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選ばれたのはケモナーでした  作者: 竹端景
第一章 棒人間の神様とケモナー
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制作活動、曇りのち

 穿つ!


 渾身の力を込めて、ただ一振りに全力をそそぐ。手の先の毛細血管が、ぷつりと音をたてたような気がしたが、構わずに最後の一押しをする。


 まぁ、そう思ってるだけで、実際は、プリンをすくう感じなんだけどな。


 あの不思議な体験のあと、カルドはすぐに父様と話をしに、父様の小場へとむかった。一応、購入したものは簡単なチェックを受けた。とはいえ、彫刻刀だけしかチェックはされなかったのだけど。他の品は特に何もいわれなかった。


 特に問題もないということで、貰った彫刻刀で、早速、彫刻をすることにした。


 本来、下絵から始まり、木材の平面彫り、木材彫刻を下積みに、材料を石に変え、今度は石材の平面彫りからスタートする。下絵描きで、空間認識を学び、平面彫りで、基礎の彫りを学び、一本彫りで、ある程度の修練を積む。木材も、柔らかい物から、固い物へと材質を変えながら、徐々に石像を掘れるようにしていく。


 あくまで、自己流であるが、知識=経験ではない。知っているからといってできるというほど、簡単にはてきないのが、世の常である。


 例えるなら、料理の味を知っていて、レシピもある。だが、切り方や調理の順番間違えたら、記憶の中にある、想像の味と違ってしまう。


 故に、知識を持って、経験せねばならない。


 しかし、だ。俺はただの知識ではない。絵画、鍛冶、それに彫刻。その他にも、料理や調合など。この分野においてのみ、経験での知識があるのだ。


 おそらく、今までの魂の持ち主…前世といえばいいのか…俺であった者達が、似たような職種にしかつかなかったのだろう。例え、世界が違っても、同じような人生を歩んだのだろうと察しはつく。

 口癖になりつつある、魔法の言葉をあえていう。


 何せ、俺だからな。自分のことは、自分が一番知っている。


 調合もよくやっている。


 絵の具の魔石の調合、配合の調整だって、俺がやっているくらいだ。配合を間違えると、良い絵の具は、できないからな。発色も異なるし、乾いてからの色の変化も計算にいれなければ、劣化してまう。


「ふぅ~…あとちょっとだぁ!頑張るぞ!」


 独り言で気合いを入れているケルンは、満面の笑みを浮かべている。

 まぁ、全力で創作活動に取り組んでいるからな。子供の遊びの延長とはいえ。


「楽しいよぉ?」

 まぁ、それは同じ意見ではあるが、我ながら子供らしくない遊びだな。


 そうそう、今は、屋敷の庭の一角にある、こじんまりした作業場で、石像を彫っている。

 小屋…小さな平屋の一軒家程度の広さはあるか…昔、父親の友人のドワーフが、鍛冶場兼作業場にしていたところで、使い勝手がいい。

 机も椅子も、普通の物よりも、幾分か低く作られているから、ケルン一人でも、そこまで無理なく快適に過ごせている。


 一つ、異質になりつつあるとすれば、埃を被った炉だ。


 本当は、鍛冶もやりたいが、一家全員(使用人から、両親の知り合いまでも含む)から。止められてしまった。大槌や、金槌も、手が届かない場所に仕舞われている。手元には、小槌と、木製の槌が代わりに置いてある。まだ、早いか。五歳になったし、そろそろ屑鉄くらいは、溶かしたい年頃なんだけど。


 ああ、今日は誕生日だった。うっかり、記憶から抜けるところだった。俺としたことが、興味があまり沸かなくて、五歳になったということしか、頭になかった。

 

