてくれ、とは言ってある...」


「辞退が3名出ているので、予算的には追加できても5名。頑張って9名ですね。それ以上は難しいかと。」


「だよなぁ~。」


「はッ!ひょっとして、この前、こっそり大臣に呼ばれたのって、その件ですか?」


「ああ。しかも、一人言ったとわかると、我も我もとなり、気がつけば20名。」


「とりあえず、リストください!その中から、どうしても受けなければいけない人物を教えてください。これを考慮して、この前のメンバーで再検討させていただきます。」


「ああ、すまない。」


「ちなみに、これ以上増える可能性ってあります?」


「ゼロではないと思う。」


「部長~!」



◇◇◇



私は、今、馬車の中にいる。

父上に呼び出され、領地に向かう馬車の中だ。


あの後、再度、前回の選定メンバーで、改めて追加になった参加者の選定会議を行ったが、全く進まなかった。なぜならば、選定メンバーの各部署の部長宛てにも、それぞれ追加依頼があった為、減らすどころか、さらに増えてしまった。確かに数人は、被っていたが、明らかにキャパオーバーだ。


翌日が休みだった為、とりあえず、一旦皆で持ち帰り、休み明けに再度話し合うことになったのだった。



これは、どうしたものか...。

そもそも、根本的に考えを変えないといけない気がする。

それも、

お茶会がもうすぐ一か月を切る為、早急にだ!


適度に揺れる馬車の中で、そうこう考えているうちに、実家へと到着したのだった。



「お父様、ご無沙汰しております。」


「ああ、ジョー。息災であったか。」


「ええ。お父様もお変わりなく。

それで、私に縁談との事でしたが、何かの間違いでは。」


「まあ、そう急がずとも。

今日は泊まっていくのだろう?」


「ええ、その予定ですが。とりあえず、用件は早いに越したことはないかと。」


「お前は、相変わらずだな。文官になって拍車がかかったというか、なんというか...。まあ、良い。そこに座りなさい。」


「はい。」


「縁談というのはな、間違いなく“お前に”だ。」


「そうですか。断れないというのは、どういった事で。」


「姉上のな、下の娘がこの度、縁談が決まったのだ。」


「叔母上の下の娘という事は、リディアですね。おめでとうございます。それと私と、いったい何の関係が?」


「うむ。知っての通り、リディアはお前より2歳上であろう?そのリディアが、ようやく結婚できるのだから、お前も一緒に!と姉上が勝手に盛り上がってしまい、縁談が持ち込まれた。」


「ああ~。父上は、叔母上には、昔から敵いませんでしたからね。それで“断れない縁談”という事ですか?」


「すまない。とはいえ、お前も良い年だ。最近は、めっきりお前宛に縁談の申し込みも来なくなった。これを良い機会だと思って、会うだけ会ってみたらどうだ?」


「はあ。」


「なんだ。好いている男でもいるのか?」


「いえ、そのような者はおりませんが。」


と言いつつ、昔から存じ上げている男の顔が浮かんだ気がしたが、気のせいだ。

例え、そうだったとしても、可能性は全くないのだ。思うだけ無駄だろう。


「だったら、構わんだろ。詳細は追って連絡する。おそらく王都で顔合わせになると思うから、お前もそのつもりで。」


「承知いたしました。」


リディアは、父上の姉の娘、つまり私の従姉に当たる。丁度年ごろの時期に、病気を患い、一番良い時期を逃していた。しかも、顔に痘痕が残ってしまい、本来であればまとまるはずの縁談も、まとまらなかった。積極的に、婚期を逃していた私とは違うのだから、さぞや辛かっただろう。


痘痕と言っても、私からしたら、大した事ないのだが、どうやら嫁ぎ先の家は、そうもいかなかったらしい。年取れば、誰だって出来物の痕どころではなく、シミだって、皺だって、禿だってできるだろうに。


元々大人しい性格だったのに、年々塞ぎがちになっていったと聞くから、無事に縁談がまとまって良かった。彼女を大切に扱ってくれる嫁ぎ先である事を、祈るばかりだ。


だが、叔母よ、なぜ、私を巻き込む。


侍女であれば、結婚してからも働く事は可能かもしれないが、それも嫁ぎ先にもよるとは思うが、文官であれば、間違いなく辞めなければならないだろう。


もともと、“女性文官は結婚したら辞める”というのが定番コースである為、中々大きな仕事を回してもらえない。辞めるとわかっているのであれば、大きな仕事は、辞めない男性文官に経験させた方が良い。という認識だ。


ようやく私にも大きな仕事が回ってきたというのに...。


姪っ子にも幸せを!

と嬉々として話す叔母が目に浮かぶ。


彼女には、昔から可愛がってもらっていた。

悪気がないのは、わかっているし、私の為だと信じているのもわかっている。

いや、悪気がないだけに、始末が悪い。


叔母の思う”幸せ”が、”私の幸せ”と同じとは限らないというのに。多分、彼女は自分の考えに疑いなんてないのだろう。


そういえば、

私が文官になると言った時、”婚期が遅れる”と、父上に本気で怒っていたなと思い出した。たぶん、あれも彼女なりに、本気で私の事を心配していたが故だろう。


いつも、叔母になぜだか頭の上がらない父だったが、あの時ばがりは、叔母の言う事を聞き入れず、私の願いを叶えてくれた。改めて感謝しよう。


ちなみに、あの後、入城するまでの間、彼女のお見合い紹介の数は、急激に増えたが、入城したのを境に、叔母からのお見合い紹介は、年に1,2回までに減った。


後から聞いた話だと、父が叔母に

入城するまでの間の、私が気に入る人が入れば、話は別だが、入城した後は、諦めてくれと。言った為らしい。


その話を聞いた時、

あ~それで、あの頃、バンバンお見合いが組まれたのかと。納得したのだった。


度重なるお見合いとその準備の為、文官登用試験の勉強時間を捻出するのが、とても大変だった。だが、そのおかげで、いざ仕事してみると、その時の遣り繰り経験が生かされたので、叔母にはひそかに感謝している。直接本人には伝えることはないが。


ちなみに、私にかまけてないで、自分の子どもであるリディアに一生懸命頑張ろうよ!と思ったが、叔母は、リディアにも同じようにお見合いを組んだ結果、リディアは体調を崩してしまったらしい。


いや、叔母よ。学んでくれ。

そもそも、そんなにお見合いを組んだら、外聞が悪くなるではないか。




私の年齢も適齢期から外れた事もあり、最近は、お見合いの話も何もなかったというのに。リディアの結婚で、再び叔母に火が点いてしまったらしい。


はぁ~、そんな叔母にまたしても

巻き込まれるなんて...



巻き込む...。


巻き込めば良いのか!



いや、しかし、この日程で間に合うか?

とりあえず、案を練ろう!



それから、私は時間を忘れ、昔から使っていた愛用の机に向かい、お茶会の案を練り、企画書を作成したら、夕飯の準備ができたと言って呼びに来た執事に、呆れられてしまった。どうやら、ずっとノックをしていたらしい。



き、気づかなかった...。




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