イベント[第一章]:襲撃
「………影の勇者がくれたもののことか?」
「……そうだのう。…そうかもしれぬな」
あっれぇ?なんでこんなに暗い雰囲気になってるの?……もしかして、なんか失礼なことでもした!?拓が!
「ご、ごめんなさい!!うちの拓がなにか失礼なことをしてしまったようで!」
「いやなんもしてねぇからな?!俺は!!ってか、いつからおまえの“うちの拓”になったんだよっ?!」
「突っ込むとこそこなのかなぁ?……リアルのネームをルフスがおもいっきし晒しちゃってるんだけどね~」
「フハハッ…うぬらは本当に仲がいいのう!」
おっ、なんかわかんないけど雰囲気が柔らかくなったよー!……良かった良かった。……けど、魔王さんはなんで私たちをここに呼んだの?
「さて…まず、先程の魔力の霧による試練について謝らせてくれ……すまなかった。おそらく、これを言っても伝わらないとは思うのだが、あの試練を作ったのは先代の魔王なのだ」
「なっ、先代?!……それは、時系列的に………?」
「フフ、うぬはわかるか」
……あれ?もしかして私……会話においてかれてる?……えっーと、なんか話題ないかな?……話題……ん~、話題……。そうだっ!
「そういえば!もしかしたら敗北条件がどうたらこうたらってことで、この7人の内の誰かが魔王を殺しに来るかもしれないっ!…………って、アンドレアが」
「っておい!! それはまだ隠しっ「大丈夫だ。その事についての可能性はすでに検討しておる」……そうか…」
「実はその敗北条件について話したいことがあってな?今のうちに意見を擦り合わせておきたくてな」
あっ………さっきから魔王の後ろに何となくいる(ように感じる)ものが、意見の擦り合わせに必要なことってことかなぁ?
試しに、洞観のスキルを使ってみる。………?…バグかなぁ?
Lv65?(■■■)………どういうことなんだろう?……よし、困ったら聞け!だね。
「じゃあさ!その後ろにいるのが話したいことだよね?」
「えっ!?」
「魔王!! こっちに飛べ!」
「……わかった!」
―――シュッ―――
先程まで魔王のいた場所が空間ごと断ち切れていた。
「……………」
相手(一人)無言でこちらを確認した後、いつのまにか目の前に来ていた。
(やばっ……スキル【無属魔法】[詠唱無視]――魔術[有は無の帰還])
「ルフスっ!」
「っ!………あっぶな!…これ確実に殺しに来てるよね?!」
「あたりまえでしょっ!狙いは魔王かと思ったけど、意外と無差別なんだねっ!」
「まさかの不意打ちに余が反応できぬとはな……情けない」
なんとか、攻撃してきたそのエネルギーを霧散させることでダメージを軽減できた。……軽減しても体力の6割近くけずれたんだけど……
「とりあえず、俺が時間稼ぎをするっ!メンバーが来るまであと何分だ!?」
「おそらく10分とないはずだ!うぬらの自由時間はもう終了しているはずだからの!」
「ここで魔法は使っても大丈夫っ?!」
「無理じゃ!うぬは精霊魔法であるがゆえ、この地において精霊とリンクを結ぶのは無理だ!」
「うっ……せめて、弓で援護するよっ?!」
……できること…【絶気】【融闇】無属魔法[詠唱・再詠唱破棄]【冥属魔法】――魔術[集いし冥府の残滓]
「!………」
アンドレアと亜音速での剣を結ぶ相手。隠しコート?みたいなものを着ているため、うまく相手を認識できない。
けど、そいつのいる空間さえ認識できれば……行ける。
「おい、ばっか!ルフス!?俺がいるだろうっ?うわっと!」
「ご、ごめん!けど、今がチャンスだよっ!」
「!?……………―――……」
「それはさせないよっ!【精霊魔法】[精霊付与]――弓術[バインドアロー]!」
レンが放った数十本もの矢を完全に回避していく。ほんの少しでもずれたらアウトな動き……無駄のない動きができるのがすごい。
って、そんなこと考えてる場合じゃないや!
「アンドレアっ?」
「そろそろ交代してくれっ」
「わかった!今そっ「しまった!!魔王!」」
「むっ!……余は剣術はからっきしなのだが!……ぐっ」
力でも技術でも魔王が押し込まれていき、魔王が体勢を崩した。その隙を逃すはずもなく、その直剣で貫かんとし……
前衛と後衛の距離程度しか離れていない。私も拓も間に入ろうと駆け寄ろうとするが…………
近くにいたレンは精霊魔法による結界を張ろうと高速で詠唱を行うが…………
この目まぐるしく変化する状況は実に3秒と経たない出来事である。
「後、一歩ォォオ!」
「お願い、黒狼妃!!」
「【精霊魔法】[神霊の加護]!」
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―――ガキィィン―――
………止まった?
咄嗟にスキル千里眼を使い、一瞬で周りの状況を把握する。魔王には防御魔法が施され、私の刀とアンドレアの剣で相手の剣を止めることに成功していた。
まぁ、お互いの武器を交差するように重ねてハサミの要領で留めているにしかすぎないんだけど……。
けど、この攻撃を止められればそれで私たちの勝ちだった。
―――ダダダダダッ!―――
近くの廊下を複数人が走っている音が聞こえる。
「……………!」
その事を瞬時に察知すると、最初と同じようにいつのまにかこの部屋から消えていた。
「大丈夫かっ!!」
「あ……アックスさん!」
「どうした!この部屋の状況は!」
「魔王が何者かに襲われたんだよ」
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アックスさんに続いて、ミナ、ウルガ、段蔵の順でここに到着した。
「カカカ、なかなかに面白いことをやっていたようじゃのう。是非とも参加したかったわ………何て言う冗談はさておいて、とりあえず魔王様の話を聞くとしよう」
「ふむ………では、此度のイベントにあたっての役割分担について決めようか」
「「「えっ?(魔王さん?)」」」
さっきまで戦っていた内の三人は、予想外な魔王の返答に素頓狂な声を上げた。
シリアス要素がinしました。




