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 地下鉄道停留所に早瀬を乗せた装甲車が近づいて行く。

 周囲には大きなビルや住居があり、かつて舗装道だった地面は亀裂が走り大きな陥没が点在している。地下開発が発展した土地は、現在何処もこんな状態に姿を変えている。


 装備を整えた早瀬はユキへの無線応答を呼びかけ続ける。

 遭難救助信号はまだ拾えていない。

(まだ地上に出れていないのか?)

 早瀬が同行している班はこの停留所跡を捜索し、発見できなければ一鉄と別れた後、信号を拾いながらこちらに向かっている別班と合流するように移動しながら捜索する事になっている。


 地下鉄道停留所が目視できる位置まで装甲車が近づいたその時、装甲車の前方にあったビルが爆発音と共に姿を消した。

「敵襲! 敵襲だ!」

「どこだ! 位置を探せ!」

 兵士たちは無線で呼びかける者、装備を整え出撃に備える者それぞれに動き出す。

 続けて爆発が起こる。

 兵士は位置を特定できたのか、装甲車は加速する。


「ユキ! いたら応答しろ!」

 早瀬は無線に呼びかけ続ける。






――地下鉄道大空洞内

 軽装の結花を後ろに着け、スーツとヘルメットを装備したユキが先行する。

柱に上り、体に障りそうな危険物を排除しておく。

 瓦礫には鉄骨やガラスも混じっている。結花の装備では進むだけでも危険だ。


 上手く上階の天井が崩れていたおかげで思ったよりも楽に上層階に辿り着くユキ。

 柱の上で待つ結花に手を貸し、上階に引っ張り上げる。

 二人であたりを見渡すが、階層の大半が崩れて瓦礫の下敷きになっているようだ。


 最初に地下に降りた階段の高さくらいは登ってきたような気がするが、ここはまだ空洞なのだろうかと思い、試しに二人ともライトを消してみると、周囲には数か所に光が漏れる場所があった。


「出られるかな? ユキ!」

「外はすぐそこだ。出られるところを探そう」

 二人が手を取って喜んだその時、突然の爆発音。

 周囲は震動で砂埃を上げ、既に崩れていた瓦礫が甲高い音を出す。

 たまらず悲鳴を上げてしゃがみこむ結花。

 ユキは結花を庇うように覆いかぶさる。

(またかよ! かなり移動してるはずなのに、あいつら廃墟地帯に戻ったのか? 一体何が起こってるんだよ!)


――更に外には重々しいエンジン音。

「これは何となくわかる。軍の装甲車だ」ユキが小声で呟く。

 ユキのヘルメットには一瞬通信らしきノイズが聞こえる。

 ハッとしたユキが無線に向かい声を出そうとした瞬間、もう一度爆発音。

 大きな分厚いマットを横から叩きつけられたような衝撃。

 悲鳴を上げる結花。覆いかぶさるユキのヘルメットとバックパックにも容赦なくコンクリート片が降り注ぐ。


(はっきりは分からないけど多分、距離はそれほど近くはない)

 近くはないが、衝撃は強い。地下と地上ではこんなに違うのかと驚く。


(軍の装甲車と何かが交戦中?)

 装甲車のエンジン音は遠ざかって行く。

 無線で通信を試みるが応答はない。

(すぐそこなのに……!)

 ユキは遭難信号の発信機を起動させて結花に向き直る。


「結花、今しか出るチャンスは無い。ここから出よう!」

「え? ここに隠れていた方が良くない?」

 二人の周囲には、バラバラと天井から小さなコンクリート片が降ってくる。外の震動で崩れかけているのだ。


「無理だ。この建物はもうもたない。近くで爆発が起こったら今度こそ生き埋めだ」

 息を呑み委縮して動けない結花の両手を握り、目を見て伝える。


「結花、俺が連れて帰るから、諦めるな!」

 怯えきって泣きそうな顔でユキを見返す結花。


「生き残るのは、生きるって決めた奴だけだ」

 涙をこらえて頷く結花を、両手を握ったまま立ち上がらせるユキ。


「……って、野嶽さんが言ってた」

「……締まんねーヤツ……」

 目には涙がこぼれているが、笑顔で答える結花。



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