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未来少女と記憶の少年  作者: 馬渕 祐
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愛花と神田はその場に立ち尽くす。



それにしても、この梅原という男は

なんと存在感のあることだろう。

存在感と共に無言の威圧感も感じる。



梅原とショートボブの少女は

階段の途中で降りるのを止め立ち止まった。

愛花と神田は遥か高みから

見下ろされている気分になった。



愛花はその場の威圧で言葉を発することが

できない。喉がカラカラになって声が出ない。

神田も生唾をごくんと吞み込む。



「君のことは知っているよ。

今は神田と名乗っているんだよね?」


梅原は全てを見透かすかのような目をしながら流暢に語った。


今は。梅原のその言葉が気になったが声が出ない。愛花は首は動かさずに

そっと目だけ神田の方を見る。


神田は小さく頷いた。


「君、名前は何と言うんだい?」


梅原が愛花に問いかける。


「••••っわっ、わ、私は••••。」


声が出ない。


その様子を見て不憫に感じたからなのか

ショートボブの少女が愛花のもとへ

駆け寄って肩に手をおいた。


「大丈夫。落ち着いて。」


間近で見ればみるほど美人だ。

愛花はぼっーと見とれてしまう。

すると不思議と落ち着いてきた。


「あ、ありがとうございます。」


お礼を言われると少女はふっと微笑んだ。




「もう一度聞くよ。君の名前は?」




「はい。私の名前は•••••。」




愛花は自分の名前を言おうとした時

神田が愛花の口を自らの手でふさいだ。



「•••よく知りもしない人に軽々しく

名前を教えるものではない。」


神田がつぶやく。


愛花は驚き目を丸くして神田を見つめる。


「そうだね。その通り。」


梅原は自重した笑みを浮かべた。

愛花にはそれがひどく怖く感じた。

きっと神田も。


「すみません。もうすぐ授業始まりますし、

教室遠いですし、俺たち帰りますね。

行こうっ。」


神田がそう言って一礼した。

愛花の手首を掴んで連れて行こうとする。


「神田。」


梅原がそう言う。

その言葉は空間を切り裂くように

冷たい響きがした。


「賢明な判断だね。

でもその女子生徒は、ここに残って貰おう。

聞きたいことがあるんだ。

君だけ教室におかえり。」


その言葉を聞くないなや

ショートボブの少女が愛花をひっぱり

神田から引き離す。


「椎名先輩ですよね。そいつ返してもらえませんか。」


椎名先輩と呼ばれたショートボブの少女は

首を横に振った。



その時。予鈴がなった。

もう少しで授業が始まる。



「神田。ほら予鈴がなった。君だけ帰りなさい。授業の先生には梅原といると伝えとけば

大丈夫だから。」



「俺もこの場に残って梅原先輩と

話をさせてもらうことは出来ないんですか。」


神田が梅原の言葉にくってかかる。

威勢のいいことを言っているが

足は小さく震えている。


「それは、難しいお願いだね。

僕はこの子に聞きたいことがあるし、

興味があってね。名前も知りたいし。」


梅原は愛花を見て言った。

愛花はこの場の状況がうまくのみこめず

その場で立ちすくんでいる。


「それにね、神田くん。」


そう前置きすると梅原は語り始めた。


「この女子生徒が、もう普通の子では

ないことは僕も、そこにいる鈴も、

感づいているんだよ。

君はこれ以上わがまま言って僕を困らせないで、このまま素直に1人で教室に戻るのが

身のためだと思うよ?

君は僕に嫌われない方が良いと思うなあ。」



神田がその言葉を聞いてハッとする。



「え、それって、あなたが、」



「ここまで。さあ、帰って。」



椎名が神田の言葉を制止するように言った。


「神田くん。君はこの女子生徒の仲間と

いうわけではないんだろう?

じゃあ、どうすることが正しいのか

わかるよね?

君は頭が良いんだから。」




「••••わかりました。」



神田はちらっと愛花を見ると

そのまま何も言わずその場を去っていった。



梅原はその様子を見て小さく笑った。


「さあ、これで心置きなく話せるね。

僕はね、神田くんが苦手なんだ。」


梅原がそう言いながら階段を降りる。

そして愛花の目の前で立ち止まった。


「改めてよろしく。梅原です。

この子は僕の、まあなんというか助手の

椎名鈴。

大丈夫?まだ混乱してるかな?

でも、そろそろ君の名前を教えてくれる?」


愛花は頷く。



「はい。八懸愛花と言います。」


愛花がそう言うと梅原と椎名は

目を丸くした。


「それは、本名?君、もしかして

本家は島に住んでたりするのかな?」


「はい。そうですけど••••?」


愛花は首をかしげる。

2人とも何故こんなに驚いているのか。


「だから、神田くんは

名前を軽々しく言うなと言っていたのね。」



「そうみたいだね。

八懸家は何を考えているんだろうね。

なるほど、予知能力か。

それで僕らの居場所がわかったのか。」


「え、あの、え、なんで

予知のこと•••どうして。」


愛花は混乱のあまり梅原と椎名を

交互に見つめる。


「何も聞いてないんだね?

わかった少しだけなら教えてあげよう。

これでは君は周りと比べてハンデが

ありすぎる。

君は大事な候補だからね?」


「周りと比べて?ハンデ?候補?」


梅原が愛花の頭にまるで落ち着いてというかのように手を置いた。


「まあ、ひとまず屋上へ行こう。

話はそれから。」


愛花は頷いた。


ここには私の知らないことがたくさん

ありすぎる。

とりあえずこの人たちから

話を聞こう。




本鈴のチャイムがなった。

授業が始まる中、愛花は梅原と椎名と共に

屋上へ向かった。



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