クエスト:もたらすは豊穣か厄災か―1
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「やっぱりゲームは時間を忘れさせるね……もう19時だよ~」
目標を打ち立てた後、時間がだいぶたっていることに気がついて急いで現実の方に戻ってきた―――はいいんだけど、拓は帰ってきてるのかな?
「拓~?いないのー?」
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「まだ帰ってきてないのかなぁ?」
さっと車椅子を手繰り寄せて乗り込む。帰りは院長さん直々に送ってくれたから、室内を使いやすいように整理してくれたんだよね。
拓は何でか私の部屋の整理だけはしてくれないし……それ以外はすごく気が利いてて、頼もしいんだけどさー。
部屋からでたのはいいものの、階段はどうすればいいんだろ?今度スロープのようなものを作るって言ってたけど………拓には頭が上がらないよ……ほんとに。
こうなったら、レンに頼み込んでライブ用の機材をかってもらおうかな……って、何を血迷ったことをいってるんだっ?!私?
でもなー……このままじゃ拓に頼る生活になっちゃうし。せめて自分の生活は自分でなんとかできるようにならないと。
いっそのこと施――「すまねぇ!だいぶ遅れたっ!!起きってか?桐紅」
「はいはーい!起きてますよー。早速で悪いけど、一回まで運んで~、降りれないよー」
「……ったよ。今荷物おいてくっからちと待っててくれよ」
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「わりぃな。今日の晩飯は簡単な奴にしてよ」
「ううん!別になんともないよ?作ってくれるだけで助かってるんだし」
「そうか…ところでそっちはどうだった?」
「う、うん?…………特に問題はなかったよ」
「そうか…こっちも同じだな」
「拓は今日から始めるの?」
「そうだな。いろいろと変更もあったし、フレンドといくつか確認したいこともあるしな。」
へ~!拓にフレンドがいたんだ!まぁ、私にもいるくらいだしいて当然か。
あのときなんて最初の頃は私以外のだれともフレンド登録してなかったのにね~。
「なんか失礼なこと考えてねぇか?」
「き、気のせいだよ!」
「へー?」
「と、ところでこれからは一緒に行動するの?それとも個々で好きなことやる?」
「そうだな……とりあえずは個々で好きなことやろう。これでも一応前線にいるからな。」
「いいなぁ…私もいつか前線に行きたいなぁ」
「アカ作り直すか?」
「ううん。それはしなくていいかな。せっかく頑張って育ててるとちゅうなんだし」
「ま、なんかあれば連絡してくれればいいさ。」
「はーい。」
そういえばあのクエストはなんだったんだろう?やること全部終わったらもう一回調べてみようかな?
んーあの地震に関係あるのかなぁ……あるよね絶対。
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「夜だし店を閉めてっと………あっ!開閉札をつくってないや。
えーっと、対象はこの木材で――音声入力:openとclose」
うん、簡易なものだけどこれをドアノブに引っ掛ける。
これでよしっと。
それじゃあ早速レベ上げに行こう!
「といってもなぁ。この辺はレベル70超えがわんさかいるし……一端初期リスポーン地点の“フリーム”に飛んで、近くで狩るのもありかな」
はい!たどり着きました。始まりの街フリームに!
いやぁ、ここに来るのもなんだか久しぶりな気がするなぁ。そういえばまだ訪れたことのない場所って西・北・東方面だよね………こうしてみると行ってないところが多いなぁ。
というかだれもいないんだよね。まだ20時ちょっと過ぎ位だって言うのに……。
実感して思うよね。人が少なくなったんだなぁってさ~。
この誰もいないような感じは……初めてここに来たときと似てるんだよね。
あのときは本当に誰一人としていなかったからなぁ。
店も夜中だから全部閉まってたし………門は0時にしまるからその三十分前には店がすべて閉まることになってるみたい。
「ん~―――これは怪しいな。レイラさんもログインしてるようだし」
何か嫌な予感がする。念のため【絶気&融闇】の隠密コンボを発動させる。
(トリガーはやっぱりあのクエストか?……ぐぬぬ。このLVOはクエストの進行先がわからないから、手探りで一つ一つ調べてくしかないんだよね。)
だからクエストによっては全然遠い場所にクエストを進める鍵があったりする。
まずいかも………音一つしないなんてあり得ないよね?
「っ?!」
いま、ものすごい悪寒が走った。なんだろう、気のせい?いや、違う。たぶん今のは殺気。
だけど……果たしてゲームにそこまで再現できるのかな?
―――ォ―――ォォ―――………
「?!!」
まただ。なんとも言えない殺気。
そしていまの音は………何かの鳴き声―――だと思う。