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3話・アバターの基本動作

 チュートリアルを始めると狭い部屋に出た。

 視界の上部にはヒットポイントを表す赤いライン、スタミナを表す黄色いライン、マジックポイントを表す青いライン。

 それらの横にヘルプの文字が出ていた。

 その3文字を意識してみると目の前にヘルプの内容が広がった。

 とりあえず全部読んでみて移動の仕方や魔法の使い方、武器の振り方と投げ方、アビリティーの使用法、その他もろもろヘルプの内容全てを覚えた。

 そして最初に気が付いたのは足元に犬がいることだった、装備で取った猟犬だ。

「その子、名前どうするんです?」

「考えてないな、案ある奴いるか?」

「ヤークトフントはどうだ」

「1号、お前ドイツ語にすればなんでも格好いいと思ってないか。猟犬のなまえが猟犬(ヤークトフント)ってなんだよ」

「コロウタとかどうかしら可愛いと思わない?」

「いいですねそれ、可愛いです。コロちゃん」

「じゃあそれで」

「異議あり!ヤークトフントがいいと思う!」

『却下』

 犬に名前を付けれるので2号の案の通りコロウタと名付ける。

改めて部屋を見渡してみると中央に看板が一本立っていた。

 看板に近づいて読んでみる。


≪習いたい事を下から選び押してください≫

1 アバターの基本動作

2 戦闘の基本

3 一対一での戦闘

4 軽戦士との戦闘

5 重戦士との戦闘

6 魔法使いとの戦闘

7 多対多での戦闘

8 生産について

9 このゲームの目的について

10チュートリアルを終える


 ヘルプにもあった内容だがとりあえず1を押して選んでみる。

『習いたいことはアバターの基本動作でよろしいですか? YES/NO』

 目の前の看板にそう映ったのでYESを選択すると俺がいる場所が変わった。狭い部屋から森の中に作られたとおぼしきアスレチックコースにだ。

 起伏あり、池あり、山あり、谷あり、的とおぼしきものがいたる所にあり。

 そのアスレチックコースの入り口にある看板にはこうあった。


≪このアスレチックでアバターを使ってみてください≫

1 スタートからゴールまでのタイムを計測する 000.00

2 全ての的へ攻撃を命中させるまでのタイムを計測する 000.00

3 全ての的に攻撃を命中させてからゴールするまでのタイムを計測する 000.00

4 チュートリアルの選択に戻る


「習うより慣れろという感じだな」

「これ個別指導(チュートリアル)じゃないわね、指導役がいないのだから」

「知っていますこういうの、言葉の乱れって言うんですよね」

起伏に富み、的も30個はある曲がりくねった200mほどの道

動きづらいので背中のバックパックを地面に下ろし、コロウタにここで待っているように指示を出す。

「走ってみるか、βテストでとられた最速動画では25.86秒で走りぬいてるな」

 偶然にも俺と同じ《蜘蛛の躰》メインのようなのでなぞることはできるだろう。

 1を押すしてみると看板に5と大きく数字が出て1秒ごとに4に3に、ピッピという音とともに減っていくカウントダウンか。

 蜘蛛の精を呼び出し《獣精術》を敏捷にすべて入れて発動。マジックポイントが減少していくが微々たるもので3分間は獣精術を使い続けれるだろう。

「頑張って記録を更新してみなさい」

「お兄ちゃんファイト!」

 ピーンとひときわ高く音が鳴った瞬間に走る、最初の障害物が迫る。チュートリアル最速動画と同じ動作で障害物の上に両手を叩きつけて跳び箱をとぶ体操選手のように高く飛び前転。

 空中にいる間に10m先にある高い台の上部に糸を飛ばし、次の障害物の上に足を乗せて跳躍するとともに糸を縮めて体を引っ張る。

 同じように進めて、ゴールの前10mほどの直線に着地。

《脚高蜘蛛》を使用。これまでの《ダッシュ》の10倍のスタミナ消費で3倍の速さを発揮し10mを0.4秒で駆け抜けることができた。


《今回の記録 28.98秒》


「3秒ほど遅いか……まあ、俺の方はスキルを動画とは別のところに振っているしその差もあるだろう」

「負け惜しみだな、3号」

「なんか用かネーミングセンス0号」

「表に出ろ!」

「表ってどこだよ?」

 無視して次は、全ての的へ攻撃を命中させるまでのタイムを計測する。

 最速動画での記録は22.41秒。遠距離から的を狙うこともできるため、スタートからゴールまでよりもタイムは縮めることができるようだ。

 看板から選択肢を選び、カウントダウンを聞いてから走る。

 まずは手近にあった的を走りざまに切りつけ、障害物に先ほどと同じく両手を叩きつけて跳躍。空中にいる間に左右にある2つの的へ両手のナイフを構える。

 両手を振ると投擲のラインが赤くみえ、そのラインが的の中央と重なった瞬間にナイフを投擲。狙いたがわず的の中央へとナイフは直撃。

 同時にナイフの柄へ付けておいた蜘蛛の糸を引きつけてナイフを戻す。

 コースを半分過ぎたところにあるいくつもの的が集中する場所にきた。両手のナイフを投擲、命中と同時に糸を鞭のように振るっていくつもの的を切りつけていく。

「スタイリッシュね」

「ゲームでないとこういうのはできませんよね」

「……格好いいことは認める」

 中盤の難関を越えるとあとは難しいところはない。

 最後の的を30mほど離れたところから肩に担いでいたスリングから投げ放った石で打ち抜いて終わった。


《今回の記録 23.68秒》


「1秒ほど遅いが悪くないな」

「というか……普通の人たちからするとあり得ませんよね。一度だけ動画を見ただけでトレースができるなんて」

「私たち人工知能は一度学んだことをまず間違えないからできる芸当ね」

「逆から言うと学んでないことは見当違いの結論を出したりするがな」

 しかしまあ2度の試行で次の全ての的に攻撃を命中させてからゴールするまでのタイムはおおよそ導き出せている。たぶん32.09秒でクリアできる。

「て、あれ?」

「どうした3号」

「最速動画が32.13秒だ」

「あら記録更新ね」

「すごいですお兄ちゃん! 」

「いや、まだやっていないから」

 とは言え今からやるのだが、3回目になるスタートのカウントダウンを聞きながら計算に間違いがないかを3000回確認するがどうにも間違いは無さそうだ。

 3度目のスタート音とともに走り出し、計算通りにアバターを動かす。

 走り、跳びながら全ての的に攻撃を命中させてゴールに滑り込む。


《今回の記録 32.09秒》


 事前の計算通り、32.09秒でゴールができた。

 32.13秒の記録を出すのにどれだけの試行をしたかは知らないが、それを一発で更新できたことに罪悪感のようなものを感じる。

 まあ仕方がない、考えたものを考えた通りに実行する能力が俺たち人工知能は人間をはるかに超えているのだ。

「お兄ちゃんやりましたね!」

「いや別に、予測通りになっただけだぞ」

「腹立つ」

「1号、あなたキャラが変わっているわよ?」


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