イベント[第一章]:抜け穴の道
昨日は投稿できなくてすいません!!
(>_<)\ この失態はいつの日か、必ず!
(んー、さっきからどうも進んでいるような気がしない……)
ルフスは一人、暗黒の霧の中を走っていた。
(既にイベントは始まっているから、たぶんこれは魔王軍を選択した者特有の演出なんだろうけど……)
何となくウィンドウを出してみた。まぁ、特に気になるところなんてなかったんだけど……ん?
ウィンドウの左上に表示されているゲーム内の時間が止まっていた。MAPはここに来た時点で既に表示されていない。
(もしかして…進んでいないじゃなくて、進まないってこと?時間の概念がないから。)
じゃあ、何をすればいいの?……そもそも魔王さん?なにがしたいの?
『逆に何故霧を晴らそうとしないのかこっちが聞きたいわ!普通の人ならすぐにそうせざるを得ないものなのだが………これは、純魔力の霧。魔族でない者にとって毒となる代物だからの』
あぁ………遂に幻聴まで聞こえてきちゃった……きっと黒狼妃と冥暗狼のスキルを使いすぎて精神に影響を及ぼしちゃったんだろうなぁ……ログアウトした方がいいかな。
『まてまてまてっ!これは幻聴でもなければ、うぬの精神に負担がかかったわけでもないぞ?』
うわぁ………私の心の声に反応しちゃってるよ…もう私…『よしっ!まずは私の声を聞け!とりあえずこの霧を晴らすのだ!』
『特殊クエスト:魔力の霧を晴らせ!
報酬:魔王からの御言葉
受注しますか? yes/no』
「えっ?急にクエストが発生した?!………もしかして幻聴は幻聴じゃなかった!!?」
『だから、最初からそうじゃといっておろうがっ!?うぬは天然かっ、天然なのかっ?』
「えっ?天然って……人間って自然にできたものだっけ?……たしか対義語が人工だから、人って人の手で作られる……あれぇ?人が人の手によってできるのは繁殖に必要なことであって……でも天然はそういった自然な事柄でできたものを指すから―――」
『と・り・あ・え・ず!この霧をなんとかしろぉっ!』
ん?あぁ……話を整理すると、今語りかけてきているクエストを出した張本人が、魔王。んで、この霧をなんとかしないとイベントが始まらないと……
「あれ?この霧って晴らしたらどうなるの?」
『ネタバレになるわっ!阿呆っ!………………余の城の下に着くだけだ………これ以上はなにも言わんぞ?!うぬは■■Lvを持っているとはいえ、プレイヤーの一人なのだ。この世界はうぬらにとって、楽しめればそれでいいからの』
「ん?魔王さんの城?………もしかして、この霧は変な輩を近づかせないための防衛用だったり?」
『む……よ、よくわかったな』
よくあるRPGゲームでは、魔王の城の周りを禍禍しい何かが覆っているのは外からの弱い人間を近づけないためだったり、魔物を強くしたりするため……なんていう裏設定がある。ここもそうではないかと思ったのだ。
「じゃあさ!魔王さんがこの霧を晴らしてください!そっちの方がお互い楽でしょう?」
『そ、それではうぬの試練にはならないからな…。け、決して晴らせないというわけではないからな?!』
「ふーん、そうかー」
まぁ、別に問題ないんだけど………この場所に時間の概念がないのなら…
「ねぇ、魔王さん。ここの場所って時間の概念が存在しないんだよね?」
『たしかにそうだの。こっちでの一日、一年はあっちでの一秒にもならない。零という名の無だ。』
やった……まさか本格的にイベントに入る前にまさかボーナスステージが与えられるとはね。
「じゃあさ、もう一つ質問していい?」
『答えられる範囲であればな』
「もし、この霧を晴らせなかったらどうなるの?」
『………うぬの場合は…わからぬ。…先程も言った通り、この霧は人にとって毒となる。だから、いられたとしても毒によってデスペナを喰らう数分の間だけなのだ。……ちなみに、ここでデスペナになったものは二度として余の下には来れない。元々そういう風にしたからな。』
「そ、なら良かった………少なくとも私がここでデスペナになることはないしね……ここにはアイテムや経験値となるMOBは湧かないんでしょ?」
本来、ここはすぐにでも何とかしないといけない時間制限付きのクエストなんだろうな……おそらく、試練としての意味を持った。
そして、“今の実力のみ”・“失敗=死”のクエストほど、抜け穴がないよう、ギミックはシンプルかつ単純なものだけになる。だからこそ、抜け穴となるアイテムと経験値は存在しないだろう思ったのだ。
『……たしかにそうだの。……今の実力でここを超えよということだ……が、うぬはいったい何をするつもりなのだ?』
ここは、魔力の霧だけが存在する。一応、地面っぽいものに立っているようではあるけど、どうやら物質としての存在は無いみたい。
目標!純魔力の霧を晴らすこと。……おそらく、この霧は魔力そのもので濃すぎるから霧状として目に見えるということなのだろう。原理としては、気体の水分子が凝縮して液体の水分子になりかけている状態に近いかな?たぶん。
んで、さきほどの絶気と融闇を使ったとき、使用したMPがこの霧によって回復できるとわかったでしょ? んーで、マナポーションはたしかMPが満杯じゃあ使えなかったはず………プレイヤー達が誤飲を防ぐためになんとかして~…っていう声が実装された、って言う話だったかな。
ってことは、この霧を晴らす方法はMPをバカみたいに消費するか、周囲の魔力が霧散するような広範囲魔法を放つかだよね……でも私にそんな手はないし、何よりここで死ねない(ログアウトは面白くないからやだ)。魔王さんによってここから強制的に追い出してもらうことは可能かもしれないけど、そんなんじゃあ面白くない!
………それに
(やっぱりここはボーナスステージだね。……だって時間の概念なしにMPが使い放題だし!)
「デスペナを喰らうってことは元の場所とここのシステムは統一されてるってことだよね?だって、そうじゃないとデータの値が違うことになっちゃうし……特にデスペナの影響を受けるカラトとかさ………それに…さっきポーション瓶を使ったとき、ポーション瓶の数はデータから一つしっかりと消えた。できたアイテムは[時間制限:5min]ってなってたけどね。
……じゃあさ、ここで行動して得るデータ上の結果は反映されるっていうことになるよね?」
『!?……うぬはもしや!』
―――そう、例えばスキルレベルとかね?………