緊張
なんとか非常階段を下まで
降りることができた。
ほっと一息をついたとき
男子生徒の声が聞こえてきた。
とっさに物陰に隠れた。
ここは、まだ男子寮の敷地内だから
見つかるわけにはいかない。
耳をすますと会話が聞こえてきた。
「生徒会長は誰が有力候補だと思う?」
「そうだな••••まあ、梅原先輩じゃないか?」
もうすぐこの学校では生徒会選挙が
あるのか、
でも私には関係がないここの生徒では
ないのだから
愛花は、男子生徒の声を聞きながらそう思った。
男子生徒の声が聞こえなくなったところで
そっと物陰から覗くと人の気配は
感じなくなった。
愛花は物陰からでて塀へと向かった。
壊れた塀の前まで辿り着き
塀を見上げる。
壊れているといってもそこそこ高さは
あるが登れないということはないだろう。
よじ登ろうと手をかけたとき、
「そこのキミ、何やってるの」
----------------------------------------------------
遥と新巻は受付にいた。
受付にはいつも寮長がいる。
昨日見回りにきた人だ。
「外出?何時くらいに帰ってくるんだ?」
寮長が2人にきく。
「夕方には帰るよ。」
遥がそういい、2人は急いで
外出届けを書き上げる。
「じゃあ!」
新巻がそういい寮を出ようとしたとき
「あ、ちょっと待て、神田に
伝えといて欲しいことあるんだ。」
「神田?隼のこと?」
神田 隼は遥たちと同じ高校2年生。
高2の中でのリーダー的存在。
「ああ。さっき大事な話を
してたんだけど、用事ができたって
いきなり出ていったんだ。
携帯ここに忘れちゃってるから
俺が預かってるってこと伝えといてもらえるか?」
「わかったよ。」
遥が言った。
新巻の方を見ると険しい顔をしていた。
2人は受付をすませて外に出た。
「どうした?」
遥が歩きながら新巻に問う。
「早く、神田を見つけた方が
いいかもしれない。」
新巻が小走りに走り出し出しながら言った。
「え?まさか、神田が愛花に気づいた?」
遥もつられて走りだす。
「ありえると思う。」
「まさか、ありえないでしょ。
神田は受付で寮長と話してたんだぞ?
愛花がいることには気づくはずなくね?」
遥が新巻に言う。
「そっそうだよね!!
まあ、とりあえず塀の所まで行こうよ」
「確かに念のため行った方がいいか。」
遥がそう言うと
2人は走って愛花のもとへ向かった。