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COTB Clown On The Battlefield.  作者: 時の雨 終
9/10

第九話

ギリギリ投稿という悪い傾向が続いていますね。善処します。

「集合してくれ。作戦を練り直す」

『まあ、それが妥当か』

『何処だ?』

「俺の現在地でいい。プロットをしておいたからナビを起動しろ」

『『『『了解』』』』

「3C」

『はい』

「回収班は到着したか?」

『はい。特に問題なく』

「分かった。どうやらデータの同期がまだのようだったか」


 システムがダウンしたときにデフォルトの設定である手動更新になっていたようなので、設定し直す。


『全員移動中に設定を一日前のものにしておきなさい。全部初期設定になっている筈よ』

『違和感の理由はそれか』


 マーレットが続いて気付き、皆に指示を出した。


『こちら1B。現在380との戦闘を継続中。誰か援護は?』

『こちら5B。今到着するところだ』

『質問だ2C。何人か戦闘しているがそいつらは集合させるのか?』

「いや。作戦会議を終えた後今戦闘中の奴らと入れ替わる形になる」

『了解』

「こちら3B。到着した」

「同じく4B」

『ウェルク』

「マール?」

『終わったわ』

「了解。何分だ?」

『480』

「…6時間?上出来だな」

『今度からは分で聞かないことね』

「そうか」

「こちら5C到着したよ」

「同じく4C」

「早いな」

「私達の特訓の成果をなめるなよ?」

「そんなことをしていたのか」


 更新され続けるログを後ろに流しながら集合状況をチェックする。

 表を見るに、今は


プロセス進行度(4/10)[Updating...]

1B:False 2B:False 3B:True 4B:True 5B:False

1C:False 2C:False 3C:False 4C:True 5C:true


「嘘だろ」

『え?』

「いや、こっちの話だ、関係ない」


 起動したプログラムが何故か機能の少なくデザインもダサいプロトタイプになっていることに気付き、片手で頭を押さえる。

 自動バックアップはどこに消えた?

 バックアップ機能が消えたのなら――つまりインターフェースのストレージやらクラウドストレージやらが何らかの理由でお釈迦になったんなら――、今頃本部はお祭り騒ぎになっている筈だが、01回線はいつも通りだ。

 まだ生死に関わるものでなかっただけマシと考えるべきか。

 知らず下げていた視線を上げてマップを見、状況を確認する。

 ……マップとの連動も消えているな。予想の範疇だが。

 ああクソ。




『バック!』

「了解」


 5Bからの連絡が入り、銃を撃つ手を止めて後方にスライドする。


『脅威[2287]が接近。PAI(予測可能回避不可能)』

「PAIか、すごいな」

『これからは全てそうだと、思い、ますよ!』

「いや、彼にとっては違うんだろうな」


 ルーク・クライスには。

 銃弾の雨もここまで来るともはや空気の方が少なくなってくる。

 局所的な超猛烈スコールのおかげで目の前にいる人の声すらインターフェース越しにしか話せない。

 もしインターフェースの口の開き方を検知して自動補完し読み上げるシステムがなければ―あるいは故障していたら―、非常に面倒くさいハンドサインで会話を交わすことになる。

 それだけは御免被る。

 5Bの展開するシールドの裏でしゃがみながらマガジンを変え―そこでジャングルスタイルのマガジン全てがカラであることに気づき背中のバックパックから総取り換えをして―リロードを完了する。

 コッキングレバーを途中まで引いて薬室に初弾が装填されていることを確認し、元に戻した。

 ふと、銃を握る手がやけに滑ることに気付く。セーフティを掛けて銃を背中に回し、手を開いた。

 汗で湿っていた。何時ついたか分からない擦過傷も幾つか。

 疲れてはいない。手以外に汗はないことからそれが言える。

 緊張しているのか?とどこか他人事のように推測する。いや、精神的にはもう慣れて―または麻痺して―いる筈だ。現にこうして「冷静」な思考をしている。

 だが体は嘘をついていない。のか?

