桐紅のトモダチ
ここからはしばらく現実の話が続きます。それと、ほんの少しだけダークな感じになるので気を付けてくださいっ!
それと累計PVが30万を越えていました!!今日という日までこの作品を見てくれている方達に感謝感激豪雨雹ですっ!
・・・あれ?ここどこだっけ?……あ、そうか――ってことはここは病院?!
はぁ、なんでこんなことになってしまったんだ…。ここで寝てたってことはもちろん受け付けをすでに済ましているだろうし。むぅ、せめてPCの一つや二つ持ってくれば良かった!
悩んでても仕方ないので、とりあえず起き上がり辺りを見回す。まぁ、起き上がると言っても上半身を起こすとまではいかないんだけど。むしろ腹筋が……死ぬっ!
ちなみにこの病院は拓の親戚が開いている伊沢総合病院というとこで、私の暮らす市内では割りと大きい病院なのだ。その歴史も深く、今の伊沢さんで三代目となる。常に最新機器を置いているというわけではないけど対応はとても丁寧なのだ!まぁ、入院費とかはちょっと高いんだけどね。
はぁ、拓は今もバイトしてるのかなぁ?……なにも自分の生活を犠牲にしてまで私の面倒なんて見なくてもいいのにね。……拓依存生活………はっ!?これはまずいぞっ?…このままでは私がヒモになってしまう!(既にヒモである)
んー、やっぱし私も内職とか探した方がいいと思うんだけどな~。
なんなら私が20歳になるまではたぶん、両親が最後にくれたお金で最低限の生活くらいは送れそうだし。
まっ!そんなことを考えても仕方ないし!………もっかい寝よーっと。
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「―――ちゃんっ!――ゆーいちゃんっ!」
なんか、遠くで誰かを呼ぶ声が聴こえてくる。………はっ!
「ユイちゃんっ?!」
「も~、やっと起きたよこのねぼすけめっ!」
「むぅ~、そんなこと言わなくったっていいじゃんかー」
「ば~かっ!もう昼時だよ?………ヒヒヒ、日頃の生活習慣が目に見えるね~?」
ぬぅ、なにも言い返せないのがなんとも…。しかーし!睡眠じたいはしっかりとれてるのでなんの問題もないのであるっ!
けど、まさかユイちゃん――藤田 結衣――がまだここにいたとは想像してなかったなぁ。まさかまた会えるなんて!
なーんてね…………ここにいるのは分かりきってたことなんだけども(笑)。
「なんだかんだ久しぶりだけど元気だった?」
「もっちろんよ!私を誰だと思ってるのかな?これでも女子陸上部の主将を務めてたんだからねっ(キラッ)」
「何度も聞かされてるからわかってるってば!……そうだっ、今日は何のゲームするの?」
「ヒヒヒ……まぁまずは今日の分の課題を終わらせてからの楽しみにしましょうぜ?姉貴」
「ウフフ……そうでございますなぁ、お主もなかなか策士よのぉ」
とある悪代官をオマージュしながら話していると、私たちのいる病室に看護師さんが入ってきた……そう、今から地獄時間が始まるのだ。
「結城 桐紅さん、リハビリのお時間なので準備をしますがよろしいでしょうか?」
「あれ?先生変わったんだ……そっかー。あっ、準備のお手伝いお願いします!」
さっきも言ったように、ここは拓の親戚さんが開いてるから意外と顔見知りの人が多いんだよね。まぁ、ここには私の親や私自身がお世話になっていたって言うのもあるんだけどねー。だからなのか、顔見知りじゃない人の方が珍しかったのだ。
少し気になったので準備中に尋ねてみた。
「あのー、もしかして先生は研修生……だったりします?」
「そうですね。2週間ほど前にここに来ました。研修期間もまもなく終わりますのでしばらくはいなくなりますが、私としてはここに就きたいと思っています」
なるほどね……へ~、遂にここにも新人が来ることになるのかー……新鮮だなぁ。
そんなどうでもいいことを考えながら、する意味があるのかわからない次のことに向けて体を震わせるのであった。
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◇藤田 結衣
昨日からまたゆいちゃん……もとい桐紅がこの部屋に入ることとなった。今この部屋にいるのは私とゆいちゃんだけだ。というのも院長にお願いして、私とゆいちゃんが同じ部屋でいられるように頼み込んだからなんだけど。というわけで、一人にしては少し広かった部屋が今は少し狭くなっている。
そんな私とゆいちゃんが出会ったのは今から一年くらい前のことだった。
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手術が終わってしばらく経ち、経過観察のためにまたこの病院に訪れたときのこと。
病室のベッドでごろごろしてるのも退屈だったので、先生に中庭に出ると伝えて病室を出た。
しばらく院内を歩いていると、病院には似つかわしくない騒がしさが聴こえてきた。
だんだんと私の方に声が近づいてきたので、近くの長椅子に腰かけて道の邪魔にならないようにした。
案の定、患者をのせたストレッチャーが私の前を通りすぎる。一台…そしてもう一台と。
よく見る光景ではあるので特に気にせず、そのまま中庭へと向かった。そのときだ、初めてゆいちゃんにであったのは。
―――原発性悪性心臓腫瘍
いわゆる心臓にできた肉腫が中学二年の三学期に発症した。といってもそんなに状態は進んでなく、切除だけで良かった。ただ、術後に何か合併症が起きないかを監察する必要があったため、しばらく入院を余儀なくされた。
そのためか、当時はひどくこの世界を恨んでいた。なんでこんなにも理不尽なのだろう、と。それと同時に、私がこの世で一番不幸な人だとも思ってた。……本当に恥ずかしい限りなんだけどね。ってか黒歴史なんだよねー。いやー、厨二病恐るべしっ。
そんなアパシーな状態の私は何故か、本当になんでそんなことをしたのかわからないけど、ゆいちゃん――もとい桐紅に話しかけた。
『座るとこならいくらでも空いているけど……座らないの?』と。
何故かおはよう、でもこんにちはでもなく、そんな言葉を掛けたんだよね。
すると、彼女は一言こういった。
『大丈夫』
なにが?とはおもった。けれど、それを口にするのはなぜか躊躇ってしまったため言えなかった。結局、その日はそのまま中庭でぼーっとした後に病室へと戻った。
去り際に彼女は一言
『大丈夫だから』
そう、独りごちていた。