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COTB Clown On The Battlefield.  作者: 時の雨 終
7/10

第七話

『こちら3B、これよりE-379との戦闘を開始する』

 「了解。このまま引き離しを行う。いいか、敵に背を向けずにゆっくりと後退し続けろ。5C、2B!E-379へ攻撃を集中だ」

 『『了解』』



 先程から脅威の接近を報告する音声をミュートするほどの攻撃が続いている。

 もはや回避は不可能の状況であり、先程から盾で銃弾を防ぎつつ盾では抑えきれないヤツを迎撃している。

 耳もとっくにイカレた。

 視界も閉じつつある。

 二本目の注射を太ももにぶっ刺して気付けをし、足を動かす。

 上の連中はこの注射は体を壊すと言って嫌うが、使わなければやってけないのが本音だ。

 ………そういえば、と俺は先程の奇妙な出来事をふいに思い出した。

 今恐らくフロントに治療されているであろう彼のことだ。


 彼は今俺が受けている弾幕の二倍を難なく避けて―しかも一人で―接近し、効果的なダメージを与え続けていた。

 しかも鼻歌を歌いながら。

 誰もツッコミを入れる奴はいなかったが、少なくとも今回が初めてだ。

 話題にならないってことは皆は彼に嬉しいことが―それも「彼が」鼻歌を歌うような―ことがあったとでも解釈したのだろう。

 だが俺はそうではなかった。

 何があった?あの隊長に。

 頭の中で増殖を繰り返す疑問符を何とかしようと重い頭をフル回転させながら複合弾幕を捌いていく。

 もうレーザーは当たり前のように何本も出ていた。


『隊長の様子はどうだ?』

『命の危険はありません。目が覚めるには時間がかかりますが、気付けはできます』

『寝かせておいてやれ。回収要請は、出すか?』

『あなたに任せます』


 つまり、どちらでも構わないくらいには平気なのか。


『そうか……分かった。そのまま置いといてくれ。回収は無しだ。……後エコーを取ってくれ』

『了解です』


 盾から手だけを出してグレネードを放り、そこに雨の密度を下げさせてロールを入れ、自分を狙う死をそらす。


「なあ、一つ質問だ。………いや、いい」


 誰もその答えを知らないと悟り、ボリュームを下げる。

 そこで通知が届き、視界左中央のログを見る。


「パターン22か。少し亜種であるようだが」


 戦闘を開始してから30分くらいが経過すると敵の行動パターンが割れてくる。

 ビッグデータと照合されはじき出された対処法を見た。


「あーーー、リーン、Dフラッシュ禁止?んでローンスター…知らん、カラカサ…はいはい、ユキグニ…出来んわ、ドロップ…書く必要ねえだろ、バドワイザー…いいぞ、ダッシュ・オブ・ジャンプ…ほお」


 左のリストの中から使用可能な物にチェックを入れ、右のリストに移す。

 すると画面が一瞬固まり、次いで直ぐに滑らかさを取り戻す。

 今のは通信に処理を大幅に割いたために起こるラグだ。


「戦闘が第2フェーズに移行した。パターンは22」

『了解。データを参照した。お手柄だぞ』

『何、新しいの?』

『完全な新種じゃない。22の亜種だな』

『あ、そう』

『露骨に態度を変えるな。だからああなるんだぞ』

『うるさいわね。別にどうだっていいじゃない』

「遠距離で戦うお前に亜種だろうがパターン違いだろうが余り大差ないのだろうな」

『大ありよ。貴方たちが重視しているのは攻撃がどこに来るとかのTFD(脅威予測データ)でしょうけど、私はBPD(行動予測データ)なの』

『矛盾しているぞ。興味があったりなかったり。一体どっちだ?』

『結論から言うと、所謂亜種と言われるものは無印とは「実質何の違いもない」のよ。こっから先は絶対じゃないけど、敵のパターンとかは本拠地から送られてくる新しい戦闘アルゴリズムで、それに含まれるコードの記述ミスだったり構文ミスだったりが本体や22の動作を阻害するものがあることがわかると、その修正が来る。簡単に言えばパッチ。知ってる?無印と亜種での対処法が変わることって滅っっっっっっ多にないの』

『分かりやすい熱弁をどうも。おかげで眠くなったよ』


 良く喋る。流石はアイリス軍で群をぬいた(別に洒落てはいない)天才エンジニア。

 多分彼女だけが唯一Sクラスをドン引きさせるコードを組めると噂だしな。

 そしてデバッグを知らない。


『2C。引き離しが完了した』

『仕事が早いな』

『どうも。本当に暇だったもので』

『そうか、よし、スクランブラを起動して敵の射程から脱出しろ』

『援護は無しで構わない』

『了解した、「チャレンジャー」』


 さて、そろそろ意識を戻さないと狩られそうになる時間帯がやってくる。


『画面にノイズ!敵スクランブラ!無差別と推定!効果範囲不明!』

『俺の地点は問題無いな。3Bと俺の位置からして…OK、結果をアップロードする』


 自分の画面にもノイズが走り、視界を塞がれる。解除の速度が遅れるだけ、自分が死ぬ可能性が際限なく上昇していくのだ。


『通信状況が悪化。接続を維持出来ません。ネットワークから切断されました。再接続する為には…』


 さあ来たぞ。


「カウントスリーで行く。……フーッ。3、2、カウント、0」

そろそろ第一回大改稿をしようかと考えております。

追記(2017/10/03/2200):改稿を始めました。第八話の投稿が今月中にできるかは不明です。まだ予定が不鮮明ですので、追ってお知らせいたします。

追記(2017/10/08/2004)改稿を終了しました。


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