 自分の体のことさえ分からないとは随分馬鹿になったものだ。


「2B」

『何か?』

「ブラックボックスオープン。3s」

『はい?』

「3秒だよ」

『いや、でも…ええ?』


 攻撃が余りにも激しすぎるため流石に全弾回避は不可能だ。至近弾判定どころか被弾判定が出る。

 なら攻撃を止めなければならない。

 ブラックボックスとは、文字通り敵の周囲に黒の障壁を展開してセンサ機器の類を無効化する。

 簡易的なものを使っている為10秒ほどしか持たないが、自分にとっては3秒で十分だ。

 展開しているだけでも大変な労力だということは知っているのだから。


『開いたわよ!』

「ありがとう」


 感謝の言葉をその場に置き去りにするように飛び出す。

 目標は379だ。

 ブラックボックス内に入れば当然センサ機器は働いてしまうためそこまでは立ち入れない。

 2秒で接近し、残りの1秒で壁を背に出来る位置へ移動を完了する。

 3秒が経過した。一筋の光をも漏らさない闇が砕け散る。

 間近で見る敵の姿は、見上げることも相まってこちらを威圧する。

 巨大なものを恐れるのは全人類共通だ。

 さながらゾウとアリのような。

 銃口がこちらを射止めんと動くのを後目に、足を浮かせた。

 ウォールラン。に近い何かだと自分は思っている。

 由来であるパルクールのウォールランは横から入るのだが、最初のジャンプ力が高ければ垂直バージョンでも出来るのではないかという仮説から生まれたものだ。

 勿論開発者はトラスール(パルクールをする人の名称)だ。

 そして今回の場合、最初のジャンプが大きかったお陰で―――、

 ――379の頭上を飛び越えることが出来る。

 最初この技を見たときはバケモノのやる技だと思っていたが、「まだマシな方」と言われた時の方がよっぽど驚いた。

 空中で宙返りをしながら銃のセーフティを外して発砲。

 これだけ無防備な背中を晒しているのだから、まず当たる。

 急激な移動についてこれなかった敵は無様にも殆どの銃弾が壁にしていたビルに着弾。盛大にガラスを撒き散らした。

 条件さえ揃えばこの光景も奇麗に映るそうだが、今回も拝めなかったようだ。その内条件を調べておくか?

 そんなことを考えているうちに、敵のビル根元付近に集中した攻撃は結果としてビルの倒壊を招き、そしてそれは379及びその範囲内にいる自分に降りかかってきた。


『警告:周囲の安全を確保してください』

                                A I

 ―――回避しようなどとは思わないでくれよ。そのアタマのプライオリティパスは空中で無防備な自分を優先して排除しろと命令を下しているはずだ。

 だが惜しい。ここは昔の二車線道路だ。

 反対側には簡単に届く。

 横の着地の衝撃を内蔵スプリングで強引に逃がし、下へ飛ぶ。

 ついてこれるか?

 何発か攻撃が来るだろうと予測していたが警告が全く無かったことに驚きながらPKロールを打って再び衝撃を分散させた。

 垂直落下の場合この技は本来不適切だが、上手く衝撃をいなせれば次のモーションに移りやすいという利点がある。

 ことビルが倒れてきていて一刻を争う今とかは。

 流れるように起き上がり、そのまま脇目も振らずに猛ダッシュ。

 背中を撫でる風が死神の鎌から繰り出される斬撃のようで身震いがする。


「5B!!」

『了解。ボックス2撃ちます』


 打てば響くと言わんばかりの反応に思わず口が緩む。

 瓦礫が降ってくる範囲から脱出し、一息ついた。

 マグをチェンジし、サイトを除きながらバックステップで後退する。よし、瓦礫で赤外線センサーでもこちらを探知出来ない筈だ。

 逆に言えば射線が無いということだが。

 まあいい。次だ、次。




「全員集合したか?」

「1、2、3………OK」


 視界にあるウインドウの表示が全てTrueになったのを見たウェルクは、一応声を掛けて全員がいることを確認した。


「よし。1Bと5Bの為にも手短に行こう。最終目標はデイリーの達成。現在の進行率は何と24%。余りに怠けすぎた。いつも通りの時間に終わらせるには高いDMGダメージを連続して叩き出す必要がある。それには勿論LMG(軽機関銃)とエネルギーランチャーの併用が望ましい。4C」

「分かってる。ただもう一人が絶賛交戦中だが?」


 エルが壁に背中を預けながら、人差し指を立てて左右に振る。

 それにつられてウェルクの頭も揺れたが、直ぐに止まった。


「2班のペアはビルを上手くカバーしてくれ。3班のペアがシールドを使う。残りは全部、囮だ」

「具体的には?」

「基本はツーマンセルで適当なタイミングでチェンジしながら戦う。待機組のメモリを使って俺とマールでヤツに仕掛けるからこっちをより大きな脅威と認識する筈だ」

「技術班の連中と1週間缶詰で作ったの。後で奢りなさいよ」

「おいおい、俺だって開発に関わったんだぞ」


 マーレットがウェルクを恨みのこもった目で睨みつけ、彼はわざとらしくおどけた。


「うーむ、熟練…」

「何が?」

「何でも、だよ」

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