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イベント[第一章]:ユニークな香り②

「ただ、ひとつだけ訂正させてくれ。わたしが一度に従えさせることのできる数は最大で5体だ」

「ん?……それって関係あるの?」

「カカカッ、成る程のぉ!……ユニークボスは複数おるのか」

「えっ!……そんなぁ…でも、村で出現するってことは今回のアップデートで追加されたってことだよね……それが幽鬼狼と同じタイプのユニークボスをその幽鬼狼の真後ろに位置する場所にいるなんて……」

「同じ弱点を持つもの同士を近くに置くとはな……しかもわたしへの対策も複数の集合体という形で行っているからな……さて、どのようにしてやつを従えるか…」


 たしか、黒い球の中に蠢いているものがいるんだよね?で、表面にある黒い球状の何かがその中の霊体たちを覆っている…と。

 んー?でもそれじゃあ、中にはいろんな霊体たちの意思や考え方がいっぱいあるわけだから、まともに戦うことなんてできないよね?……ってことはすべてを統率するのが黒い球状で、本体がその黒い球状?ってこと?

 それだと弱点をさらけ出してるようなものだしなぁ……それに、なんでレイス型のMOBを中に取り込んでおくのか?……ってことにもなるし。


「……本当に…アンデット系のUBMなのかな?……」

「む?それはどういうことかの?」

「んー……自分でもよくわからないんだけど…普通、人をまとめるときって多ければ多いほどその難しさは増すよね?……中にいるレイス型のMOBが、例え単純な怒りのみの怨霊でも人によっては怒る意味に違いはあるわけだし、みんなその感情を同じ理由で持っているわけではないでしょ?

 それでもそういった怨霊を抱え込むってことは、デメリット以上のメリットがあるっていうことだよね?

 ……そう考えたら霊体たちの弱点を守るために、黒色の球状に覆うものがあるんじゃないかなー………って思ったり…思わなかったり?」

「ふむ……つまりはレイス型のMOB複数にプラスして何か別のMOBが混ざっているかもしれないということだな?」

「たぶん…そうすればデメリットは理論上少なくできるはずなので……」


 それでも、何かが引っ掛かるんだよね………なんだろう?何か……見落としてるような気が……


 こんな感覚になるのは久しぶりだなぁ。前回やっていたMMORPGは本当に鬼畜だったし…一回死んだら2度とチャレンジできないボスモンスターとかざらにいたし(笑)

 私たちが最後に戦ったボスは本当に情報が手に入らなかったんだよね(戦う寸前の準備の段階で気づいた)。しかも、毎度ながらワンチャンスしかなかったし……姿は格好いい黒の、まさに龍!って感じだったなぁ。あのときでの最新技術を導入したアップデートだったから、グラフィックもムービーもかなり良かったし……

 あのときはクランメンバーで手分けして、行けるとこすべて駆けずり回って、ヒントになるようなものを探したっけ!……あれからもう2年かぁ。

 ちなみに、その鬼畜ドラゴンとの戦いのヒントが初期装備の鎧にあったなんて普通気付くかなぁ?!

 たしかに初期装備の防具の説明欄が『酷く損傷した防具。もはやこれに守る力は残ってないだろう』って書いてあったけども!

 しかも、隠しシナリオをすべてクリアして会える賢者にその防具を見せて…。

 こんなの古参であればあるほど気づきにくいギミックだよね。かといって新規の人だけじゃあ隠しシナリオに到達することすらできないし…。

 たしか、私がボス専用のエリアの扉に大きく独特な爪痕があることに疑問をもって、アップデートを期に一からやり直したばかりのクランメンバーが初期装備の()と同じ傷であることに気づいたんだよね……懐かしいなぁ。


「カカカ、とりあえずそのUBMはいつ倒すんじゃ?雑談掲示板で討伐隊を募集しているようだがの?………お?討伐する時間が今日の20時30分からだそうだが……なぜじゃ?」

「嘘っ?!…なんだろう相手はアンデット系のはずなのに…夜に討伐するのはおかしいよね?」


 まず、少し落ち着け…………そうだ、メリットだメリット……夜に戦うメリットを考えれば……私が知らないことで、戦ったPLのみが知ることって、相手の戦闘方法だよね?

 でも、支配系の能力なんだよね?


 支配系と言えば幽鬼狼も同じかー…………いや違う…()()()()んだ。


「………ねぇ幽鬼狼?この先の大きな村の生活習慣って知ってる?」

「……あぁ、わかるぞ?」


 やっぱり……そう、従えてるんだ。操ってるとかじゃなくて。


「じゃあ、あの村の住民だったんだね?

 ―――幽鬼狼に魂を貸しているあなたは」

「……………―――そうだよ。だって、彼女は僕を必死になって救ってくれたから。あの村で死ぬと全員が一つの墓に入れられるんだ。そこでは体ごと魂までもが閉じ込められるんだよ。そして、そこの墓にはなにも残らないんだ」


 急に片寄りすぎパーティーのリーダーの姿が思い浮かんだ。鎧はボロボロだけど、決して大きな攻撃を喰らったわけではない鎧。

 むしろ、長い年月を経て変化するような風化や錆びだらけの鎧が。


―――“酸化”―――


「このゲームの世界ではごみの処理や下水道の整備をMOBのスライムに任せてあるんだったよね?」

「カカカ、そういえばそんな設定じゃったな」


 腐敗した体や魂を閉じこめたスライム。……突然変異のUBMってことだね。


「その墓の中にいた何かって最初はどんな色だったの?」

「…わかんない。もう既に黒かったから……ただ…山に建てられた、水が綺麗であることを願って建てられた社が、山崩れで壊れたみたいで、その山崩れであの村の辺りが削れたからあの盆地ができたって言われてるよ……だから、もしかしたら…その御神体があのスライムかもしれない」


 

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