朝食
月曜日の朝。
遥は目を覚ました。
この数日間で周囲の状況はかなり変わったように思える。
一番大きいことは、愛花が来たことだった。
しかも、この学校に入って寮で暮らすのだとか。
いまだに納得はしていない。
ここで愛花が暮らすことが正しいとはどうも思えない。
しかし、鷹村に頼まれたのであっては仕方ない。
それに宗家の意向でもあるらしい。
いくら破門された身の上だったとしても宗家に逆らうことは許されない。
しばらく愛花を見守りつつ、
鷹村に言われた通り。『梅原』に会う。
この学校で梅原と言われたら誰だってあの人を思い浮かべるであろう。
しかし、この学校は何かをたくらんでいるんだ。
鷹村が言っていた「何かを決めようとしている」
っていったいなんなのだろう。
「なーに難しい顔してんの?」
遥が横を見ると新巻がベットから少し顔出して
こちらをみていた。
「え、いや、なんでもないよ。」
「すげえ深刻な顔してたぞ。お前。」
新巻はそういうとベットから出て大きく上に伸びをした。
遥もそれにつられて伸びをする。
「まあ、愛花ちゃんのこととか不思議な力のこととか
大変なことたくさんあると思うけど
いつでも俺に相談しろろよ?」
「ありがとう。健ちゃん。」
遥が新巻にそういうと新巻は嬉しそうに笑った。
「よし、朝飯食いに食堂行くか。」
2人は急いで身支度をする。
あまり最後の方に行くと食堂が混んで席がなくなってしまうからだ。
ワイシャツの袖に腕を通す。
もうすっかり暖かい気温になった。
「白井、準備できた?」
「うん。」
2人は部屋を出ると走って食堂へ向かった。
食堂は男女一緒だ。
朝、昼は日替わりで全員同じメニューだが、夜ご飯だけは
自分で選ぶことができる。
長い並木道を通り抜け2人が食堂についたころには
もうすでに多くの生徒がいた。
「今日はまた人多いな。」
「そうだね。」
遥と新巻が朝ごはんをとり座る席を探していると
「おーい!白井!健ちゃん!」
向こうの方から背の高い生徒が大声で叫びながら
手を振っていた。
「誰だ?」
遥は目が悪くて誰だかわからない。
「あ、神田たちだ。」
新巻がさらっと答える。
遥はあまりにも新巻が平然と答えたので笑いながら言った。
「健ちゃんって本当に目がいいよね。」
「えっ?」
新巻が遥の方をみる。
「え、健ちゃんって遠くの物とかすごく見えるし
目がいいなって・・・。」
「ああ!そうそう!これね!俺のアイデンティティー。」
新巻はウインクしながら言った。
「健ちゃん、ウインクへたくそすぎ。」
「何言ってんの。俺以上にウインクうまいやつとか
この世に存在しないから・・・。」
遥はあきれたように笑った。
「ほら、神田たちのところ行こう。」
「安定のスルーなんだね・・・。」
遥と新巻は神田たちのところへ向かった。
「おはよー。」
遥と新巻は神田たちに言うと。
みんな口ぐちにおはよーっとあいさつをした。
「この辺、席けっこう空いてるから一緒に食べようぜ。」
神田がそういうと遥と新巻はお礼を言って
椅子に腰かけた。
「いただきまーす。」
生徒はご飯をおいしそうに口へ運ぶ。
「そういえば、土曜迷惑かけて悪かったな。」
神田が言った。
申し訳なさそうに言ったので遥に罪悪感がこみ上げた。
「いやいや、こちらこそ。・・・ごめん。」
「なんで白井が謝るんだよ。」
神田はそういって笑った。
遥もつられて苦笑いをした。
「そういえばさー今日俺らのクラスに転校生くるって。しかも女子。」
そう会話を切り出したのは神田の隣に座っていた
同じクラスの天利だ。
見た目はヤンキーみたいな感じの男だが
仲間思いでなかなか頭も切れる。やればできるタイプ。
「職員室で俺の友達がその子みたらしくってさー
髪長くってーあと特徴はー
まあよくわかんないけど、可愛いって。」
愛花のことだ。
遥がそう思ったとき、新巻が少し笑った。
「健ちゃん何笑ってんだよ。」
「いやーその、楽しみだなって思ってさ。」
新巻がちらっと遥を見る。
遥はそっぽを向いた。
「まあ、俺も興味あるよ。」
神田がぼそっとつぶやく。
「え、神田が??」
新巻がそういうとみんないっせいに神田を見る。
「こんな時期に編入とかよっぽどの理由があるんだろうなって。
なんかあるんだろうなって。」
神田はそういってお味噌汁をおいしそうにすすった。
神田は頭もいいし勘も鋭い。
気を付けないとと遥は感じた。
そのあと、朝食を食べ終わりみんなで
2年1組へと向かった。