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未来少女と記憶の少年  作者: 馬渕 祐
19/20

挑発



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本鈴がなると2年1組の生徒達は

バタバタと席に座った。

教室は依然として騒がしい。


遥と新巻も教室に戻ってきていた。

結局2人共、梅原先輩に会うことは

出来なかった。

明日もう一度探しに行く約束をした。



遥が席に着くと前の席の

愛花と同室で友達でもある御崎恵那が

周囲を気にして不安そうにしていた。



「御崎?どうかしたの?」


「え、うん、えっと••••。」


歯切れの悪い御崎。

いつもの御崎らしくない。


御崎は遠くの席を見つめている。

遥もその目線の先を見つめた。


「あれ?あそこの席って•••••。」


愛花の席だ。

遥はそう思った瞬間嫌な予感がした。


「愛花どうしたんだろう。」


御崎は心配そうに呟いた。


「昼ご飯一緒に食べてるんじゃないの?」


「うん。いつもはね。

でも今日用事があるって言ってたから。」


御崎はそう言うと

メールしてみると言って携帯を取り出した。



その時、担任の小山 涼先生が教室に入ってきた。担当は数学だ。

20代なので生徒とも距離が近く、

どの生徒にも優しく親身で学校でも評判の先生だ。


先生が教室に入ってくると

教室は一気に静かになった。


「授業始めるぞ〜神田ー!号令!」


小山先生が学級委員で号令係でもある

神田に号令をかけるように促す。


しかし、神田の声がしない。


みんな一斉に神田の席を見る。


そこに神田の姿はない。


「ん?神田はどこに行ったんだ?

それに、八懸もいないな?

あの2人どこ行ったんだ?」


教室は一気に騒がしくなる。


「神田がいないなんて初めてだな。」


「2人でいなくなるなんてなんか怪しい。」


「だよね。2人で一緒にいるんじゃない?」


遥の耳にたくさんの言葉が聞こえてくる。




愛花と神田が一緒にいる?

そんなわけないだろ••••。

2人に接点なんて•••••いや、ある。

でも俺があの時神田の記憶は消してるし•••。

•••••••愛花、何してんだよ。




遥が1人で考え込み

クラス中が騒がしくなっている時

教室の扉が突然開いた。


生徒達はいきなり開いた扉の方を見つめる。


神田が教室に入ってきた。

愛花の姿はない。

神田1人だ。



なんだ、愛花と神田は一緒にいたんじゃなかったのか。

じゃあ、愛花はどこにいるんだ。





「おう。神田。遅刻だぞ?」


小山先生が声をかける。

クラスの生徒達は静まり返って

神田の言葉を待つ。


「すみません。」


「どうしたんだ。お前らしくないな。

そうだ。八懸知らないか?」


神田は八懸と聞くと

いきなりハッとして小山先生に近づいた。

そして、耳元で何かをそっと言った。


その時、小山先生は急に強張った顔つきになった。



「わかった。神田は席につけ。

おーし。授業始めるぞー。」


神田は先生に一礼して

自分の席に向かった。



みんな、顔を見合わせている。

同じことを思っているに違いない。


神田は愛花がどこにいるか知っている。

そして、2人の間に何かあったと。



先生は、みんなが混乱している中

御構い無しで授業を始めた。


最初こそ、みんな気になって騒がしかったが

教室は徐々に静かになり、

みんな授業を集中して聞き始めた。



しかし、遥はずっと考え込んでいた。

何がどうなっているんだ。



その時、ポケットに入れていた

携帯のバイブがなった。


先生にバレないように

携帯の画面を見ると新巻からだった。



『愛花ちゃんどうしたんだろうね。

心配だね。

神田と何かあると考えていいんじゃない?』


遥は隠れて返信する。


『やっぱ、そう思うよな。』


『うん。まあな。

俺が神田に探りいれとくよ。』


『健ちゃん、ありがとう。』


遥は無意識にため息をついた。






50分間の授業が終わっても

愛花が教室に帰ってくることはなかった。


授業が終わると新巻と天利が

神田の所へ駆け寄る。



きっと愛花のことを聞いているのだろうが

教室が騒がしくて会話がよく聞こえない。


遥はいてもたってもいられなくなり、

神田の席へ向かった。



「なあ〜愛花ちゃんと何かあるの?」


新巻が神田にニヤニヤしながら言う。


「別に、何もないって!」


神田が、笑いながら言っていた。



神田が自らの席に近づいてくる遥に気づいた。

遥と神田の目があった。


「珍しいね、こうゆう話の時に

白井が混ざってくるの。」


神田は意味深な笑みを浮かべて言う。

新巻が遥の方を見て、

少し嫌そうな顔をした。


「いや、別に••••。」


「白井も愛花のこと気になるの?」


「え?」


神田が笑いながら言うと新巻が目を丸くした。


「神田が女子のこと下の名前で呼んだの

初めて聞いた!」


新巻が身を乗り出して言う。

天利は驚きすぎて黙っている。



遥はなんだか嫌な気分になった。

これは挑発されている。

俺は何かを試されている。



「••••八懸さんが気になるとか

そうゆうことじゃないよ。

ただ、3人が楽しそうに話してたから

来ただけ。」



「ああ、なるほど!」


神田が言う。

信じていない目だ。



「お前いつから、そんな仲良くなったんだよ!」


天利が羨ましそうに言う。神田の肩を掴む。


「いや、いや、仲良くなってないよ!

•••まだね!」


天利と神田は楽しそうに話している。


遥はその場を静かに離れ

廊下へ出た。


新巻はその様子を見て後を追う。


「白井〜待てって。」


新巻が遥の肩を掴んで立ち止まるように促す。


「何?」


「イライラすんなって。

まあ、俺も神田にはビックリしたけどさ!」


遥は一度深呼吸をして

新巻の方を向いた。


「ごめん、ちょっとイラッとしてた。

健ちゃんにあたってもどうしようもないのに。」



「いいって、俺ら親友じゃん?

それよりさ、ヒヤヒヤしたよー。」


新巻が笑う。


「え、何が?」


「俺が情報収集しようと思ってたのに

白井は神田の所来ちゃうし、

愛花は俺のはとこだとか言い出すんじゃないかって思ってさ!」


「ああ、それは前に健ちゃんが

親戚だって言わない方がいいって言ってたから••••あれ、そういえば前から聞こうと思ってたんだけど何で言わない方がいいんだ?」


遥が新巻にそう聞いた時、

新巻は廊下の遠くを見つめて手を振っていた。





その視線の先には

こちらに向かってくる愛花の姿があった。







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