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選ばれたのはケモナーでした  作者: 竹端景
第三章 運命の出会いとケモナー
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修羅場の職場

 みるからに修羅場とわかるような場所が父様の職場なのか。

 何日も帰っていない人がいるようだけど、変な臭いはしない。よくみれば部屋の片隅に何組かの布団が敷かれている。


 あそこで仮眠をしているのか?いや。みんながいるから熟睡はできないだろうけど。


 四日ほど徹夜をしていたという男性がふらふらと布団に近づき倒れこむようにして…身動きひとつせずうつぶせなんだけど、生きてるよな?


「なんか…忙しそう」

 そう…だな。忙しそうだ。


 父様はどこだろうかと部屋をぐるりと見てみるが、それらしき姿はどこにも見当たらない。

 別な場所にいるのな?


「あれ?陛下じゃね?」

「なんだ?幻覚か?誰だ?幻覚魔法を使ってるのは!どうせ幻覚を作るなら、今すぐ俺の家とベッドにしろ!」

「いや、あの取り巻き…ガネリアガルまでいやがる」

「ガネリアガルがいやがる…ふふっ」

「おーい!ザクス家の薬持ってこーい!発狂しかけてるぞー!」


 ロイヤルメイジの人たちが気づいたようだが、なんというか…すごい立派なエリート魔法使いたちって話を聞いているんだけど、どうみたって、街でみかける兄ちゃんにしかみえない人たちが多いんだけど。


 親父ギャグでゲラゲラと笑っている明るい茶パツの人とか、他にも何人か…しかし、よくみれば全体的におじさんが多めだな。女の人はぱっとみたところいない。学校帰りの学生とくたびれたサラリーマンのようだ。


「あー…陛下。なにかご用ですか?」


 頭をバリバリとかきながら、目の下にどえらいクマを飼っていらっしゃるおじさんが声をかけてきた。


「ボリン、久しぶりぃ」


 エレス様はとても嬉しそうに返事をしている。どうやら知り合いみたいだな。


「ケルン君、紹介するねぇ。彼はボーリンゲルフェルト・アリンコル。通称ボリン。俺の同級生でロイヤルメイジの次席なんだよぉ」

「実際は三席だがな…で、陛下がなんで子供を連れ…ん?んん?」


 ボリンさんは、胸にしまってあった眼鏡を取り出すとそれをかけてケルンの顔を覗きこんできた。な、なんだよ。


「おい、坊主。ちょと、タレ目にしてくんね?」

「タレ目?んー?」

 目のはしを指で押さえてみろ。

「こう?」


 ボリンさんはしばし固まってから、天をあおいだ。


「やべぇ…とうとう俺まで幻覚を見始めた…おーい!誰かー!薬くれー!」

「次席が逝ったか…」

「ふふ…やつは徹夜四天王の中でもわりと強いというのに…」

「あらやだぁー!次席が倒れたらあたしのお肌が荒れちゃうじゃない!んもぉー!」


 ボリンさんこ言葉には他にもいくつか返ってきていたがどれよ優しさの欠片もなかった。

 それから、お肌の荒れを気にしているのは見た目はとてもダンディなおじさまだった。うちのカルド並みのダンディなおじさまがくねくねしていた。


「てめぇら!うっせんだよぉ!この子をみてみろや!」


 全員がなんだなんだと、ケルンの顔をみてボリンさんと同じく天をあおいだ。

 いや、なんだよ。ずっとケルンがタレ目状態だぞ。


「嘘だぁ…絶対今日は帰れると思ったのにもうだめだぁ…」

「似すぎだろぉ…一発でわかるぜ…」

「あたし好みじゃないけどいい男になるわよぉ…だからあたし帰ってもいいかしらん?」

「噂の次席の長期休暇理由か…」


 なんか色々といっているけど、次席ってボリンのことだろ?長期休暇していたのか?

 でも、ケルンとは関係ないだろ?


