再開
5月は好きだ。
気候がいい。
暑くもないし寒くもない。
丁度いい。
何事も穏やかに過ごしている
高校2年生の5月。
白井遥は高校入学と同時に逃げるように
地元の大島を出て東京の全寮制の高校に
通い始めた。
こちらの生活にもかなり慣れたけれど
まだ毎日のように思い出す。
自分の記憶も消せたらいいのだけれど。
考え事をしていたことが
悪かったのか
はたまた、同部屋の男子に賭けに負け
こんな夜中に外出許可無しに外に出たことが
悪かったのか
いや、そうではない
きっとこれはあの日の罰。
彼女を見捨ててここに逃げてきた罰。
信号待ちをしていた遥に
コントロールを失った車が
突っ込もうとしてきたのであった。
ふと横を見たが
その車に気づいても
とっさのことに体が動かない。
その時、
横からすごい力で引っ張られた。
そのおかげで間一髪、難を逃れた。
車の人も間一髪の所でブレーキを
かけれたらしく中年の男性が出てきた。
「君たち!大丈夫か!?」
「••••••ええ、なんとか•••••」
突然のことに
驚きが隠せないまま横を見ると
少女が遥の腕を掴んでいた。
どうやら、この少女が助けてくれたらしい。
「あ、あの、助けてくれて
ありがとうございます。」
少女の顔は、髪の毛で隠れてよく見えない。
少女が自分の髪の毛を
かきあげると、
なんともよく見知った顔が見えた。
「••••••愛花?」
愛花と呼ばれた少女は
みるみるうちに泣き出しながら頷いた。
「なんで、ここに。
え、島を出てきたの?」
「ハルが車に引かれるところがね、
予知で見えて•••
でも電話もLINEも知らないから
だから島をでてハルを探してたの
朝から自分が予知したこの
場所をね探してた。」
愛花はそういっきに話し終えると
一呼吸おいてから間に合ってよかったと
つぶやいた。
「え、待って。まさか1人で?
みんなに黙ってなんてことないよね?」
愛花は黙ったままだ。
「愛花、君は一族にとって
どんなに大切な存在かーー」
遥の話しを遮って愛花が腕を
ぐっと掴んで言った。
「私、もう島には帰らない。
ハルと一緒にいたいよ」
この日僕らの運命の歯車は
また混じり合った。
未来と記憶の御伽草子。