エイドハンマー
「よし、降下地点決定」
電脳世界の空を飛ぶヘリコプターの中で私はつぶやきました。
「さあ、降下です」
そう言うと私はヘリコプターから飛び降り、眼下に広がる荒野にパラシュートを展開しながら着地しました。
「「エイドハンマー」さん、お願いしますね」
今回、私が使うのは「エイドハンマー」という援護主体の武器です。
このハンマーは「エイド」、すなわちダメージを受けた見方の回復を行える武器です。
どうやって、回復するか。
ハンマーで殴るんです味方を。
……具体的に言いますと、このハンマーは常時、その頭部に回復効果のあるオーラをまとっています。
このオーラに触れたプレイヤーの体力を回復する効果が備わっております。
「さて、皆さんはどこですかね」
そしてこのハンマーの頭部の材質はスポンジに近いものです。
だからプレイヤーを殴ってもノーダメージです。
すなわち、ゴーレムを殴ってもノーダメージです。
……ご察しの通り、このハンマーは完全に援護主体。
というか、それしかできません。
「まあ、急いで接敵しても、他のメンバーの方がいなくては仕事がありませんので」
私はほどよいペースで戦地へと向かいました。
「……おっ、やってますね皆さん」
私の眼前では、ターゲットのゴーレム「ジャイアント」と、他のメンバー三人が激闘を繰り広げていました。
「これは早くも私の出番なのでは?」
味方の負傷を待ち望むのは、やや不謹慎な気もしますが、勘弁してください。
ホントに今回は回復しか、やることないんで。
などと言ってる間に、メンバーの一人のチェーンハンマー使いの方が深手を負いました。
「出番ですね」
私はすかさず、ゴーレムから距離をおいたそのメンバーの一人のもとへハンマーを構えながら接近しました。
……一見不審な行動な為、そのメンバーの方が私を二度見してきました。
ご安心ください、ちょっと叩かせて頂くだけなんで。
「失礼しますね」
私はそのメンバーの方に向かって、エイドハンマーを振り下ろしました。
そしてそのハンマーのまとうオーラに触れたメンバーの方の体力は、全回復しました。
そうです、全回復なんです。
これがこのハンマーの何よりの強み、攻撃を捨てることで得たサポート力です。
『いいね』
回復したメンバーの方からいいねが届きました。
ありがとうございます。
それが何よりの励みになります。
私はそのかたに「いいね」を送りました。
そして全回復したメンバーの方は、その巧みなチェーンハンマーさばきで、ジャイアントを倒しました。
「これは私も嬉しいですね」
『ジャイアント 解体』
私はチームメンバーとハイタッチを交わしました。