フレイムハンマー
「よし、降下地点決定」
電脳世界の空を飛ぶヘリコプターの中で私はつぶやきました。
「さあ、降下です」
そう言うと私はヘリコプターから飛び降り、眼下に広がる森林にパラシュートを展開しながら着地しました。
「「フレイムハンマー」さん、お願いしますね」
今回、私が使うのは「フレイムハンマー」という属性攻撃を兼ね備えた武器です。
このゲームには「火」「水」「風」「土」四つの基本属性があります。
そして、このフレイムハンマーはその中の「火属性」、つまり火炎を伴う攻撃を繰り出すことができるものです。
「では早速、「ツリー」のもとへ行きましょうか」
今回のターゲットであるゴーレム、「ツリー」。
その名の通り、巨大な樹木の姿をしたゴーレムです。
そのゴーレムは体を植物に近い性質をもつ鉱石で構成されている為、火属性の攻撃に弱いです。
このハンマーにもってこいの相手ですね。
「この辺りですね……あっ、いたいた」
私はその目で、茂みの向こうにいるツリーの姿を確認しました。
「うーん……ちょっと近づけないかな」
ツリーは自身の周囲の地中に探知機代わりの根を張っていて、その根の上を通った相手を、触手の様な鋭い枝で狙い打ちして攻撃して来ます。
「どうにかして、あの根を排除したいところですが……おっ?」
私のすぐそばの木が小さく揺れました。
見上げると、木の上には「ガンハンマー」を構えたメンバーの一人がいました。
「グッドタイミングですね。お任せしましょう」
私はガンハンマー使いに「いいね」を送りました。
ガンハンマーの威力なら、あの根の包囲網に穴を開けられるでしょう。
私は包囲網突破に備え、ハンマーを構え直しました。
フレイムハンマーは、形状こそノーマルハンマーと大差ありませんが、攻撃時にハンマーの頭部が赤く発火します。
打撃による威力は低いものの、属性によるダメージの威力は計り知れないものです。
「おっ?」
轟音と共に、ツリー周囲の地表一帯に土埃が上がりました。
「流石、お見事ですね」
土埃の晴れた先では、巨大な杭が地中の根ごと大地をえぐっていました。
「さあ、仕事の時間です!」
私はハンマーを構えると、ツリーに急接近しました。
すると、ツリーはこちらに向けて無作為に鋭利な枝を高速で伸ばして来ました。
「勘がよろしいですね。ですが……」
次の瞬間、私に迫って来た枝達は粉々に砕け散りました。
メンバー二人のノーマルハンマーによる援護です。
「助かりました!」
私は再び「いいね」を送ると、ツリーのゼロ距離まで接近し、紅蓮に燃え上がるフレイムハンマーを振り下ろしました。
「ファイヤー!」
ベタな掛け声と共に、ハンマーから放たれた業火の一撃が、ゴーレムを貫きました。
『ツリー 解体』
私はチームメンバーとハイタッチを交わしました。