見つかる
『どうして私の予知は外れてしまったのか。』
愛花は一人屋上へ向かう途中ずっとそのことを考えていた。
私の予知は八懸家が代々受け継いできた力。
ほぼ外すことは考えられない。
長い間この能力と共に歩んできたけれど外したことは無いと言っていい。
考え込む愛花の横を数々の生徒がすれ違う。
「あの。すみません。」
すれ違いざまに愛花が女子生徒に声をかけた。
「屋上ってこっちでいいんですよね?」
さすがに転校してきたばかりなので学校の敷地内を把握できていない。
「うん。そうだよ。」
女子生徒は青いストライプのついたリボンをしていた。
上級生であろう女子生徒はにこっと笑っていった。
愛想のいい生徒だ。
「ありがとうございます。」
愛花がお礼を言って歩き出そうとすると
女子生徒が愛花の肩をつかんだ。
「屋上に何かようなの?鍵かかって入れないと思うけど。」
「えっ。そうなんですか。」
愛花は少し考え込む。
これは参った。どうゆうことなのだろう。
まさか、また予知を外した?
それより今はこの場を収めるのが先かな。
「大丈夫です。屋上の扉の前で人と待ち合わせしていますから。」
「そっか。屋上まではこのまま一本道だから迷わないと思うよ。」
「はい。ありがとうございました。」
愛花がお礼を言うと女子生徒はじゃあねっと言って
その場をさっていった。
また歩き始まる。
また予知を外したかもしれない。
私が予知した未来は梅原先輩とショートボブの生徒が屋上にいる姿。
でも、屋上には鍵がかかってて入れない。
どうして・・・。
愛花はちらっと自分の腕時計を見た。
まだ少し時間に余裕はある。
しかし、お昼ご飯も食べていない。午後の授業がつらい。
こんなにこの調べごとに時間がかかると思わなかった。
私の予知が外れるから。
「どうなってるの私の守護霊。」
愛花は思わずつぶやく。
守護霊は言葉を発しない。愛花に未来を見せてくれるだけ。
「なんで私の予知外れたんだろ。」
人通りが全くないので思わずつぶやく。
もう一度考えてみよう。
私が昼休み前に予知したのは、ハルと健ちゃんと梅原先輩、そしてショートボブの美人さんの4人が特進クラスの中で話しているところが見えた。
そして私も昼休みに特進クラスに向かった。
でも4人の姿はなかった。
私はこの土地に慣れていない。だから失敗することもあるかもしれない。
でも、こんな大胆に間違った未来を予知することはない。
だとしたら・・・
誰かが私が特進クラスに向かっていることを察知して避けた?
誰が?なんのために?
考えられるのは、ハルが私を避けている可能性。
でも、ハルは私の存在を察知できるほど能力者として優れているとは・・・
私は今ハルが何を考えているかしりたい。
「そうだ!ハル!ハルは今どこにいるのか見れば何かわかるかも。」
そう思いついた時、前をぐっと見つめると
遠くに屋上へつながる階段が見えた。
あの階段を登れば屋上へ行けそう。
その前にハルのことを予知しよう。
そう考えていた時、
愛花の肩に手が置かれた。
「きゃああああ。」
あまりに突然だったので驚きのあまり、その場に座り込む。
「ご、ごめん。そんな驚かすつもりはなかったんだけど。」
聞き覚えのある声がして顔を上げると、
そこにいたのは神田だった。
「あっ、えっと・・・。」
「ああ、まだ俺のこと覚えてない?同じクラスの・・・。」
「わかります。神田くん・・・ですよね?」
「そうそう。」
神田はそういうと愛花に手を差し伸べた。
愛花はそれにつかまり立ち上がる。
「あの、神田くん・・・なぜここに?」
ここは一本道だ。
神田が用事のついでにこの道を通ったとは考えにくい。
目と鼻の先に屋上があるのに・・。
「八懸さん。それはこっちのセリフだよ。」
「え?」
「八懸さん、この先の二人に用があるんでしょ?」
愛花は目を丸くする。
「えっ、えっと・・・。」
「俺は目がいいんだ。」
愛花は神田と目があった。
まるですべてをのぞかれているような気分になった。
「八懸さんが、ここまで来てるからにはこの先の二人には何かあるって
ことだよね?」
「まって、神田くん・・・。言っている意味がさっぱり・・・。」
神田はそれを聞くと意地悪そうに笑った。
愛花の肩に手を置く。
「キミが予知能力者だということはばれているんだよ。」
その瞬間愛花の血の気が引いた。
なぜこの人はそのことを知っているのか。
愛花はあとずさりをする。
コワイ。キケンダ。
「まって、八懸さんを脅すつもりじゃないんだ。
なんて説明すればいいんだろう・・・。」
愛花が振り切って走り出そうとしたとき
背後から階段を下る人の足音がした。
愛花と神田は音のする方をみた。
「ダメだなあ。神田くん。キミそれはれっきとした脅しじゃないかな?」
そこには探していた梅原先輩とショートボブの美人の姿があった。