「で、陛下…もしかしなくても、この坊主…あー、おぼっちゃんの父親に用がおありで?」

「うん。そうだよぉ」

「デスヨネー。キョウモオトマリダー」


 乾いた笑いがあちこちから聞こえてきたが、なにか笑えるところがあったのだろうか?


 というか、ケルン。もうタレ目にしなくていいぞ。

「う?わかったー!なんか、みんな楽しそうだね!」

 …そうだといいけどなー。あれは、笑うしかないってときの笑い方だぞ?


「貴様ら!わしには挨拶がないのか!」


 ガネリアガルが突然大声で怒鳴るので、ぴたりと乾いた笑い声はやんだ。代わりに冷たい視線をガネリアガルにむけているが当の本人は気にしていないみたいだ。


「まったく…ロイヤルメイジの人手不足とはいえ身分の違いがわからぬ者まで引き入れるとは…」


 そうぶつぶつといっている。

 ロイヤルメイジが人手不足というより、優秀な魔法使いが少ないのかもしれない。

 これまで魔力が多いという人はケルンをのぞいて三人しか知らない。

 父様、ナザド、司祭様。この三人だ。


 他の人は魔力はあるが多くはない。スキルの方が遺伝しやすく、魔力はあまり遺伝しないようなのだ。


 簡単に遺伝で表すなら、スキルが優性、魔法は劣性遺伝となる。どうしてそのようになっているかは、研究段階らしいかまら混血が原因だろうと俺は推測している。

 種族特性などでスキルが発現しやすくなっていると、そのぶん、魔力のスペースが削られてしまう。そのため、魔力の少ない者が増えているのだろう。


 前は貴族なら安定して魔力が多い者が産まれていただろうかま、現在では枠を広げたのだろう。ナザドみたいに平民で魔力量が多い者だってきるだろうからな。


 ガネリアガルは鼻で笑っているが、身分の高さよりも、魔力の高さの方がいいと俺は思うんだけど。


「して、陛下。この者の父親とは?何席の者ですか?七席のゴレス男爵ですか?」


 そして、ケルンの父親も身分が低いとでも思ったようだ。

 エレス様が答える前に検討違いなことが正しいと思ったのか、勝ち誇ったような顔で部屋中をみている。


「ついてくるがいい。顔合わせをしよう…ケルン君はここで待っててねぇ…ボリン、頼むよぉ…何かあったら」

「命懸けでお()りしますんで!」


 ボリンさんがえらく食いぎみで、エレス様に返答をすると、エレス様は笑って手をふってからガネリアガルたちを引き連れて奥の部屋へと入っていった。


「なにを話すのかな?」

 気になるな…盗み聞きするか?

「んー」

「あー…坊ちゃん。フェスマルク首席の息子さんだよな?」


 ボリンさんが頭をバリバリとかいている。くせなのか?それとも…徹夜で風呂に入ってないからかゆいとか?…ローブにフケは見当たらないから清潔だと思うんだけど。


「うん!僕ね、ケルンっていうんだよー!」

「そうか。よろしくな。ケルン」


 今更ながらに握手を交わすと、周りで見ていた人たちもわらわらと近寄ってきた。


「うわっ。本当にかわいいじゃん。首席が自慢するのもわかるわ」

「そりゃ、首席とディアニア様のお子さんだろ?できが違うわなぁ」

「できればあんな超人に似ないで欲しいな」

「おめぇら、うっせぇ!仕事しろ!」

「「うぃーす!」」


 なんだか、ノリが体育会系みたいだな。魔法使いのはずなのに。

 ボリンさんが怒鳴ると蜘蛛の子を散らすように去っていった。


「ったく…しかし、何か気晴らしをするようなもんなんざ置いてないんだが…なんかしてぇことはあるか?」


 どうも適当に相手をするつもりでいてくれているようだ。忙しいだろうにな。

 けれど、これはなかなかいいチャンスじゃねぇか?

 ボリンさんが困ったようにいうので、ケルンはすぐにお願いをした。


「父様のお仕事をみたいです!」


 すると、ボリンさんは少し考えて、とても悪い笑みを浮かべた。


「よし、それ乗った」

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