気をつけて
さあ、どうしたものか
遥と新巻は受付で外出届けを出すだけなので
寮を出るのは簡単なのだが
問題は愛花だ。
誰かに見つかってはまずい
ここは男子寮なので女子は厳禁なのだ。
「愛花ちゃんをどこから寮の外へ逃がそうか」
新巻が腕組みしながら言った。
「ここに来たときの方法しかないと思う
裏口から出て壊れてる塀を飛び越えるしかないと思う。」
遥がそう言って愛花に同意を求めると
愛花は大きく頷いた。
「そうだね、それしかないかもね。
愛花ちゃんはそれで大丈夫?」
「はい!」
愛花は元気よく頷いた。
「言っとくけど愛花。1人で行くん
だからな。」
「ええ、1人?ハルは?」
愛花が遥に驚いたように言う。
「俺たちは受付に言って外出届け提出しないといけないし、愛花とは行けないよ。」
「••••••うん••••わかった•••••。」
愛花は目を伏せながら頷いた。
遥は愛花の頭をなだめるように撫でた。
「寮の前にコンビニがあるからそこで落ち合おう。塀を飛び越えたら右だからな。」
遥がそう言うと愛花は頷いた。
話し合いが終わると
3人は外に出る準備を足早にすませた。
「よし!では、行こう!」
新巻がそう声をかけると
遥は慎重に、部屋のドアを開けた。
部屋の外の廊下にはまだ誰もいない
今しかない
3人は部屋を出た。
「気をつけて。」
遥がすれ違いざまに愛花に言うと
愛花は黙って頷き非常階段の方へ向かった。
愛花はなんとか非常階段まで辿り着いた。
見つかったら私はどうなってしまうのだろう
遥に迷惑がかかるのはもちろんのこと
かくまってくれた新巻さんにも迷惑が
かかる
でも、今はここから出ることだけを
考えないと
愛花はそう思い後ろを振り返った
2人は見えなくなっていた。
大丈夫、そういい聞かせて
扉を開けた。