「誕生日は楽しいがたくさんだねーでもいつも楽しいもんねー?」

 そうケルンが思うくらいには、特別な日って感じではない。家族がいつも楽しませてくれてるからな。いってしまえば、毎日が誕生日だ。


 貴族の誕生日っていうのは、派手かと思ったら、そうではなかった。


 朝から、両親に笑顔で起こされ、誕生日おめでとう!といわれ、屋敷にいる全員からもおめでとうございます!といわれたぐらいで、あまり変化がなかったのが、原因だ。


 両親が起こしに来るのも、いつもと同じだし、今日の主役!みたいな毎日を送っているためか、俺としては、ああ、誕生日か。と事実を受け入れるぐらいだ。ケルンとしては、誕生日!何して遊ぼう!という、喜び?平常通りな感情な気もするが、テンションは高めだ。


 夜になると、ごちそうと、誕生日用のケーキがつくらしい。晩御飯は、毎日ご馳走だし、デザートにケーキの日もある。それに、誕生日プレートがついているか、ついていないかの違い。誕生日といっても、それぐらいだ。


 何でも、来年の誕生日は、人を招いて盛大にやるとか。七歳の誕生日は、学校…予定では寮生活ではなかった第三分校なのだが、その分校も来年からは寮になるとかで、両親や使用人一同、衝撃を受けていた…本校は王都よりも、西にあるが、分校は、王都よりも、東側、ポルティから南におよそ三十キロのところにある、ヘリティという街にあるそうだ。そこで、迎えることになるだろうから、盛大にやるとか。


 勘弁してもらいたい。今日が嬉しかったのか、朝起きて、パンツを履き替えたんだからな。


 シーツの模様は、そっとスケッチした。おねしょパンダという題名にしておいた。


 いつも通りなら、散歩の時間なのに、作業場で石像を彫っている理由は、誕生日だから、お屋敷内で過ごすこと。と、両親と約束したからだ。何でも、祝福をする為に、司祭様が来られるとか。


 くっ…ランディのちょっとクセっ毛な、ベア毛に、もふん!て顔をうずめて、スラ吉をもにゅん!ってしたかったんだけどな!

「我慢だよぉ?」

 そうだけど、残念がっているのはケルンの感情だろ?


 それは夜にやるとして、時間もあるし、朝から作業場に入っている。


 もうちょっとで完成するこの石像は、司祭様にあげよう。いらないと言われたら、かなり困る代物だけどな。ケルンも、司祭様に喜んでもらおう!という、気分なので、作業はスムーズに進んでいる。


 この作業は、確かに便利な所もあるのだが、元々が俺用ではない為、多少不便である。


 大きな…いや、かなり正直、部屋の半分が埋まってしまうぐらいでかくて、文字や模様がこれでもか!と書かれている用途不明のテーブルが置いてある。どかそうにも、部屋の入り口よりも幅がある…どうやって入れたんだろうか。中で組み立てたのか…?継ぎ目がないんだが。


 そのテーブルの上には、俺が…いや。ケルンが今まで描いた絵画の下絵や、絵画。俺と一緒になってから描いた下絵や絵画が、散らばって置かれている。


 窓の近くしか空いていないので。そこを石像を作る作業スペースにして、早三時間。

 細かい調整をして、ようやく完成した。

 窓から入る光で、キラキラと、真っ白い石材が光を放っているようだ。

 高さは、俺達よりも高い、百六十センチジャスト。

 真っ直ぐ、そして、見事な曲線。

 たくましいほどの二の腕は、力強さを表している。


 今回は、俺が納得する題名をつけれた。


 題名『魔神をしめた棒神様』


 ケルンはよくわかっていないから、棒神様!って題名にしているが、魔神をしめたって冠をつけた方がいいぞ。

 うん、棒人間が、右手をくいって、曲げているたけなような気もしなくもないが、棒神様だと威厳があるな。

 

 たぶん。


 きちんと、下絵を描いて作ったのだが、どうも、いい構図が浮かばず、腕組みポーズもなんだかな?って思いつつ、何枚か描いて、上手く描けたのが、この石像の下絵だ。

 疑似魔石ではなく、ちゃんとした魔石で作ったのが、また味わいを深めているんだろう。


 きっと。


 この大きさの魔石なら、高いように思えるが、実はかなり安いのだ。


 彫刻刀を貰って、帰宅してから、試しに木材でやろうと思っていたら、屋敷に着くと、ポルティで買い物したものが、ちょうど、運びこまれているところだった。画材屋や、注文していた品物と一緒に、この石材を積んで、屋敷にやってきていた。


