トンファーハンマー
「よし、降下地点決定」
電脳世界の空を飛ぶヘリコプターの中で私はつぶやきました。
「さあ、降下です」
そう言うと私はヘリコプターから飛び降り、眼下に広がる荒野にパラシュートを展開しながら着地しました。
「「トンファーハンマー」さん、お願いしますね」
今回、私が使うのは「トンファーハンマー」という私の腕程の長さしかない二対の小型の武器です。
その名の通りトンファーに似たT字の形をした軽量な武器です。
様々な持ち方で使用できますが、基本的にはT字の一番短い縦棒の部分を持ち、長い棒の部分が腕と平行になるように構えます。
あとは突く、叩く、振り回す何でもござれです。
「で、ターゲットの「アント」はどの辺りですかね」
今回のターゲットは「アント」という、アリの姿をした小型で群れをなして行動するゴーレムです。
この様な複数体のターゲットは全滅させるのが解体条件です。
つまり、広範囲を攻撃できる、又は小回りが効いて機動性に優れたハンマーが有効です。
私のこのトンファーハンマーは後者である為、一体一体を各個撃破していくスタイルになります。
「ま、とにもかくにもまずは接敵ですね」
私はいつもより軽い体を全速力で前進させて、ゴーレムの下へ疾走しました。
ちなみに他のメンバーの方々は全員、ノーマルハンマー系の武器をお持ちのようです。
ノーマルハンマーはアントを一撃で葬れる威力がありますが、軽量系の武器に比べると機動性が劣る為、一体倒している内に他のアントに囲われて、リタイアなんてことになりかねません。
すなわち、今回の戦いは軽量系使いである私の活躍にかかっております。
「プレッシャーですね……」
などとつぶやいた次の瞬間、眼前の大地の下から一体のアントが飛び出してきました。
「わっ!? ……急ですね、でもひるみませんよ」
私はトンファーハンマーを、持ち手を軸に半回転させ、腕と平行にある棒の部分の拳の前に出し、そのままその棒の部分でアントに突きの一撃を食らわせました。
『アント 一体解体』
「よし! ……なんて言ってる間もなく!」
私の背後には新たに二体のアントが迫っていました。
私は振り返り様に、拳前に突き出たハンマーの棒の部分で、その二体のアントを凪払いました。
『アント 19体解体』
「よし! ……ん? 19体?」
私は不可解な解体数に疑問を抱き、周囲を見渡しました。
すると、すでに他のアントを撃破した他のメンバーの方々が達成感に満ちた表情でいらっしゃいました。
「え? もうそんなに倒したんですか? ……皆さん、お強いですね」
私は先程の思い上がりに羞恥心を抱きながらも、眼前に飛び出して来た最後の一体のアントを叩き落としました。
『アント 全解体』
私は若干照れながらも、チームメンバーとハイタッチを交わしました。