ノーマルハンマー
「よし、降下地点決定」
電脳世界の空を飛ぶヘリコプターの中で私はつぶやきました。
VRMMOゲーム「ノックアウトゴーレム」。
それは、荒廃した世界をさ迷う巨大鉱石生命体「ゴーレム」を、四人一組のプレイヤー達が特殊武器「ハンマー」で「ノックアウト(解体)」するゲームです。
「さあ、降下です」
そう言うと私はヘリコプターから飛び降り、眼下に広がる荒野にパラシュートを展開しながら着地しました。
「さて、まずは地図の確認ですね」
私はマップウィンドウを開くと、対象であるゴーレムの現在地と、別の地点に降下したチームメンバーの3人の場所を確認しました。
「なるほど、丁度ゴーレムを中心に四方を私達が取り囲む形になっていますね」
ちなみに他のメンバーは完全に初対面の方々です。
「みなさん、どう出てきますかね。取り敢えず様子を見ながら、ゴーレムとの距離を詰めましょうか」
このゲームはチャットで指示を送りあったりはできません。
唯一できるのが「いいね」を送ることだけです。
「ノーマルハンマーは近距離武器ですからね。近づかないことには始まりませんよ」
私が装備しているハンマーは「ノーマルハンマー」という、私の身の丈程の長さの柄に、巨大なハンマーの頭部がついたものです。
ノーマルという言葉が指すように、このゲームの武器の中で最も普遍的な武器です。
良くも悪くも癖がないハンマーなので、あらゆる局面に対応できます。
「おっ、いたいた。見えましたね、ゴーレム」
私は視界にゴーレムの姿をとらえました。
そのゴーレムの名は「ジャイアント」。
全身が岩石で構成された、人型の大きなゴーレムです。
弱点は右胸部なので、まずは膝をつかせて弱点がハンマーの射程範囲内に来るようにしなくてはなりません。
「さてと……おっ、メンバーのお三方が既に戦闘に入ってますね。あれは右脚狙いですかね?」
三人はゴーレムの鉄拳攻撃をかわしながら、各々のハンマーでゴーレムの右脚に攻撃を加えています。
「腕が邪魔そうですね……よし、私が腕を除去しましょうか」
私は三人と同じくゴーレムに近づくと、丁度迫り来た彼の鉄拳に対して、ハンマーの一撃を打ち込みました。
そして見事、ゴーレムの右腕を破壊しました。
「チャンスですね。みなさん、右脚を集中攻撃ですよ」
私がそう言った次の瞬間、ゴーレムの右脚が崩壊しました。
「流石、お仕事が早いですね」
私は三人に「いいね」を送ると、膝をついたゴーレムの右胸部に向き合いました。
「とどめ、頂きます!」
私が振り下ろしたハンマーの一撃が、ゴーレムの弱点を貫きました。
『ジャイアント 解体』
私は、チームメンバーとハイタッチを交わしました。