第3話 黒髪の少女
ど、どうする…?
使い方のわからん石なんぞ持っていてもそれは、ただの石。不思議でもなんでもない。
「話もイマイチ噛み合わなかったし、もう少し粘って話を聞くんだった」
そういえば、カトレアがさっき出てきた事務所みたいなとこなら、なにかあるのではないか?
(……そうか!ガソリンスタンドの跡地であるここの事務所なら車の扱いについて書いてある本ぐらいあるはずだ。)
車は変な模様の石を使って動くものと仮定するならば、石の使い方も書いてあるはず。
「我ながら冴えてるな。こんな状況なのにな」
俺は希望が見えたことにより、落ち着きを取り戻してた。
よし、早速行動しよう、やるなら早いに越したことはない。
俺は再びガソリンスタンドの方へ歩き始めようとした。
「あの…、すみません。お兄さんはここでなにをしていらっしゃるのですか?」
その声に俺は、事務所の方へ歩き始めようとした足を前方から後方に向ける。
そして、振り向くとそこには黒髪の小柄な少女が立っていた。
「え…っと君はだれ?」
俺は恐る恐る聞いてみると、少女は
「あっ!も、申し訳ございません。私はノエル、ノエル・ライ・ハートと申します!」
慌てながら律儀に名を名乗る少女はノエルというらしい。
第一印象だけだが、この子は気が弱そうだが、話がわからないタイプじゃなさそうだ。これは石の使い方を聞くには、都合がいいかもしれない。
そう思い、俺はノエルに優しく語りかける。
「こちらこそすみません。俺は石上和哉。さっき女の子あってここからの帰る方法を教えてもらったのですが、この石の使い方がよくわからなくて悩んでいたのです」
優しく語りかけたことでノエルは落ち着きを取り戻したようにみえる。
「なるほど。そうだったのですね。では、その石を見せていただけますか?」
「この石なんですが、初めて見るもので俺にはさっぱりなんですよ」
と、カトレアからもらった帰還石をノエルへ渡す。
「これは帰還石ですね。なかなかに手に入らない珍しい石なのですが、その方はよくお譲りしてくれましたね。持っていても、普通は譲ってはくれないほど、貴重なものなんですよ」
そんなに貴重なのか、カトレアも確かに値段が高くて、なかなか取れないと言ってたっけか。
「そうなんですか?なんか俺は、こちら側の人間じゃないって感じですぐ戻るようにって言われたんですよね。それでこの帰還石とやらを貰ったんです」
その発言にノエルの眉が一瞬動いたのを俺は知る由もなかった。
「こちら側って言うのを私は知りませんが、この帰還石で戻れるといいですね。それと、使い方でしたね。この石をもって戻りたい所の景色を思い浮かべてください。そうすると勝手に元の場所に戻してくれますよ」
そう言って、ノエルは石を俺に返してくれた。
返して貰ったその手に違和感があるのに気づいた俺はその手を見ると、帰還石と共にまた別の模様の石が掌にあった。
「これは…どういうことですか?」
不思議に思い、ノエルに聞いてみると、ノエルはにこやかな笑顔で
「これは、転移石のレプリカです。私からのプレゼントですね。ここであったのもなにかの縁でしょうから。効果は一度だけ好きな所へ連れてってくれるんですよ。本物だったら良かったのですが、本物はとても貴重で1つしかないものらしいので、手に入らないんですよね」
なるほど。帰還石の次は転移石のレプリカときたか。
でも一度でも好きな所へいけるとはなかなか便利なものだな。
思わぬ収穫があったが、今度こそ帰れる準備が整った。
「ありがとう、ノエルさん。初めてあった自分にここまでしてもらって、こちらはなにも出来ないのに。ほんとありがとう」
俺は心からのお礼を告げる。
カトレアもノエルも初めて会った俺に優しく接してくれた。
こちら側と呼ばれる世界は困ってる人を助けてくれる人ばかりなのかもしれない。
「それでは、石上さんこれでお別れです。もう迷子にならないように気を付けないとですね。私も戻らないいけないので、これで失礼しますね」
そう言ってノエルは別れを告げ、手を振りながら光に包まれ消えていった。
「今のが、テレポートってやつなのか」
初めてみた光景に少し気分が高まる。
さて、俺も帰還石を使って帰るとするか。
「たしか、元の場所を想像するんだよな」
俺は帰還石を握りしめ、元居たガソリンスタンドを思い浮かべた。
すると、俺の周りに光の玉が現れ始め、包み込むように大きくなった。
眩しくなった視界に一瞬だけ俺は目を瞑った。
そして、光の和らぎと共に目を開けた俺はその光景に目を見開いた。
「嘘…だろ?」
俺の目の前に広がるのは、元居た場所ではない。
俺が今居る場所はマンガやアニメなどに出てきそうな空飛ぶ車が飛び交い、高層ビルが建ち並ぶ超高度科学都市。その中だった。
前回から少し間があいた理由としては、体調を崩していたってことですね(笑)
今だいぶ楽になったので、また少しずつ投稿していこうと思います。