探しに
愛花が転校してきて数日たった
クラスもいつも通りになっていた。
はたから見ても愛花は楽しそうに
毎日生活しているように見える。
遥はまだ愛花と話していない。
初めて話すふりをして話しかければ
いいのだが、何故だか意地をはってしまって話しかけることができない。
楽しそうに友達と話す愛花の声が
聞こえた。
愛花の方を見ると愛花もこちらを見た。
2人で数秒見つめあう
愛花が何かいいたそうな顔している。
「愛花、どうしたの?」
愛花の様子を見て恵那が話しかけた。
「なんでもないよ。」
愛花はそう言って前を向いた。
なんだか気分が悪いな。
遥はふうと溜息をついた。
「白井~~。」
新巻がダルそうに遥の肩に手を回した。
「なんだよ。」
「なに、機嫌悪いの?愛花ちゃん関係?」
遥は黙り込む。
「白井、全く愛花ちゃんと話してないもんな。」
新巻は楽しそうにケラケラ笑う。
「なんか数日話さないだけで、
前はどうやって話していたのか
わからなくなった。」
「なんだそれ。
やっぱお前ら付き合ってんの?」
新巻はそう言うと遥の前の空いてる席に
腰掛けた。
「ここ誰の席だっけ?」
「御崎だけど。あと、付き合ってない。」
御崎恵那は愛花と同室の女子生徒だ。
遥の言葉を聞いて新巻は
少し不愉快そうな顔をした。
「ああ。御崎ね。」
「え、健ちゃん御崎と仲悪かったっけ?」
「いや、別に。」
新巻は、そう言うとニコッと笑った。
「ふーん。あ、そういえばさ。」
遥は話を変えた。
新巻がこれ以上聞くなという笑い方をしたからである。
高校1年から新巻とは同室で
なんとなくここからは聞かないでという
新巻からのサインが遥にはわかるように
なっていた。
誰にだった言いたくないことはある。
「もうすぐ生徒会選挙だな。」
最近の学校での話題といったら
生徒会選挙だ。
遥は全く興味がないがとっさに言ってしまった。
「へー以外。白井、生徒会選挙とか
興味あったんだ。」
「まっまあね。」
「やっぱ有力候補は梅原先輩だよなー。」
その時、遥の頭に鷹村の言葉が響いた。
『梅原という男に会いなさい。』
愛花も毎日楽しそうだし、
ここ最近何事もなかったから
忘れていた。
鷹村のあの言葉の真意とはなんだったのか。
とりあえず会わなくてはならない。
「おーい。」
ぼっーと考え込んでいる遥の目の前で
新巻が手を振る。
「どうした白井?」
「あ、ごめん。考え事してた。
あのさ、梅原先輩って何組?」
「え?まさか会う気?」
遥は頷く。
「梅原先輩って確か少数精鋭の特進クラス
じゃなかったっけ?」
「へー頭いいんだ。」
「頭いいなんてレベルじゃないよ。
あの岳先輩と、3年生のツートップ
なんだから。」
新巻は何故か自分のことかのように
自信たっぷりで言っている。
「岳先輩?」
「そう。すげえ頭いんだよ。」
「そうなんだ。まあ、とりあえず
今日の昼休みその、特進クラスに行ってくるよ。」
遥がそう言うと新巻は怪訝そうな顔をした。
「白井が、梅原先輩に会うの?
なんのために?」
「俺もわかんない。」
「え?」
「会うっていうか、どんな人なのか
興味あるんだ。」
あの鷹村さんが会えと言った男だ。
どんな人なのか興味が湧いてきた。
「ふーん。なんだかよくわかんないけど
俺もついていこ!」
新巻が楽しそうにぐっと伸びをした。
その様子を愛花はチラチラ見ていた。
そして昼休みになった。
遥と新巻は授業が終わったのと同時に
立ち上がる。
「行こうぜ。」
2人は急いで廊下に出た。
愛花がその様子をじっと見つめる。
「愛花、食堂行こうよ!」
恵那をはじめとするクラスの女子数人が
愛花に声をかけた。
「ごめん、今日ちょっと先生に
呼ばれてて••••。先行ってて!」
「大丈夫だよ、待ってるよ?」
クラスの女子が言う。
「ありがとう。でも遅くなりそうだから。
待っててもらうの悪いよ。」
愛花がそう言うと恵那が
先に行ってるからねっと言って食堂へ向かっていった。
恵那につられてクラスの女子も
食堂へ向かった。
愛花は急いで廊下へと出た。
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「裕志。何か来る。」
少女が呟いた。
「あれ、鈴は他の人の異能の力は
感知できないんじゃなかった?」
裕志と呼ばれてた少年が言う。
「うん。でも、こんな強い力が
私たちに向かってくるとわかったら
さすがの私でも気づきます。」
それを聞いて少年は笑った。
「面白くなってきたね、
さあ、かくれんぼの始まりだ。」