チェーンハンマー
「よし、降下地点決定」
電脳世界の空を飛ぶヘリコプターの中で私はつぶやきました。
「さあ、降下です」
そう言うと私はヘリコプターから飛び降り、眼下に広がる荒野にパラシュートを展開しながら着地しました。
「「チェーンハンマー」さん、お願いしますね」
今回、私が使うのは「チェーンハンマー」という独特の形状をした武器です。
一言で言ってしまえば、このハンマーはいわゆるモーニングスターです。
モーニングスターとは持ち手の柄の先端から伸びた鎖の先に、鉄球が接続されている武器です。
このチェーンハンマーもそれと同様の形状をしています。
「取り敢えず接敵したいのですが……持ち運びづらいですね」
このハンマーはいかんせん取り扱いが難しいです。
戦地までに運ぶのも一苦労でございます。
「ちょっとカッコ悪いですが、鉄球部分を地面に置いて、それをチェーンで引きずりながら行きましょうか」
チェーンの長さは3メートル程あるので、下手に巻き取って運ぶと、いざ戦闘に突入したときに、絡まって使い物にならないなんてことも。
「なんか犬の散歩状態ですが、戦場に向かいましょう」
ここまでの話だけだと、いまいちこのハンマーの強みが分かりませんよね。
でも、しっかりとこの武器にも強みがあります。
それは今からご覧にいれましょう。
「いましたね」
私は視界にターゲットのゴーレム「オーラ」をとらえました。
このゴーレムは見た目は「ジャイアント」と同じ人型ですが、自身の周囲2メートル程に、プレイヤーが触れるとダメージを受けるオーラを張っています。
「よし、では早速」
私はオーラの直前で立ち止まると、チェーンハンマーを持ち手の部分を軸に大きく回転させ始めました。
ご覧の通り、このハンマーは遠心力を利用して、チェーンの先の鉄球部分を対象に向けて飛ばします。
……正直かなりのテクニックを必要とします。
「こればかりは運ゲーですね」
お恥ずかしながら。
私は思いきってハンマーの柄を握りしめた手を前に突き出しました。
それ同時に、私の頭上を円を描いて回っていた鉄球が、チェーンを引っ張りながら、オーラの方へと飛んで行きました。
「おっ、これはいい感じなのでは」
空中を直進する鉄球は、やがてゴーレムの張ったオーラを突き抜け、その先の本体に直撃しました。
『オーラ 解体』
そうこれが、この武器の強みです。
今の様に、オーラなどのプレイヤーが立ち寄り難いエリア内を乗り越えて、攻撃が可能なのです。
また、今回は一撃でしたが、「ハンドハンマー」の様に一回切りの消費武器ではないので、鎖を手繰り寄せることで、再度攻撃も可能です。
「……上手く飛んでよかったー」
私はチームメンバーとハイタッチを交わしました。