階段の下には
愛花はコンビニにたどり着いていた。
遥と新巻が来るのを今か今かと待っていた。
周囲を見回すと自分が生まれ育った島とは
全然違うのだということを思い知らせる。
背の高い建物がたくさん建ち並んでいる。
しかし、違うのは建物だけではない
自分が異能の力を持っているから感じる。
あの学校には自分や遥以外の異能者がいる。
島に住んでいた頃も愛花は
異能者の気配を感じとっていた。
しかし、あの学校には島よりももっと
多くの気配を感じる。
愛花は空を見上げた。
さっきまでの天気の良さの面影はなく
どんよりした雲が浮かんでいた。
「愛花ちゃーん!」
愛花が声のした方向を見ると
遥と新巻が向かってきていた。
新巻がこちらに手をふっている。
愛花もそれに応えるように振り返した。
「まあ、いろいろあったけど、
とりあえず脱出できてよかったよね!」
新巻がにかっと笑った。
「うん。ハルも新巻さんもありがとう。」
「健ちゃんでいいよ!
それよりお腹すいてない?飯行こう!」
「ご飯だったらあそこがいいな。」
遥が言う。
「だな!こっから歩いてすぐだし、
そうしよう!」
3人で歩きだした。
「そのお店って、よく行く所なんですか?」
愛花が2人に問う。
「そうだねーなんかマスターと仲良くてさ!
安いし、美味いんだけど、
ガラガラだから居心地いんだよ」
新巻の言葉に遥は頷く。
「そうなんですか!楽しみだなあ。」
2、3分歩いて店までたどり着いた。
愛花は、確かに人がこなさそうだなと思った。
外観はお世辞にもいいとは言えない。
地下に行く階段がある。
どうやら店は地下らしい。
雰囲気もなんだか暗い感じだし、
これは 常連以外入りにくいだろう。
「着いたよ、階段気をつけてね。」
新巻が先導して階段を下った。
「愛花、先行って。」
「うん。」
続けて愛花、遥の順に降りた。
新巻が扉を開けると、
広い空間が広がっていた。
「うわあ、素敵。」
愛花が思わず呟いた。
センスのいいインテリア
落ち着いた雰囲気の店内
お洒落な照明
でも、お客はいない
「やあ、いらっしゃい。」
カウンターの中から男性が3人に声をかけた。
短髪で顎には髭をはやしている。
背は高めで年齢は30代半ばだろうか。
「マスターの炒飯食べに来たよ!」
新巻が元気よく言うとマスターは
そうかそうかと笑った。
愛花に気づいたようでじっと見つめる。
「お、初めて見る顔だね。お嬢さん。」
「こんにちは。白井遥のはとこの
八懸愛花と申します。」
愛花はお辞儀をした。
それにつられてマスターも慌ててお辞儀をする。
「へえ、遥のはとこか!
はとこだとやっぱあんま似てないんだな!
遥に会いにきたのかい?」
「まあ、そんなところです。」
「そうか、そうか。
疲れただろう。炒飯食べてけ。」
「ありがとうございます!」
3人はカウンター席に腰掛けた。
キッチンから野菜の切る音や
いいにおいがする。
「それでなんだけど、
2人のこと説明してくれるんだよね?」
新巻が切り出す。
愛花は遥の方を見る。
「ああ。まあ、もう見られちゃってるしな。
新巻は信用できるし、
おのずとばれそうだからな。」
「私も、新巻さ••••じゃなくて
健ちゃんにたくさん助けてもらったから
ちゃんと説明しておきたい。」
「ええ、なんか照れるね!ありがとう。」
新巻は少し気恥ずかしそうに笑った。
店の中にある鳩時計がなっている。
鳩時計はマスターのお気に入りらしい。
「俺と愛花はさ信じられないかもしれないけど、小さい頃から不思議な力があって
俺は人の記憶を消す能力。」
「私は人の未来を予知する能力。」
「家系から代々受け継がれている能力なんだ。」
「そうなんだ。完璧には納得できないけど、
そうゆうのもあるのかもしれないと思うよ。」
「うん。少しでもそう考えてくれるなら
嬉しい。」
愛花はにこっと笑った。
「そういえば、あの学校には
異能者の気配をたくさん感じたの。」
「本当か?」
遥が愛花に問う。
「うん。なんとなくだけど
そんな気配を感じたの。」
「愛花ちゃんは、そんなことも
わかっちゃうの?」
新巻は不思議そうに尋ねた。
その問いには遥が答える。
「愛花はちょっと特別なんだ。
俺や他の異能者達とは少し一線を引いてる。
そうゆうことは、愛花ぐらいしか
気づかないよ。」
いろいろあるんだなと、新巻は唸った。
「はい!炒飯できたよ!」
マスターが炒飯を持ってきた。
話は一旦中断だ。
「わあ!美味しそう!」
「冷めないうちにどうぞ!」
美味しそうな炒飯には
湯気が立ち上る。
「いただきます!」
3人はあっという間に炒飯をたいらげた。
「おいしかったです!とっても!」
愛花がそういうとマスターは
嬉しそうに笑った。
「そういえばさ、
これから愛花ちゃんどうするの?」
新巻が唐突に尋ねる。
「俺が島まで送るよ。」
遥が言い切った。
「ううん。大丈夫。1人で帰れるよ。」
「別に、俺は島でやることあるから
ついでだし。」
愛花はそれを、聞くと少し笑った。
その時、誰かが店に入ってきた。
滅多に人の来ない店に誰かがきた。
マスターと3人がいっせいに
扉の方向を見た。
「•••••鷹村さん?」
愛花が呟やくと遥の顔が強張った。
「困りますよ。愛花さん。それに白井くん?」