 王都の教会から流れてきたもので、礼拝堂とは別にある、祭事を執り行う神殿の補強材として使われた時の余った石材を、寄付を求める意味合いからか、教会が売りにだしたそうで、画材屋の知り合いが、ケルンが何かしらの作品の材料に使うかもしれないと思って、画材屋にわざわざ話を持ちかけて、屋敷に持ってきたらしい。それならばと、買おうと思ったら、カルドが支払いをすでにしてしまっており、買ってもらってしまったのだが、銀貨一枚で済んだ。これは、俺もその場で見ていたから、間違っていない。


 魔石は、小指程度の大きさで、金貨三枚。


 かなり、安いのには、理由がちゃんとある。魔石の質が最も下で、利便性に欠けるのだ。

 ほぼ、ただの石と変わらないが、汚れにくく、多少汚れても、自ずと綺麗になるから、建築や彫像向きな材料になっている。


 価値としては、多少、魔石要素があるだけの、ありふれた建築資材なのだろう。


 しかし、この彫刻刀は凄い。石工用ではないのに、本当にすいすい作れてしまう。魔法の道具みたいだが、父様も普通の道具としかわからないってことだから、ちょっと特殊な材質で作られているんだろうな。


 とりあえず、シーツをかけて、掃除と運んでもらうのを頼まねばならない。自分でやろうとして、#箒__ほうき__#を盛大に窓ガラスに当ててしまい、それはそれは大変なことになった。


 三兄弟が揃っていた日だから、本当、もう、言葉にできない。したくない。ケルンには家事をさせい。鍛冶はしたいけど、作りたいのは、お馬さん用の蹄鉄とか、自分用とハンク用の包丁だからな。


 作業場の入口をノックする音が響く。そして、返事をする前にドアが開いた。


「ケルン。お客様が来られたらから、おいで」

「やぁ、ケルン。今日は何を作っていたんだい?」


 父様と、父様よりも背が高い、白よりも銀色に近い四十代ほどの男性が作業場に入ってきた。

 男性の紫を基本とした、長いローブの服装と、首につけている、丸の中に、人という字を上下逆さまにしたような、ネックレスをみれば、どのような人物かは明白である。


「司祭様!久しぶりです!今日は石像を作ってましたー!」


 ひょろりと細く、背が高い司祭様は、かがんでも、まだケルンよりも目線が高い。それでも、限界までかがんで、目線を、合わせてくれようとする。

 にこりと司祭様は、笑って、感心したようにいった。


「へぇー…相変わらず、凄いものを作っているね。モデルは誰だい?お父様かい?それともお母様?ああ、屋敷の誰かかな?」

「ふふふん…見てくださいー」


 首をひねりながら、モデルを当てようとする司祭様と、自慢気な父様に、テンションがどんどん上がっているケルンは、鼻歌まじりで、シーツに手をかける。


「じゃじゃーん!棒神様(ぼうじんさま)です!」


 力作を自慢するケルンが最初に見たものは、ポカーンとした様子の父様と司祭様の顔だった。あれ?いい出来だから、誉められるかと思ったんだが…あ、もしかしたら、棒神様の姿が、凄いイケメンとか、美女になっているのかもしれない。風の精霊様が、美女を象っていることを、失念していた。


 失敗したなぁと、提案した俺が反省会を開こうと思っていたら、唖然としていた司祭様がはっとなって、何をしたと思う?


 真顔で五体投地。


 泣きそうになったのは、ケルンであって、俺ではない。つられて泣きそうだなんてこともないぞ!かなり引いたが。

 子供からしたら、大人の真顔ほど、怖いものはないだろう。周囲の大人の真顔の時が、キャスとフィオナを除いて、ほとんど見ないから余計に。それから、ギャップが酷い。


 五体倒置のまま、お祈り始まったんですけど。もう、半泣きなんだけど。

 俺たち一心同体だからな。

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