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選ばれたのはケモナーでした  作者: 竹端景
第三章 運命の出会いとケモナー
82/229

飛ばされた先

 ぐるぐる。ちぎれては戻るような不思議な感覚。

 棒神様と会ったときを思い出すような浮遊感だ。


 ――――

 ん?何だ?

 ――――

 だから!なんだって!

 ――――

 …わからない。

 ――――

 何をいっているんだよ。

 ――――

 …泣くなよ。

 ――――

 なぁ、俺がいてやるからさ?だから泣くなよ。

 だって、世界は楽しいんだぜ?


 そうだよな?


「エフデ!」


 ふわっと水から飛び出すように感覚が広がる

 涙混じりにケルンに呼ばれて、俺はようやく現状の把握をすることにした。


 あれ?何か思考をしていたか?初めての『転移』だったから、感覚にずれでもあるのか?

 まぁ、なにもなかったしいいか。


 ナザドの『転移』魔法がお兄さんだけではなく、ケルンまで巻き込んでしまった。


 つまり、事故。

 どこもおかしいとこはないな?あ!お兄さんは!

 よかった。隣で倒れてるけど、息はしているし、どこも欠けていないみたいだ。


「ねぇ!エフデ!」

 お、おう。どうして泣いてるんだ?、どこもおかしくはなってないだろ?


 やけに焦っているし、泣いてるが、そんなに『転移』が怖かったのだろうか?確かに危険ではあるけど、そんなことでケルンが泣くとは思わないんだけど。


「もう!なんで、黙ってたの!心配したんだからね!いくら呼んでも返事をしないから!…エフデが…お兄ちゃんが、ひっく…死んじゃったかと、ひっく思って…う、ひっく…うわぁぁぁ」

 うぇ!っちょ。ひっく、ま、て!ひっく!俺までつられるからな!俺は大丈夫!な!ちょっと考えごとをしてただけ!

「うえぇぇん…ひっ…ほ…ほんと?…どこも痛くない?」

 おう!それどころか、元気だぞ!今ならたくさん勉強できるぐらいにな!

「よかったぁ」


 ふぅ…なんでケルンからの呼びかけに反応できなかったのだろう?それに、本当に調子がいい。

 エネルギー満タンって感じだ。


 しかし、ほんと一瞬なんだな。巻き込まれて…って、ここどこだ?お兄さんの家?


 どうやらここはどこかのバラ園らしい。しかもただのバラ園ではない。すごく細かく作り込まれた庭園だ。あの舗装された道は…どうみても魔石だ。照明がわりに魔石を使いまくってる。

 それに、青いバラ園。


 この世界では青いバラはあるが、かなり希少なはずだ。それを惜しげもなく使うとは…お兄さんが屋敷をみてそこそこだというわけだ。安くみてもこの庭園だけで、屋敷が建てれるだろうな。


 と、するならばお兄さんの服装はかなり変だな。


 お兄さんの格好は普通なのだ。多少質がよくても、普通の服だ。こんな庭園の所有者が着るようなものではない。

 ポルティでも買えるような服をお金持ちが着るだろうか。


「んっ…」

「お兄さん!大丈夫!?」


 お兄さんがケルンの泣き声によってなのか、目を覚ました。見た感じだいじだとは思うが、内臓とかにダメージはないよな?さすがにそれはわからないぞ。


「ここ…は…えっ?なんでぇ、君がいるのぉ?」


 お兄さんが周りをきょろきょろとしたながら、ケルンをみて酷く驚いている。


「お兄さんがねー、転びかけたとき、手が触れたの。それでかな?」

 助けようとして、手が触れたもんな。


 そう思ってお兄さんにいったのだが、お兄さんは強く否定した。


「いやいや、あのねぇ。それは絶対にないよぉ?だって、ナザドは、俺だけを指定したんだからぁ」

「え?触ってたら一緒に『転移』するんじゃないの?」

「それも『転移』だけどぉ、ナザドが使ったのは『テレポート』っていってねぇ、指定したものだけを飛ばすんだよぉ。不特定多数…わかるかなぁ?たくさんの人とかなら『ゲート』とか『ポータル』とかなんだけどぉ」


 お兄さんは途中からケルンにむけてではなく、自分にむけていっているようだ。

 どうもありえない魔法の結果らしい。


 魔法は精霊様に、魔力を渡して使うのが普通だ。

 精霊様に…精霊様が関係しているのか?


