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二体目の狼(前編)

「桐紅~、そろそろ晩飯だから降りてこーい!」


 結局、4匹のフォレストカニスという犬型のMOBに囲まれて、じり貧に陥り力尽きた。

 一対一なら、第3の街周辺の敵MOBの動き全てを覚えているから、必ず倒せる。現に、レアポップの敵MOBブラッドウルフ(中ボスとPLから呼ばれ、何故か一体のみで行動する。)には勝っているのだ。

 そう、集団戦に相対するための火力がないのだ!


「おい!早く降りてこいっ!バカ桐紅っ」

「だーかーらーっ!この前散歩しに行ったとき、車椅子をどこにおいたか覚えて言っているの?! それっ!」


 あの散歩が終わったとき、

「タイヤ洗っとくから先にお前を運ぶぞ?」

 といって、私をベッドの上においた……それから拓は車椅子をこの部屋に持ってきていない……。


「なんなら這ってでもそっちにいけばいいのかなあっ!」


 よし、有言実行だ!こうなりゃやけだ!

―――ガタンッ!―――

 ベッドから降りることには成功だ。まぁ、落ちただけなんだけど(笑)


「あー、あっ!わりぃ、完全に忘れてた!いま取りに行くからちょっと待ってろよ!」


 ふっふっふっ…もう遅いのだよ、拓海よ。私はもうすでに動き始めているのだ!

 第1関門の部屋の扉は、片腕に全体重を預けその隙にもう片方の手で開けることでクリアする。

 そして訪れる第2関門の、一回へと続く階段。


「くぅ~、部活動で鍛えた腕力というものを見せてやる!」


 手すりに捕まり腕力だけで起き上がろうとした瞬間、


「ばっかやろうッッ!」

「うわっ!」


 拓が私を無理矢理に持ち上げた。


「確かに今回は俺が落ち度だった。だがな?なにもここまでしなくてもいいだろう……はぁ…これで怪我するのは俺でもない桐紅なんだぞ?分かったな?」

「……はい。」


 むぅ……少しからかっただけのつもりなのに。大袈裟だなぁ。


「決して大袈裟なんかじゃあないからな?」

「へっ!?……な、なんの事かな?」

「はぁ……とりあえずこのまま運ぶから、おとなしくしとけな」


 はぁ……正直まだ慣れない。いきなり、こんなことになったのだ。まだ2ヶ月と経ってない出来事だし。


「まぁ、不完全型だっただけまだマシなのかな?」

「あ?なんだよ急に。」

「え、いや~、脚だけが動かないのが、まだ良かった方なのかもなって思っただけ。」

「そうかもな。」


 ……お姫様だっこにも、慣れてしまったのが悔やまれる。


「ほれ、タイヤは洗って、少し直しておいたからな。冷めないうちに食べるぞ。」

「いただきます」

  ・

  ・

  ・

  ・

  ・

「ふぅ、これでここら一帯の素材はほとんど集まったのかな?」


 昨日の事を思うと、改めて歩けることに感謝しかない。と思いながら、着々とLvやカラトを集めていた。

 お陰でカラトは45600も集まり、Lvは32まで上がっていた。カラトに関しては、集まった材量をどうにかして活用できないか模索して、できた“状態異常を付与するポーション”をレイラさんに売って稼いだりしたからというのがある。

 どうやら、回復系のポーションの作り方しかわかっておらず、しばらくの間は私が特許を独占できるみたい。


「そろそろ街にもどって、店を買うか!」


 そうなのだ。既に、土地を買うだけのカラトをもっているのだ。

 私が買う予定の土地は45500カラトと大分安い値段の場所で、その割には、第1の街にある店よりも遥かに広い。


「んー、土地の4割は店と私の家にして、残りの4割は畑。2割は倉庫って感じかなぁ。」


 実験のため、いろんな配合分量と材量の種類でポーションのようなものを作っていると、【調理】という、【料理】でもなく【調合】でもないスキルが身に付いた。

 レイラさんも知らないと言っていたけど、内容的に料理スキル(できた料理の効果にskillLv分の補正)と調合スキル(できたアイテムにskillLv分の補正)を足したものだと思う。


「ぬぅっ!ふんっ!」


 ん?なんだろう?


「はあッ!……まずったな。ダメージが通らん。こんな朝方でなく昼頃に入るべきだったかも知れぬな。」


 PN:ヘファイトス Lv49

 JOB:鍛冶師


 公開されている情報はこれだった。

 ……すっごい!非戦闘職なのにMOBと戦ってる!わぁ~、かっこいいなぁ……けど、あれは……何だろう?ブラッドウルフじゃあないようだけど…いいや!


「ヘファイトスさん!何かお困りでしょうか?!」

「あ?ああっ!頼む、こいつを倒すのを手伝ってくれ!」


 よし、これで相手からの頼み事って言う体裁が取れたから…


「分かりました。ですが、職業柄ただと言うわけにはいきません。」

「あ?……なるほどな、メインが商人か!これまた面白いっ!分かったぞ、見返りならやるさっ! それを報酬として、俺を生かして街へ連れて帰ってくれ。これは依頼だ!」

「分かりました!すぐに助けます!パーティー申請を承認してください。」


 んふふー、一度はこういう商人らしい行動をしてみたかったんだよね~。特に悪徳商人とかね?

 でも、やっぱり困っている人がいたら助けたほうがいいもんね。

 おっ、承認された。


「それでは、非戦闘職同士、楽しんで戦いましょうね!!」

「はっはっはっ!!最初からそれが狙いだったか小娘よ!…それに、俺は既に楽しんでるがのっ!」


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