十家
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愛花が遥たちと再会する前
梅原先輩、椎名先輩、そして愛花の3人は屋上で話をしていた。
「梅原先輩。
先ほど、私が周りに比べてどうだとか、大事な候補だとか言ってましたが
それって、どうゆうことなんですか?
その他にも聞きたいことがありすぎて何が何だか・・・。」
愛花は混乱していたが緊張はすっかりほぐれていた。
これも何かの術なのかと考えるほどだった。
「僕は立場上、キミにすべてを教えてあげることができないんだ。
まあ、でも本当に家から何も聞かされてないみたいだから
みんなと同じくらいの情報は僕が教えてあげるよ。不利だからね。」
「・・・みんなと?」
愛花が不思議そうに首をかしげる。
「本当に何も知らないんだね・・・。
八懸家は何を考えているんだろうね・・・。
キミをこの学園に送り込んだというのに。」
「あ、あの。違うんです。
私、ハルを追いかけて勝手に家を出てきちゃったんです。」
「・・・ハル?」
椎名が愛花に問いかける。
「はい。遥と言いまして。私のはとこなんです。」
「キミのはとこということは、その子も予知能力者なのかい?」
梅原の問いかけに愛花は横に首をふった。
「そうか、普通の人なんだね。
まあ、どの子供にも一族の能力が宿るわけではないしね。」
「え?あ、あの。ハルは・・・。」
「話を戻そうか。
みんなとはどうゆうことか気になっていたね?」
愛花が口を挟もうとしたとき
梅原は気にもとめず話始めたので愛花はそこで黙り込んだ。
ここは梅原の話を聞く方が得策だと考えたからだ。
「はい。みんなということは、
私以外にも、能力者がこの学園にいるってことですよね。」
梅原はそれを聞いて頷き、屋上のフェンスによりかかった。
「そうだよ。
超能力者は誰とは僕の口からは言えないけどこの学園に確実いる。
日本の能力者一族は名門と呼ばれる家系が十家ほどある。
キミはその中の1つ八懸家だよね。」
「十家。初めて聞きました。
その十家全員がこの学園にはいるんですか?」
椎名がその言葉を聞き頷いた。
「そうね。そろってしまったっという感じかしら。」
「まさか。私が来たから・・・。
でも!そろったからって何か問題があるんですか?」
梅原と椎名は顔を見合わせる。
「うーん・・・。そうだね・・・。
八懸家はね、今まで十家の会合や出会うこと避けてきたはずなんだ。
しかし、今キミがここにいるというのに
八懸家は無理やりにでも連れ帰るということはしない。
キミの一族も何かを考えているんだろうね。心境の変化か何かを。」
「私、どうすればいいんでしょうか。」
愛花は梅原と椎名を交互に見る。
「それは僕らが決めることではないよ。
ただ、八懸家をよく思っていない十家はいるということは覚えておいた方がいい。
昔、キミたちの先祖が決めたんだけど
十家の中でも階級があって、上から十、九、八・・・っといった具合に。
下の数字を持つものは上の数字を持つ者をよく思っていない。
なんらかのことを仕掛けてくるだろうね。」
「言い方悪いですけど、
誰かが私を陥れようとしてるってことですか?」
梅原は小さく微笑んだ。
「そんなことして何の意味があるんですか。」
「意味はあるよ。」
梅原がきっぱりと愛花に言った。
愛花は梅原の目をおびえるように見つめる。
「意味のないことなんてこの世にはないから。
十家は今確実に何かが変わろうとしている。
誰かが誰かに取って代わろうとしている。
その証拠に今この学園に十家の正統後継者がそろっているのだから。
まあ、例外もいるけどね。
とりあえず、こんなこと長い歴史の中でもそうそうないことだ。」
「怖いです。
私・・・ずっと島にいて八懸家以外の能力者とかよくわからないんです。」
椎名がおびえる愛花の元へ駆け寄った。
「ここにいれば嫌でもなれる。
誰か信頼できる味方を早く作ることをお勧めするわ。」
愛花がパッと顔をあげ椎名の腕をつかんだ。
「あッつ、あの!
こんなこと知ってるってことは先輩たち異能者なんですよね?
ここまで話してくれたということは
私たち仲間・・・ですよね?」
椎名はその言葉を聞いて一瞬悲しそうな顔をしたが
すぐに無表情に切り替わった。
そっと愛花の腕を振り払った。
「ごめんね。僕らは立場上そうゆうわけにはいかないんだ。」
梅原の声がそっと屋上に冷たく響いた。
「・・・そう・・・なんですか・・・。」
「キミがしっかりしていれば、正しい道を歩めると思うよ。
八懸家の力って本来そうゆうものなのだろう?」
「・・・そうなんですかね。」
すっかり自信をなくした愛花に梅原が問いかけた。
「1つ聞きたいんだけど、キミはフラッシュバックで突然未来が見えるタイプ?
それとも、好きな時に予知できるタイプ?」
「・・・どっちもですね。
フラッシュバックで見える時もありますけど、見たい時に予知できます。」
その言葉を聞いて梅原は少し口角が上がった。
「そうか、キミは能力から愛されているんだね。」
愛花は首をかしげる。
「ああ、気にしないで。
僕はキミに少し期待しているよ。僕を探し当てたしね。
キミはこの十家の争いの中でもいい線いけるんじゃないかな。」
梅原はそういうと愛花の前へ立った。
やはり目の前で見ると存在感のある男だ。
目鼻はっきりとした端正な顔立ちである。
しかし、それだけではない何かを感じさせる。
「期待しているよ。」
そういって梅原は愛花に握手をもとめた。
愛花はためらいがちに梅原の手をつかんだ。
「教えてくださってありがとうございました。
わからないことだらけですが、いろいろ私なりに探ってみます。」
梅原は頷いた。
「6時間目の授業はちゃんと出るんだぞ。」
そう言い残して梅原と椎名は屋上を後にした。
愛花はその場に座り込んで考え込んだ。
私は本当に何も知らなかった。
十家の存在すら知らなかった。
私は大切にされていたんだろうな。
とりあえずハルに相談しなきゃ。
愛花はしばらくその場でうずくまっていた。
しばらくして5時間目の授業が終わりそうになったので教室へと向かった。
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教室の近くの廊下を歩いていると誰かがこちらに手を振っているのが見えた。
よく見ると新巻であった。
愛花も手を振り返す。
目をよく凝らすと遥の姿もあった。
愛花は走り出した。