イベント[第一章]:ごめんなさい!
※範囲についての記載を修正
「えっ?なにこれ?」
魔法を使った瞬間、ここら一帯の空間が歪んだかと思うと、周りの草木や土が蒸発していくように消えていく。
「カカカ……こりゃあ、たまげたのぉ……」
木々や草木が消えた場所を見ると、荒れた―――違う。壊れた地形が露出していた。
「もしかして、大魔導師さんの魔法が……」
「何してるんだ!すぐにその術を止めろ!」
何が原因なのかを考え始めたとき、少年特有のちょっと高い声が響きわたった。緊張感をあおる声音だった。
「え?あっ!はい!!」
……あ、やばっ。咄嗟に言うことを聞いてしまったーー!!!やっちまった!!
「カカカ、ルフスは素直なやつよのぉ。……今回はそれが功をなしたようだがな」
「えっ?どういうこと?」
「カカカッ!お主が幽鬼狼であろう?」
「………印があるか……なるほど、お前さんらが連絡にあった護衛だな?………言いたいことはいろいろあるが、わたしたちはおまえさんらを歓迎しよう。実力はあるようだしな」
まさかの幽鬼狼!?……でも、見た目は完全に人だよ?ちょっと透けてるけど。しかも…見た目と声が12歳くらいの少年!!……だからなのかな?…すっごく違和感を感じるんだよね……。
あっ……言いたいことってもしかしなくてもさっきのことだよね?……謝った方がいいよね?………ごめんなさい。
「謝罪は別にいい。予測して対策できなかったわたしが悪いからな。そもそも来たことに気づけなかったことをわたしは悔いている」
うーん、やっぱりそのしゃべり方と明らかにミスマッチなんだよなぁ。……まぁ、背伸びしてる風に見えるから少しかわいいんだけどね。
「生憎、ストックしている人の体に老人はいなかったからな。
―――さて、お前さんの魔術のせいでここの空間がもとに戻ってしまった……どうやってわたしを守る?」
そうなんだよなぁ……私たちのせいでここの地形を壊してしまったし………ん?もとにもどった?
「ここを壊したのってもしかして大魔導師さんのせいじゃない?」
「ん?あぁ。あの爆発程度ではここの山は削れんぞ?まぁ、砂とか小石なら消せるだろうが……しかし、そこの黒いやつのせいでわたしの勢力の半分以上が消えたぞ?草木の霊を利用して隠れ蓑としておったが、それもなくなったからな」
うわぁー!指差して睨んできてるよぉー!……こ、これって…怒ってる……よね?
「え、えっ、とー…………ほ、本当に申し訳ありませんでしたぁっ!」
「カカカッ!護衛の難易度が意図せずにしてあがったのぉ!これは楽しそうじゃて」
「はぁ。黒いのがすぐに術を止めてくれたはいいものの……あの状態に戻すまで短くても3日はかかるぞ?」
え、えっ?えー!………ど、どうしようっ!!…な、何をすれば?!うっ……ほんとにどうしよう……。
「ルフスよ、わしらは何をするためにここへ来たんだったかのぉ?……最近物忘れが激しくてな、年はとりたくないものだ!カカカ」
何をするため?それは幽鬼狼の護衛でしょ?…………そうか!
「だ、大丈夫ですっ!私たちは幽鬼狼さんの護衛としてここに来たので、命に代えても絶対に守り通します!」
目的は幽鬼狼さんを護衛すること。ウルガさんの言う通り、ちょっと難易度が上がっただけなのだ。
……ん?…な、何で幽鬼狼さんとウルガさんはこっちを見て笑ってるのかな?
「カカカ、お主とはいい酒が飲めそうだのぉ」
「そうだな、やはり成人のストックも必要か」
「と、ところでさ……幽鬼狼って、狼なの?」
「いまや実体はない。狼と呼べるかも怪しいな。まぁ、弱点属性が聖属性と光属性だからアンデット系のMOBなんだろうが」
「カカカッ、そういえば足りないPLを補足するためのMOBとやらはそこのアンデット系のやつらかの?」
「あぁ。そいつらと、地中に潜っているレイスたちだな。…………8体のゾンビ系のMOBと13体のレイス系のMOBだ」
「えっ?少な…………ごめんなさい」
「いや、いい。ところで、何かわたしに要望とか意見はあるか?あれば言ってくれ」
んー、たぶんこの場所にはトッププレイヤーがいっぱい集まると思うんだよね。んで、たぶんそういう人ほどカラトを持ってると思うから、なるべく自然な形でアイテムを売り捌きたいんだよねー。そうじゃないとちょっとインベントリが……ね。
―――……!……っ!――――
「えっ?……何か言った?」
「お?わしはなにもいっとらんぞ?」
「…………?……東北東、3km先……に何かがいる」
「東北東の3km先?」
私の【千里眼】でみえるかな?使ってみよう。
「痛っ!……うぅ…見え………な……たぁ!」
「むっ!どうしたルフス!何が起こっている!」
「だ、大丈夫……です。……たぶん」
はぁ……はぁ………よし、今度からは1km以上離れてたら【千里眼】は使わないでおこう。……たぶん距離が遠すぎると脳に負荷がかかっちゃうんだろうね。おかげで頭が割れるかと思ったよ!
「東北東のだいたい3kmに6人パーティーがいました。たぶん進行方向は私たちのいる場所ですね」
「カカカッ、運が悪いのぉ。MAPがだいぶでかくなったと言うのに、真っ先にこっちに来る者がいるとは!」
「PLすべてを使えば、当てずっぽうでも高い確率で行ける…か。まさか初日から攻めに来るとは思わなかったが……さて、どうする?」
えっとー、ん~……そういえば、さっきの意見と要望ってどこまで叶えられるんだろう?
「そうだな、ここの環境を少しいじる程度といったところか」
なるほどー。……ってことは姿がばれにくい夜の状況にすることもできるのかなぁ?
そしたら、【融闇】も有効になるし……それで奇襲できるなら、もしかしたら撃退できるかも。ウルガさんのキャストタイムを少し稼げるかもしれないし。
「わかった。ではこの山を夜でおおえばいいんだな?………とはいってもそこまで大きなことはできない。―――直径1.7kmの円の範囲内なら可能だ」
「えっ!できるんだ!……じゃあお願いします!」
「カカカ……最近のものの話にはついていけんわい………」
「さて、大魔導師さん!これから護衛の任務です!フルメンバーの1パーティー東北東の3km先から来ています。見た感じ、杖持ちが2人で大盾持ちが一人。軽装の剣持ちが一人に大きな剣持ちが一人、弓と短杖持ちが一人です。……それを私たちで追い払いましょう」
「カカカッ!なかなか難しそうじゃな?作戦はあるかの?」
「はい。まず、第一に幽鬼狼を戦いに出しません。この戦いの目的は情報操作することですからね」
「なるほど。だから“追い払う”なのか」
「カカカ、もっと難しくなったのぉ。二人で敵を生還させるとはの」
―――じゃあ、作戦を今から言うね?
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作戦実行からおよそ3分後、
暗く荒れた墓地に二人の悲鳴が広がる。
面白かったよ!続きが気になるー、と思ってくれたら、評価等をしてくださると幸いです。
(^_^)vこれからも頑張ります!




