帰宅
寮まで走った2人は
なんとか時間内に辿りついた。
壊れた門の塀を飛び越え裏口から
建物に入った。
遥はちらっと腕時計を確認する。
なんとか間に合ったようだ。
薄暗い階段を上がって自分の部屋の
前まで辿りついた。
「ここが俺の部屋なんだけど•••。
俺以外にもルームメイトがいるんだ。
まあ、愛花のことも理解してくれる
と思う。」
それを聞いた愛花が遥に問う。
「その人はハルにとって大切な友達?」
「え?ああ、そうだな。」
「そっか、それならよかった。」
愛花がニコっと笑って言った。
「え、なんでそんなこと聞ーーー」
そう尋ねようとした時
階段を駆け上る音が聞こえた。
遥は愛花の腕をさっと掴み、
物音を立てないように静かにドアを開け
部屋の中へ入った。
「遅かったじゃん、どこ行ってたのさ。」
2人が部屋に入ると部屋の向こうから
同部屋の新巻 健がやってきた。
「全然帰ってこないから
なんかあったのかと••••って•••••。」
新巻は見知らぬ少女そこに立っているのを
見て黙り込んだ。
「••••••えええええ??!?だっ誰??!」
新巻が大きな叫び声をあげた。
「こら!
こんな時間に騒いでる部屋は
どこだ!」
部屋の外から寮長の怒鳴り声がした。
「やっべ。まずい。
健ちゃん後で事情は話すから。
とりあえず愛花を隠さないと。」
「ええ?え?どうゆうこと?え?」
新巻は驚きを隠せないで慌てふためく。
「愛花とりあえず、
そこのクローゼットの中に隠れて。」
愛花は頷くと遥が指差したクローゼットの
扉を開けた。
「わあ••••全然整理整頓されてないね。」
「ああもう、今度掃除するから、
ほら!早く!」
愛花がクローゼットの中に入ると
扉を遥が閉めた。
その時、寮長がドアをノックした。
「おい、新巻、白井入るぞ。」
そう言うとドアを開けた。
「おいおい、もう消灯の時間だぞ。」
「そうっすよね!もう、寝ますよ!」
遥が言った。
「ん?新巻どうした?
今日はいつになく大人しいな。」
「なんかいろんなことが一瞬にして
おこって••••。」
「ん?どうした?」
寮長が心配そうに尋ねる。
「けっ健ちゃん、少し調子悪いみたいで!
ね?ね?」
「おいおい、大丈夫か?
調子悪いなら早く寝ろよ。じゃあな。」
寮長がそう言うと
部屋をでようとして向き直り
ドアノブに手をかけた。
助かったと思った
その時•••
「っくしゅん」
愛花がくしゃみをした。
遥は血の気がひいた。
「ん?」
寮長がこちらを振り返る。
終わった••••そう遥は悟った
「大丈夫か?本当に風邪ひいてるんだな。」
そうだった今、新巻は調子が悪い設定
なのだ。
「早く寝ろよ。新巻お前すごい
かわいいくしゃみするんだな。」
寮長はそう言うと部屋を去っていった。
「あー助かった••••。」
「ハル?もう出ていい?」
「ああ、いいよ。」
愛花が申し訳そうにそっと
クローゼットの扉を開け出てきた。
「あのなあ、もうちょっと我慢しろよな。」
「えへへ、ごめん。ホコリっぽくって。」
「あ、あのー。」
新巻がつぶやいた。
「この子は誰なの?」