閑話:運営人の苦悩
ほんとに時間がなかったので、閑話という形で短めのものにさせていただきました。運営さんの視点です。
私の名前は重松 泰久。8人の運営人を全てまとめる、このLiberi Vivere Onlineを作り上げる運営陣の一人だ。
サービスの開始当初から今でも人気度は最高を誇っており、社会現象にまでなってしまったこともある。
「しっかし、あと一ヶ月を切ったのか?例のイベントまで。」
『そうですね。各AI搭載のMOBは着々と準備を始めています。』
いくら全ての情報を纏めるといへども、私には限界というものがある。そのため、今では当たり前となった人間同様のAIを持つ彼女に一部仕事を任せている。
それは、ゲーム内での準備や仕事である。ちなみに、ゲーム上で彼女は何度か出てきているのだ。
それに……こんなにもおとなしいのは仮面でもある。
「そう言えば、今日はだいぶおとなしいんじゃないのか?レジーナよ。」
『……大変なことが起きました。』
「大変なこと?」
『黒狼妃ノヴィシムルプスが倒されました!』
嘘だろ……
「今すぐに緊急集会を開くぞっ!」
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「それではどうするんですか、一ヶ月後のイベントは?」
「後、二週間で完成させて、早めに開催するしかないよな?」
「だね、なんてブラックな会社なんだここは~。」
「うむ……その方針で行くとして、今回は何が問題だったと思う?」
こうなることを全く予想してなかったわけではないのだ。むしろ予想して、こいつが現れる条件に、非戦闘職であること。LUKが55以上あること。なおかつ、30分以内にウルフ系の敵MOBを50体倒すことが必要になる。
「ちなみに、倒したプレイヤーはどんなやつだったんだ?」
「商人」
「「「は?」」」
「動画はとれてなかったけど、デスカメを見る限り、商人のルフスっていうプレイヤーが廻し蹴りで倒してた。」
おかしい。確かに、商人ならLUKと非戦闘職という条件は満たせるだろう。だが、圧倒的に火力が足りないはずだ……まさか!
「おい、レジーナ!また贔屓とかしたんじゃないか?」
『あれは…若気のいたりってやつですよ。それに今回はしてません。というのも、彼女が商人の職業を選んだのは選択ミスによるものでしたから……』
くそっ…大変困った。第一段大型アップデートで魔王軍と勇者軍を追加。そのどちらかにプレイヤーを分けて、この狼ボスを守る側と攻撃する側で分かれさせるイベントが……
「確か、AIを導入した百体のうちLv1からあそこまで強くなれたのは12体でしたよね?」
そうなのだ。あの十二体は各フィールドを自身の力だけを使って生き残ってきた猛者達なのだ。
実際、Lvは一番低かったが自身の特徴を把握して、力を使いこなしていたのは黒狼妃である。深淵を護り続けし者を除けば一番強かったのではないかと思う。
「はぁ……代えは利かない…か。これからはこんなミスがないように、今週で各狼のドロップ設定と、クエスト内容の見直し。今回はレイドボスだから、ステージ設定と報酬の設定を終わらしてくれ。」
『では、私は各狼の保護とルフスさんの監視を行いますね…まぁ、街中にいるときは見ることができませんが。』
「あぁ、頼む。後はお前らでさっき言った役割を分担して始めてくれ。この仕事が終わり次第、イベントの内容と中身を詰めていくぞ。」
「分かりました。ランキングの導入はどうしますか?」
「変わらん。そのまま各ランキングのトップには報酬を渡せばいい。」
「え~、じゃあさ、今回で追加される二つ名さんはいないのかな?」
「そうだな、その代わり、一定周期で行われる“試練”をそろそろはじめてもいいかもしれんな。」
「それじゃあ、試練ボスにAIを導入しておきますね。」
こうして、運営人は各々の仕事がヒートアップしていき、あっという間に修羅場となっていった。
運営陣が地獄と化す頃、ルフスはまたこのゲームの裏をかこうとしていた……それが裏であるということを知らずに。
自覚がないって言うのが何よりも怖いですね(笑)