イベント[第一章]:大豆パーティーの悲劇
日曜スペシャルってことでちょい長めです!
□ “大豆パーティー”に起こった悲劇
俺の名前は“大豆”。このパーティーのリーダーにして物理火力要因だ。
とりあえず、新しく追加された部分を探検してみようと言うことで第二の街から直線に進んでいる。どうやら、山岳地帯のようでなかなか進むのが難しいんだなこれが。
んで、今の俺たちは相当焦っている。なぜかって?……それはだな、
『隠しエリア“霊の棲み着く山”を初めて発見されました。見つけたパーティメンバーは“大豆”“醤油”“豆腐”“味噌”“もやし”“おから”です。』
俺たちが何かをやらかしてしまったからだ!
「な、なんだ?! 一帯どうしたってんだ!」
「お、おちつけー!もやしよー。い、いったん冷静になるのだー!」
「これは……ワールドアナウンスだろうか?…これが流れるのはてっきり二つ名を正式に認められたときぐらいだと思ったのだが…」
「やっちまったな……恐らくここが例のイベント会場だったんだろうなぁ……で、どうする大豆?」
困ったな。まず、俺たちがやってしまったことは、ワールドアナウンスによるPNの表示をoffにすることを忘れていたという点だ。
そして、このイベントボスがレイド推奨であるということも問題点の一つだな。なぜなら、俺たちは6人しかおらず、ユニーク持ちが一人もいな………まぁ、いるんだけども。正直言って今回のイベント、俺達はあんまし乗り気じゃないんだよなぁ。
「そうだな……今回のイベントボスには魔王軍側の護衛がいるんだろ?ならそいつと話をして、何とか逃してもらおうぜ。まぁ、倒されたら倒されたで仕方ないが……少なくともこの情報は俺たちのなかだけでとどめておこう。」
「わかった。といっても、まだイベントボスがいるかはわからないんだけどなぁ…」
このまま何事も起こらないのが一番好ましい状況ではあるけどな。
ちなみに、なぜ今回のイベントにあまり乗り気がないかと言われれば、答えは一つ。気にくわなかったからだ。
今回のイベントは、俺たちの視点では12体のレイド型イベントボスを討伐することで、期限は一週間となっている。まぁ、リアルでは四時間程度?だったかな。
んで、それと同時にMAPも前回と比べて遥かに大きくなった。無限といってもいいんじゃないか?まぁ、そんなことはおいておいて、今回のイベントにおける難関は二つある。一つが、イベントボスを見つけること。一つがそいつを倒すこと。
そして、どうやら魔王軍側には先にこいつらを倒したPLが加わっているらしい。
「そうなんだよ。そこが気に食わねぇんだよなぁ」
「だよなぁ?やっぱり大豆もそう思うだろ」
俺たちが気にくわない点。それは、何で一人のPLを目の敵にしているのかということだ。
先にイベントボスを倒した?んなもん、運営の予測と対策、調整が甘かっただけじゃねえの?
仮に運営がしっかりしていたって言うなら、素直にそのPLが凄かった。ゲームがうまかったってことじゃねぇのかな?
もし、そのPLが何らかの不正、バグを使っていたとするなら既に運営が処理しているだろうに。
今回のイベントは一部だけだが、PLの自由意思で動いておらず
運営が動かしているように感じるんだよな。
「なんか……嫌だよねぇ?おから?」
「そうだよね。……勇者も…ちょっと抜けてるし…ね」
「わ、私たちとー、同じ考えの人がー、ある程度いるようですー!」
「じゃけん、そいつらとはいつかコンタクトとってみてぇんの」
「なにか方法がないか、考えておいてくれ味噌」
「がってんでぃ」
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さて、しばらく歩き続けているが、特になにも起こらない。この調子で何事もなければいいんだが……ん?
「なんだ?もう夜になったのか?」
「……いや?まだ16時ちょっとだから明るいはずなのだが…」
ちょっとずつ……それこそ日が落ちていくようにして、辺り一帯が暗くなっていく。
「と、とりあえずー、先に進んでここを抜けましょうー」
「………(それが得策なのだろうか)……わかった」
たしか、この山を越えると、盆地があり、そこには少し大きな村があるそうだ。(とある村人NPCの会話より)
……なるべく早くその村に着きたいところだな。
「おう、なんか進めば進むほど暗くなってないか?大豆よ?」
「そうだ『ウオォォン!!』…な………三の陣を取れ!!恐らくやつの居場所がここだ!」
くそっ!やっぱりこうなったか!………いつのフラグを回収しちまったんだ俺は!
「敵影……0?……いや、そんなはずは」
「ぎゃあああああ!!で、でたあああっ!?」
「お、おい!もやし!大丈夫か!何があった!おからっ、もやしを頼む!」
「わかりました」
一帯どうなってるんだ?……もやしは無傷だが―――状態異常[気絶Ⅳ]?
もやしはこの陣では最後尾に位置していた………支援魔法を使うからな。……もし、なにか見えるとしても、仲間の後ろ姿か、横、後ろ…はないか。
倒れた方向からして、恐らく前を向いていたはず……なら、見えていたのは、仲間の後ろ姿?
そして、気絶。しかもLvが4だろ?……やつの苦手なもんと言えば……そうか!
「気を付けろっ!!敵は恐らくアンデット系だ!魔王軍側のNPCとも考えられる!倒さずに、ここから逃げるぞっ!」
「えっ?!」
誰かが反応した。恐らく仲間の誰かなのだろうと思ったが……。
(ん?声に性別認識阻害がかかっている?……!そんなやつは仲間にいない!ってことは、おそらく……魔王軍側の護衛か!)
「待てっ!俺達はお前と話をしたい!」
「あっ……やばっ…」
やっぱり誰かがこのエリアにいる!……どこにいるかはわからんが……
次の言葉を探し始めたとき、目を焼くような光と、肌を刺すほどの熱を感じた。
「って……え?」
見た。見てしまった。俺達……いや、俺の視界の正面にたつ黒く紅い狼を。
動画で見た、亡くなった筈のイベントボスの一体が、口を開けて大きな火球を飛ばそうとしている姿を。
「………まじかよ。狼の亡霊までもがイベントボスなのか」
やつを見た瞬間に、ここのMAPの名前、もやしが見たもの、暗くなった理由、レイド推奨の意味、このすべてが分かったような気がした。
火球が飛んでくる。既に俺の足はすくみ、動けなかった。そして火球を顔面にもろにくらう。
予想外の光量と熱量に、そしてHPがあるせいで生きながら数十秒焼かれるという感覚に、いくら痛覚設定をoffにしていても、たまらず悲鳴をあげてしまった。
「ぬわあぁぁっ!」
そして、体力がつきるちょっと前に炎がごうごうとしている音のなかで「ごめんなさい」という言葉が聞こえたような気がした