「精霊様が何かしたのかな?」

「精霊がぁ?…もしかして精霊のイタズラ?…でも…そういや先生の息子さんだもんなぁ。精霊に愛されてるなら…でもなんでだぁ?」


 精霊のイタズラ?って、父様がたまにされてるっていうあれか?変なとこに飛ばされるってやつ。

 フレーシュ地方との繋がりもそれのおかげだったりするし、悪いことはないんだけど…なんで、ケルンに?


「というかぁ…ここは」

「こちらから泣き声が…やはり、誰かいましたわね」


 お兄さんがいやに慌てていると、女の人の声が聞こえた。


 そちらに顔をむけると、緑のドレスをきた綺麗な女の人がいた。周りには鎧姿の女の人たちが護衛のように…って!剣をこっちにむけないで!


「なに奴か!ここを」

「お待ちなさい」


 すごい剣幕で鎧の女の人が問いただすのを、ドレスの女性がとめた。


「子供に剣をむけるなど、#私__わたくし__#が許しません…それに、いつまで座りこんでいるつもりですか?説明なさい」

「あははは…すいません」


 ドレスの女性がお兄さんにそういうと、お兄さんは立ち上がりながら謝罪の言葉を女性に伝える。

 だが、鎧の女の人はその行為が許せないようだ。


「この無礼者!」

「いいのよ、剣をおろしなさい」


 またも剣を構える女の人の腕をとって、一言を告げる。


「私の息子よ。…顔を見せに来ない、親不孝なね」

「はい、お母様。その…ご無沙汰しております」


 すると女の人は顔を真っ青にさせその場で膝をついてしまった。なにかを言おうと口をぱくぱくさせているが声にでていない。


「まったく…許してあげてね?女の園に殿方がくるなんて珍しいもの。先触れもないし…それで、その子は?」

「はい、あのぉ」


 ドレスのすそが汚れてもいいのか、しゃがんでケルンをみる女性。お兄さんの母親にしてはかなり若くみえるなぁ。

 お兄さんの母親なら、うちの母親と同じ歳ぐらいだろ?いや、母様の年代といえばいいか。母様とても若いから。確か、ポルティで母親と同じ歳の人がいたけど…四十代後半から五十代って人が多かったけど…斧人たちより若いというか輝いてるというか…あれ?赤い瞳だ。


「母様とおんなじだぁ…赤いおめめ…」

「私と?…あら、坊や…よくみたら、そっくりじゃないの!もしかして、ケルン君かしら?」

「うん!僕を知ってるの?えーと…お兄さんのお母様?」


 なんでお兄さんのお母さんがケルンを知っているんだ?

 そもそもお兄さんとこの人はどんな人なんだ?普通の人ではないし、貴族でもない。


 クスクスと…その笑い方が母様の仕草とまったく同じだった。


「私のことは、おばさんでいいわよ?…そうね、よく知ってるわよ」


 やはり、この人はなにか母様と関係がある人なのだろうか?


「ディアから聞いてるの」

「母様から?」


 母様を愛称で呼ぶほどで、ケルンを知っていて…どうみても身分が高いような人…貴族ではなくても身分が高い…待てよ。確か貴族ではないが身分の高い一族がいたぞ。

 おい、まさか。


「ええ。だって、私の大切なお茶のみ仲間で…大事な従妹ですもの」


 そういって、皇太后様は母様そっくりに笑ったのだ。

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