プロローグ
未熟ですみません。
破壊された城の跡地で黒い外套を被った魔術師の男と
全身鎧を着て金色の剣を持った勇者が相対していた。
「ぐっ…」
戦況は勇者の優勢、第一に魔術師と剣士との戦いで近距離でやり合って魔術師が優勢になるはずがない。その分、この魔術師はそれが出来るくらいに優秀であるのは分かる。
そこで、魔術師は距離をとったと思うと何処からともなく取り出した大きな球体を両手で持ち天に掲げた。
そして、王都全体に激震とともに巨大な魔法陣が発生した。
「っっ!! 貴様!何をしたっ!」
「私ではお前に勝つことはできない。なので、お前諸共、この都市の生物全てに禁呪の糧になってもらうのだよ。 これは我が野望、そして主が望み…さぁ、受け入れよ勇者よ。」
「なっ!やらせr…」
勇者は言葉を最後まで言いきれずに光に呑み込まれた。
「サモン!トランセンドアンデット!!!!」
勇者を含めた生物が何もなくなった王都で魔術師の禁呪が発動された。
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この日、この時、一つの国が滅び、
一つの王が生まれた。
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俺、イルはこの世界で最も不運だと卑下している。
この世界の人間は生まれながら神からギフトと言う恩恵を授かる。
ギフトとは一人につき一つだけ持つものとされており、ギフトに応じて一般の者より特質した才能を発揮する。
基本的には農業関連のギフトを持って産まれ、地方で農民として生活するか、都市で平民として職を持って生活する二パターンだが、例外はあり王族や貴族そして聖騎士は通常とは違ったギフトを得て産まれてくる。そのため平民との区別がはっきりしているのだ。
平民にも例外は存在し、稀に貴重なギフト持ちが産まれることもある。そういったものは学業に励む事を国に強制されるが、成績次第で親子そろって平民でありながら平民よりも優遇された地位につける。
そして、国の運営に欠かせない商業もまた、ギフト次第では誰でもなれる。 交渉術や、目利きといったものが常だが、世界の有名な豪商は「豪運」という商業界では神にも等しいギフト持ちだそうだ。
とても長い前置きになったが、イルも勿論ギフト持ちである。俺のギフトは…
ゴンッ
「……あっ!!すみません!」
「おいおい、坊主、そんなんで俺様に許して貰おうって言うんじゃないだろうな?…ほれ見ろよ、てめぇのせいでシワが出来ちまっただろうがよ。」
「すみません……」
「悪いと思ってんなら、金出せよな。金。」
男が俺から金を巻き上げようとすると、男の取り巻き達がケラケラと笑いだした。
「すみません……僕、もうお金なくて…」
あぁ…不運だな……
そう、俺のギフトは「不運」…
産後、両親は俺のギフトを「幸運」と勘違いし、大はしゃぎしたらしい、だが、医者の読み間違いだと分かると一転して落胆してしまった。 医者も不運などと言うギフトを見たことがなかったらしく、レアなのは間違いないのだが俺は存在自体が不運だった。
両親は責任感が強い人で、不運な俺をもしっかりと育てようとしてくれていたが、それも長くは続かず、父は俺が十の時に俺との散歩中に俺を庇って殺人鬼に殺された。 おそらく俺の不運のせいだろう。 その後、母は一人で俺を育ててくれていたが、二年前、俺が十二の時に過労死した。
ゴォォォオン!!!!
その時、何やら激しい音が王城の方から聞こえた。
「ちょっ、おい、何があった?!」
「城のほうで爆発が、あっ!見ろよ城から煙が…」
男が俺から気を逸らし取り巻きの男達と話し出した。
俺はこのギフトが災いしてろくに飯にもありつけず、バイトも続かず転々としている。 このままいくと衰弱死しそうだ。それでも二年は耐えれているのだから自分でもすごいと思っている。
まぁ少なくとも俺の人生は、良い方向に傾くことはほとんどなかった…だから、いつぶりだろうか、運がいいのは…でも、王城から爆発なんて生まれてこの方一度も見たことは無い。ということはよっぽどの事なのだろう…
俺がそんなことを考えていると、爆音とともに王城が吹き飛んだ。
「え……?」
爆破した城の瓦礫が都市に飛来していた。
ここも、城から離れていない。むしろ城は王都中心から少し離れていて中心部はちょうど俺の現在地辺りだ。
普通は王城中心に都市が形成されると思うが、何か意味があるらしかった。
「そんなことより、早く離れないと!」
しかし、現実は非情。そして、俺は不運ギフト持ち。
…運命は常に俺の敵をする……
一際大きな瓦礫が目の前の家に落ちる。
そしてひしゃげた家の一部が俺の…
「あ…ああぁぁ…!!」
俺は不運だった。
俺は無力だった。
自分の上の瓦礫を退けることが出来ない。
「あぁ、フォルトォーナ様…」
この世界の神に与えられたこのギフトのせいで色々なものを失ってきた俺でも、毎日両親がしていた幸運の神への祈りを止めたことは無く祈り続けてきた。
少しでも、ほんの少しでも運が良くなるように…
「…このまま死んだ方が良いんだろうな。」
生きていても、俺に居場所はない、そう何度思ったことか…それでも親が繋げ育ててくれたこの命をなんとしてでも生きねばと自分に言い聞かせてきた。
でも、俺はここで終わる…
「俺、頑張った、よね…父さん…母さん…もう、そっちに、行くね……」
そして、俺の意識は途切れた。
こんにちは、こんばんは、しなぷすと申します。
今まで本サイトでは「読もう」しか利用していなかったのですが、
何を血迷ったのか、小説を自分でも書いてみようと思い書いてみた所存でございます。
勝手に書いて自分で満足していればいいような気がしなくはないのですが、
せっかく身近に簡単に投稿できる良サイトがあるのですから、利用してみない手はありません、よね。
手直しする箇所も多くあると思うので、所々変更すると思いますがそこは未熟な私が悪いのですから「ごめんなさい。」