帰還
短いですね、すみません。
三ヶ月…長かった。
アンデットの身体には食欲がない。昔は餓死しかけてたからこれは願ってもないことなんだが、せめて肉を食って死にたかったなぁ…
食欲がないということは排泄もない、そして、アンデットは寝ない、疲れない。
なので休まず勉強漬けの三ヶ月だった訳だが、疲労はしていない。でも、多少は手加減してくれてもよかったと思うんだよね…精神魔法みたいに心にダメージが入りそうだよ。
「マスター、お疲れ様でした。改めて労いの言葉を」
「ありがとう、チノ。」
チノとはこの三ヶ月の間に俺が司書につけた名前である。いつの間にか見た目が女の子っぽくなってたし、本人も名前を付けてもらって嬉しそうだったのでいいと思う。…補足として、何でも知ってるからって『全知全能』からとったりはしてないから!!
「では、気を付けて行ってきてくださいね。こちらでは三ヶ月経っていても向こうでは三日くらいしか経っていませんのでご注意を。」
「はーい、じゃあ行ってきまーす!」
ここで三ヶ月無視していた右下のマークを利用して元の世界に戻る。
戻ってきた…『むこう』に行った時と同じで家の中にいる。
取り敢えず周りを見て誰もいないことはわかったので覚えた魔法を使ってみる。
「『サーチ&インビジブル』」
さっそく最近できるようになった継続詠唱をして、この都市に生命体がいないか確かめる。
…あっ、いた。
都市の入り口に数人が集まったグループが三つある。転移するまでもないので、歩いて移動してみる…すると前のほうに男四人のグループが見えてきた。
「おいおい、ほんとに人っ子一人いないじゃあねぇか…ほんとにベルリンはどうしちまったんだよ」
「三日前から連絡が途絶えていたので偵察に来てみれば、この有り様とは…予想以上ですね」
「三日でこれか?冗談だろ…」
「うむ。まさに地獄絵図ですな。」
…他の二グループはもう都市の中に入って行ってしまったので一番出口に近いこの四人に接触してみることにした。『パージ』
「こ、こんにちは!!」
いきなりどもってしまった…何やってんだよ俺。
「なっ!アンデットがしゃべったぞ!!」
「いきなり現れたと思えば、これは…」
「どうなってやがんだ…」
「驚きましたな。」
あ、そっか、見た目からアウトなのかな…
「あ、あのこれには深い事情がありまして…」
「何言ってんだアンデットのくせにっ!おい、いつも通りやるぞ!」
「「「了解!!!」」」
やっべぇ、最初から話すら聞いてもらえないんだが…確かにこの三ヶ月でアンデット(自分)慣れしちゃってたからなぁ、失敗したー。
…弱すぎない?……切られたからー切れてはないー殴っただけなのに、吹っ飛ばずに殴った場所が消えた。気のせいかと思ったけど、例外なく全員が消えた…
…どうしよう、いきなり詰んだ……
『マスター、この場合は見た目を変えて接触か、自軍アンデット生成への利用のどちらかを提案します。』
「えっ!しゃべれるの!?」
『いいえマスター、これは思念です。私がエクストラに属するのは説明したと思いますが、これも効果の一つなのです。マスターも声を出さずとも、会話できるはずですよ。』
え、まじか。
「『あーあー、聞こえる?』」
『はい、聞こえていますよ。』
「『ほんとなんだ、チノと話したいって考えてたらいけたよ。』」
『それはよかったです。では、どうしますか?』
「『うーん、まぁ後二グループあるしね、両方試してみるよ。』」
『了解しました。マスター、思念で会話できるといっても普通に時間は進んでいますので、無暗に使わずご自分でも考えて行動してください。』
「『わかったよ、頼りすぎるなってことなんでしょー』」
…っとまぁ、新しくできることも増えたところで本番と行きますかね。