ウインドハンマー
「よし、降下地点決定」
電脳世界の空を飛ぶヘリコプターの中で私はつぶやきました。
「さあ、降下です」
そう言うと私はヘリコプターから飛び降り、眼下に広がる山岳地帯にパラシュートを展開しながら着地しました。
「「ウインドハンマー」さん、お願いしますね」
今回、私が使うのは「ウインドハンマー」という属性攻撃を兼ね備えた武器です。
このハンマーを読んで字のごとく「ウインド」。
つまり、四つの基本属性の内の「風」の属性攻撃を繰り出すことのできる武器です。
「今回のフィールドは山ですか。普通に登ったら接敵前に体力切れを起こしそうですね」
このハンマーは大きく振ることによって、ハンマーの頭部が切った空気の部分を中心に、巨大な竜巻を起こすことができます。
それってかなり強くないか、と思われるかもしれませんが、そこは流石このゲームです、しっかりとデメリットによるバランス調整がされております。
端的に言いますと、この発生する竜巻、威力はゼロに近いです。
じゃあ、何がこのハンマーの強みなのか。
それを披露できるのが、今回のこのフィールドです。
「えーと……この辺りかな?」
私は眼前の切り立った崖の前に立つと、構えたウインドハンマーを大きく振り回しました。
すると、すぐそばに巨大な竜巻が発生しました。
このままでは巻き添えを食ってしまいます。
しかし、それでいいのです。
何故ならこの竜巻内に侵入することが目的だからです。
「よいしょっ」
私は竜巻の中に飛び込みました。
先程も言いましたがこの竜巻の威力はないに等しいです。
つまり、内部に入った物は無傷の状態で、遥か上空に吹き飛ばされます。
「……よっと」
私は見事、一瞬にして山頂にたどり着きました。
「流石に一番乗りですね」
ここは今回のターゲットの生息地でもあります。
ゴーレム「ポール」。
雲を突き抜けるほどに長身な筒上のゴーレムです。
ちなみに弱点は雲の上の頭部です。
……飛んでくれって言ってる様なものですね。
私は再び構えたハンマーを振り回し、巨大な竜巻を発生させ、その中に飛び込みました。
そして、風の向くまま雲の上まで飛び上がりました。
「完全にソロプレイになってしまっていますが……ご容赦を!」
私は落下しながら、眼下のポールの頭部にハンマーの一撃を食らわしました。
『ポール 解体』
「……あだっ!!」
流石に高低差があった為、私は着地時に若干のダメージを受けました。
そして、しばらくして頂上に到着したチームメンバーと、わずかに気まずそうにハイタッチを交わしました。