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黎明を祈る者  作者: GM
9/9

5(チェイラ)

カーラの妊娠を知ったのは組合広場前で集合待ちをしてた時だった


「俺の連れ合は今日来れなくなった」

ー妊婦を戦闘に巻き込めない

とアヴェルトが口を開いたからだ


集合していた冒険者の反応は意外にも皆好意的なものだった


「慎重にいけば何とかなるだろう」

と組合に届けず出発することになった


10年前くらいからー

ラルカに命じられ同じ上級冒険者として潜り込み

アヴェルトの様子をみてきてたが、ここ数ヵ月魔力が薄くなっていた


ラルカは、深淵の者が関わってないか心配した


がー

真相はそうではなかった


カーラの妊娠だとは…


何とかしてラルカに伝えなければ




だがあれこれ考えてるうちに

ケチュアに向かい北の地を踏み入れてすぐ

気がついたら最後尾にいたアヴェルトが消えていた


困ったことに魔力の痕跡もなく追いかける事もできない



依頼を一旦おいといて

皆でケチュアに宿をとりアヴェルト捜索をする事になった

上級冒険者が1人欠員出ていて更にアヴェルトまでとなると

自殺行為になってしまう



混乱は不幸中の幸い

直ぐ様カオラの森に飛びラルカに伝える事ができた


久しぶりに会ったアスラ様は

成長はしていなかったものの元気そうで穏やかな気分にさせてくれた


その後アヴェルトに仕込んでおいた気配が戻ったので

後ろ髪引かれながらも来てみたら

ケチュアから大分はなれた道中に倒れていた


ーが

「これは…」


どういうことだ


抱えあげ顔を見ると目玉がくり貫かれ、

しかもくり貫かれた傷口からは血が一滴も出ていず

まるで古傷のようではないか


更に驚いたのが朝みた時は枯れかけてた魔力が

今は感じ取れる程度に戻っていた


「うぅ…」

意識が戻りかけている

直ぐ様声をかける


「アヴェルト、しっかりしろ!アヴェルト!」


「チェイ…ラか…?ここは?」


景色が一変したのだろう

今いる場所を聞いてきた


「ケチュアから少し外れた所だ」


細かくは聞くな…

今着いたばかりではっきり把握してない


「うぅ…熱っ!!」


アヴェルトは負傷していた目に手を当て

ギョっとした顔で固まった


「何があった?」


今気づいたみたいな反応だった

こんな大怪我を…


「……」


思考停止中といったところか



取りあえずケチュアの宿屋に向かおうと立ち上がり


「あっ…」


…馬…が


チェイラはカオラの森から直接飛んできて

アヴェルトはみてのとうり本人だけ


まさかこんな街外れで倒れてると思わず


かといって忍んでる身としてアヴェルトを連れて

高等魔法の瞬間飛するわけにもいかず肩をかし歩いて向かう事にした



チェイラが馬なしという事に疑問を思わない程度に

アヴェルトがまだ混乱してる事に安堵しつつ



「その目どうした?」


帰ってこない返事も予想しながらケチュアまでの距離を測る


「…」


この際気を失わせてラルカの所に飛ぶか…

と首のつけねを叩き落として抱え上げたとき


今度は、予想してなかった気配が近づいてきてた


次から次に…

ー様子見た方が賢明か…


目視出来る距離まで前方から馬車が近づいた時


「ー…アヴェルト!?」


窓から顔を出したのは、カーラだった


「ちょっ!チェイラ!どうしっ…!?」


慌てて馬車から降りてかけよってきてアヴェルトを覗き込み絶句した


「私も先程見つけた所で…

一瞬意識を取り戻したのですが今は痛みで気を失われたようです。

負傷してるので心配です!先ずはケチュアに宿をとってるので急ぎましょう!」


と抱え上げたまま急いで馬車に向かい面食らった


「ヤクタ副理事…」


「さあ、説明は道中で聞きます。

そこに突っ立ってないで急ぎましょう」

と意表つかれた人物に急かされ


道中アヴェルトが姿を消して

皆で捜索してあの場所で見つけたことを色々端折り説明した


「人を置いていくからこういう事になんだよ…馬鹿…」

とカーラはアヴェルトを膝枕し目蓋ごと無い瞳に布を当てていた


「妊娠されたんですね」


相手がアヴェルトでなければ…

コアトルでなければ祝福できたのに…


「あ…ああ、それで…ね…おいてけぼり食らっちゃってね…」

としょんぼり話す彼女が今にも泣き出しそうで


「アヴェルト今朝嬉しそうに喋ってましたよ、

妊婦を戦闘に巻き込めないってね」


何言ってるんだ…


彼女は…もう…


「有り難う」


痛々しく微笑むカーラ

その様が何故かアスラ様と重なってしまった


…平穏にいけるならこのまま記憶なんて戻らなければいい


日も暮れ宿に着き

依然意識が戻らないアヴェルトを抱え馬車を降りた


カーラが宿に入り彼女に続いた時


チッ


と舌打ちが後ろから聞こえた気がした




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